47.冥界の女王様は意外と?
『ヨル兄。アンタ何やってんの?』
『アハハハハ…』
『フェル兄様は何処?』
『イヤー、オレッチはチョットわからないYO!」
セルのテンションがおかしい…。
それに、ヘル様の口調が…アレ?
ワタワタと私の後ろに回ってきたセルはその体を小さく折り畳んで隠れようとしていた。
丸見えですけどね…。
『ホウ、知らない…と…』
窓がガタガタと激しく揺れだし、部屋のシャンデリアがグワングワンと揺れた。
『ヒィ…』
『ヘル、落ち着け』
『ん?ああ。失礼した。セル兄様、リリィ殿の後ろに隠れるなんぞ契約獣としてありえぬぞ』
『は、はい〜……(すまん!兄弟!!恨み言は後で聞く!!)ロ、ロウは別邸にいます!!!玄関ホールの花瓶の横です〜!!!』
『…ニー、連れて来て?』
『はーい』
えーと…パワーバランス的な物が…おかしいかな?あはは。
『…所でセル兄様はどうあの封印を解いたのだ?』
『あぁ…えーと、リリィが簡易版魔法陣使って召喚魔法を使った時に…何故か封印が解けて?…気付いたらココに』
『ーーー!!ククッ。リリィ殿は凄いな。海の闇に落とされ世界樹の実による封印をされたモノを解放するとは…』
「世界樹の実?」
『不死と言われるセル兄様を絶命させると言われる実の事でな。屍を糧に新たな世界樹が芽吹くとも言われておる』
『チッ……』
「え?セルってチョット悪戯が過ぎて封印されたくらいの感じじゃなかったっけ?」
『まあ、悪戯が過ぎたな。さるお方の髭を片側だけこっそり剃り落としたのだから』
ちょ、えー?それくらいの悪戯で?絶命…?
チョットひどくないかな?
『まあ、我ら三兄弟は煙たがられておる部分もある故、致し方無い事ではあるな』
「煙たがられて…?』
『ああ、お喋りが過ぎた。そろそろニーも戻るであろう』
カップを再度手に取りヘル様は紅茶を楽しんでいる。
『この【かりんとう】というのは美味いな。もっと食べたいと思う味だ』
「ありがとうございます!あ、後でカキ氷も出しますので楽しみにしていて下さい!」
『ふふ。楽しみにしておるぞ。それにしても、ミシェル。お主の娘は面白い。オベロンが契約したと聞いた時は笑い転げてしまった』
「我が娘ながら、本当に面白い娘に育ったと思いますよ。潜在能力は計り知れないですし」
『フフフ。楽しみであるな』
『ヘル、連れて来たぜー』
『や、ヤア!久しぶりだな!!我が妹よ!!』
『……ロウ兄様、まさか我から隠れたなんて言わないわよねぇ?』
『めめめめめ滅相もございません!』
『ふむ。なら良い』
え?ヘル様最強説??
怒ったりすると言葉が崩れるのかな??
『……。』
『……。』
『…所で』
『『ハッハイィ!!』』
ロウとセルはビックゥッと体を震わせてピンと背を伸ばした。
二人が……情けない……笑
『そんなに固くなるでないぞ?聞きたいのは父様の事なのだが』
『『ーーー!!』』
『母様の暴走がまたいつ起こらぬとも言えぬ。居場所を知らぬか?』
『『しっ知りません!!』』
二人は顔をブンブン振って答えた。
それ知ってるって言ってるようなモノなんですが…。
『そうか…知らぬのなら仕方ないな。何処へ行かれたのか…』
えーー!?ヘル様騙されたっ!?単純!?
って、ロウとセルに片方ずつ足をギュッと踏まれました……
「……お父様は行方知れずなのですか?」
『探しておるのだがな…見つからぬ』
美人の憂いを帯びた表情ってなんて言うのか…ドキドキしちゃう。
なんでロウ達は……
『オッオレ達も探してるんだけどネーーー!』
『そ、そうだな、流石はという所だな見つからないな』
『…そうか。それでは致し方ない。また何か分かった事があったら教えてくれ』
ふぅーーっとロウとセルがあからさまな溜息を吐いた。
何なんだ?
あ、そうだ!
「ヘル様はまだお時間大丈夫ですか?カキ氷ご用意するのでゼヒ食べていって下さい!」
『ーー!それは楽しみ!!だな』
「ふふ。では用意して来ますね。
◇◇◇
作る所も見たいというヘル様の要望でリビングにて作業をします。
「まずこの氷を薄くフワフワになるように削っていきす。この冷やした器に山になるように乗せていって…」
『ほうほう。風魔法をそのように使うのか!』
「はい。シロップはどれがいいですか?イチゴ、マンゴー、ブドウがありますが」
『では…マンゴーにしてもらおうか』
「はい。シロップとマンゴーをトッピング。それと生クリームをチョイッと…完成しました」
『おー!これがカキ氷ねっ!!おいしそう!!』
ヘル様はキラキラした瞳で口調も砕けている。
「どうぞ召し上がって下さい」
『いただきます!』
パクリと一口。
頬に手を当てて目を瞑った。
大丈夫かな……?
『………』
無言は怖いな…
『うまーーーーっっ!!』
あ、良かった。
美味しかったんだ!!
『なんだ!この幸せな味はーー!!冷たい、はっ!口の中に入れたらすぐに溶けた。シロップと生クリームも酸味と甘味が重なり合って……』
うんうん。
『ーーーハッ!!……コホン。失礼した』
『ブハッ。ヘルよーここで装ってももうムリだろー』
『……ニー。恥ずかしいではないか……』
『ココにいるのは身内と、その契約者、その家族だ。もういいんじゃないか?』
『…そっか。じゃあ、もういいや。雰囲気作るのも疲れるしね!リリィ!このカキ氷メチャおいしいよっ!!凄い!こんなの初めて食べたよ』
「おぉ…ありがとうございます」
砕けた話し方になると普通の美少女って感じになるのね!
『はあ…こんな…さっきの【かりんとう】といいこの【カキ氷】といい…最近は面白くて美味しいものが沢山あるんだねぇ…羨ましい…自由に来れたら…』
「?。自由に外に出れられないのですか?」
『リリィ、私にも普通に喋ってくれていいよ』
「あ、えっと…」
『そうしてやってくれるか?』
「ニーさん。…分かった。ヘル様は何か制限とかあるの?」
『ヘル、でいいよ。制限と言うか、私は冥界の女王。冥界で死者が迷ったりしない様に導いたり、逃げ出すのを監視したり暴れない様にするのが役目。私が居ない時間が多くなればなる程死者の魂は彷徨う事になる』
「すごい大変なお仕事……」
『冥界は広いの。無限の闇が広がっている所よ。で、今は調整してやっと時間が取れた所。この間はガルムが見張ってる』
「ガルム?」
『私の愛犬よ。そのうち紹介するね』
「そっか。じゃあ、寂しい?」
『ふふ。遠い昔はそう思う事もあったけど、今はニーもガルムも居るし。冥界の死者の魂も居る。だから大丈夫』
「そうなんだ…。冥界に遊びにって行けるのかな?」
『え?』
「ニーさんもガルム?も居るけど、私ももう知り合えた訳だし、ヘル…が来れないなら私が行けばいいじゃない?」
『ーーー!』
「……ダメ?かな?」
「ーーリリィ。冥界は死者の魂の集まる場所だ。簡単に人間が足を踏み入れていい場所ではないと思うよ?」
「お父様…。でも…」
『いいじゃねえか。来てもらおうぜ!リリィなら冥界の負のエネルギーにも負けないだろ?』
『確かにそうかも…。ミシェル、いいか?』
「ヘル様が良いと言われるなら。リリィ、ヘタな事したらダメだよ?」
「やった!!」
『リリィ…来てくれる?』
「もちろん!!お好みパーティーとかしよう!!」
『お好みパーティー?ふふふ。楽しそう』
あぁ!はにかんだ顔が尊い!!
『『ヘルが…ちゃんと笑った』』
ん?どういう事??
『ヘルはなぁ、オレとガルムの前以外ではほぼ笑わない。笑っても愛想笑いか、鼻で笑うか…くらいか』
「笑わない…?」
『冥界だからな。舐められてはいけない。毅然とした態度が求められる。だから仕方の無い事だと諦めている部分はあるな』
「あきらめ…」
『遠い昔から…だからな。だからこそ、リリィが遊びに来てくれるといいなと思う』
「ニーさん。ヘル、絶対に遊びに行くよ!行く時は必ずお土産も持って行くから楽しみにしててね!!」
『ふふ。ありがとうリリィ。楽しみにしてるね!…兄様達』
『『は、はい!!』』
『久しぶりに会えて嬉しかった…。父様の事…何か分かったら教えて』
『あ、ああ…』
『おう…まぁ、リリィが冥界に行く時はオレが付いて行くから、多分これからしょっ中会う事になると思うけどな!』
『ふふ。では、そろそろ戻ります。リリィ、ありがとう。ミシェル、マリア、リュド、また会おう』
ヘルが席を立った瞬間に扉がバーンと開いた。
驚いて皆が扉を見ると、息を切らせたお兄様が立っていた。
「はぁはぁ、間に合った?」
「お兄様…学校は?」
「あぁ、ヘル様!!お会いしたかった!お初にお目にかかります。クリストフと申します。クリスと呼んで下さい」
シカトかい…。
『ふふ。クリス。噂は聞いてるよ、天才児と。よろしくね』
お兄様はヘルの手を取って手の甲にキスをしてそのまま離さない。
『えーと、クリス離して?』
「僕も、ヘル様の所遊びに行ってもいいですか?」
『え?あ、勿論、一緒に来てね』
「一人でも?」
『え?えーと、あのでも一人は危ないので…』
「今日、契約獣を召喚したのでその子を連れて行けば大丈夫です!お父様!いいですか!?」
「え?そうだな…一度皆で行かせて貰って様子を見てから…だな」
「ヘル様!いつ行っても大丈夫ですか?」
『ああ、まぁとりあえずはいつでも…いいよね?ニー?」
『とりあえずは何もないし問題も起きてないからいつでも。ダメになったらヨルに連絡入れる』
「やったー!!よろしくお願いします!!」
お兄様が……壊れた……?
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