73.聖女って何ですか?
この世界には聖女と言われる女性がいたらしい。
だけどそれは何百年も前の話。
お伽話のような…実在しないのではないかと思うような…そんなお話。
聖女は精霊の愛し子
精霊王の加護を受け
聖獣を引き連れ
悪ある場所へ行き
聖なる力を持って
清め正しく導く
世界樹の元に
集いし精霊達と共にあれ
先ずは精霊の為に祈れ
そして人の為にあれ
悪を閉じ込め聖なる物の為に
それが聖女としての念持のような物なんだと書き記されている。
パタンと本を閉じて息を吐きソファに寝転ぶような体制になる。
『リリィ?どうした?』
人型のロウが向かいのソファに座って話しかけてきた。
「んー。聖女について?」
『聖女についてなんていきなりどうしたんだ?』
同じく人型のセルが私の座っているソファの後ろから話しかけてくる。
「ほら、この間の実戦訓練で私ポンコツだったでしょ?ヘルと話して何となく掴めそうな気がしたから図書館で何かないかと探してたら学園長がこの本を渡してくれたの」
『Sainte foi 聖女信仰 ね…』
これまた人型のネスルがアイランドキッチンのスツールに座って話しかけてきた。
「今はもう聖女っていないんでしょう?」
『そうだなぁ。先代の聖女ももう…随分と昔になるんじゃないかな』
でも、この聖女って…精霊の為、人の為って……自分の為には生きられないって事なのかな?
人の為にって大切な事だとは思うけど…どこかで自分の為にも生きないと…って思う私の考え方はおかしいのかな?
『……聖女ねぇ』
「何?セル。何か含みがある言い方するじゃない」
『いや〜あれだろ?精霊の為に〜ってやつ』
「え?うん……」
『……聖女は精霊の愛し子ってのは合ってるけど他はなぁ…』
「どう言う事?」
『昔も今も精霊側からの愛し子への愛情は何も変わっていないぜ?』
「ん?ネスルどういう意味?」
『人間が勝手に言っているだけなんだよなぁ』
「え?」
『精霊の為に祈れ、人の為にあれ。これは初代聖女と言われた愛し子がそうだったってだけで、精霊側はそんな事を強要している訳ではないんだ』
「ロウ?」
『初代聖女と呼ばれた愛し子は心から精霊を愛し、人を愛した。自分よりも周りが大切。そういう子だったから人々が脅威にさらされないようにと願って精霊と共に国全体に結界を張った』
『その結界は強力で結界がある間は平和に過ごしていた。だが、聖女と呼ばれていても人は人。寿命は来る。綻び始めた結界を埋めに聖獣と共に各地を周り祈りを捧げた。そしてついに聖女の命の灯火が消える時、彼女は願ったんだ』
『世界に祝福を…と。最期まで他人を思いやっていた愛し子に精霊達は応えた。その後はそのまま平和が続いたが… 』
『人とは欲深い生き物だからな。ただ平和なだけでは物足りなくなった。争いを始め魔の国に戦いを仕掛けた。それを見ていた精霊達は愛し子にだけ加護を与えるようになる』
『少しずつ作物は枯れ始め、天変地異が各所で起こるようになった。今まで平和だった分何も対策が出来ていなかった国は衰退した』
『だが愛し子が願い祈れば精霊達は力を貸してくれる。それに気付いた教会が愛し子を聖女として作り上げていくんだ。聖女は精霊の為に、そして人の為に…と』
「……そんな事」
『そうやって愛し子を聖女として飾り立てて縛り付けたんだよ。精霊の為と大袈裟にうたって本心は人の為にってね』
『愛し子が祈り願えば安寧は得られた。それに人々は全てを押し付けた。聖女と呼ばれた愛し子達は皆それを受け入れた。受け入れざるを得なかったと言ってもいいのかもしれないがな』
「なんで…受け入れるのよ……」
『それぞれに事情があったんだろ?家とかよくわからんがしがらみとか』
「……しがらみ……それにしても、学園長がこの本を私に読ませたかった理由が分かんない。同じ様になれって事?それとも他に何かあるのかな…」
『同じようになれって事はないとは思うけどなぁ』
「じゃあ、何なんだろう……って、精霊王の加護……聖獣……なんか引っかかるんだよね……」
『なんかって?』
「うーん。なんだろう……」
何かが頭を掠めた瞬間、ノックの音がした。
「ん?誰か来た?はぁい!」
「リリィ?お夕食食べに行きますわよ?」
アディがご飯を誘いに来てくれた!
もう考えてもすぐには答えは出ないよね…ゆっくり考えてみよう。
ヨシ!!そうと決まればご飯よ!!
「行く行く──!!じゃあ、ロウ達お留守番よろしくね!行ってきまーす」
パタンと扉が閉まる。
『リリィは…気付いてんのか?』
『あの感じだと…気付いてないと思うな…』
『リリィは昔から普通とは違っているからな。情報に疎いのもあるが色々知らなすぎる…』
『『『まぁ、リリィだからな…』』』
クククと3人が笑った。
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