32.生誕祭での出会いは大切ですよね?
そして、そのまま町に出ることはなく次の日のヴィータの生誕祭の日です。
王宮でのパーティーの為に、いつもよりも豪華な薄紫色のドレス、髪の毛はサイドを編み上げてからアップにしてフワリと後毛を巻いてあります。
自分で言うのも何ですが…
この子マジかわいいわ…
中身が私じゃ無かったらもっと…なんて考えても仕方ない。
「あぁ、我が女神…今日もなんて美しい…このまま閉じ込めておきたい…」
「ニナ…そういうのはこころのなかにひめておきなさいよ。だだもれよ…」
「申し訳ございません…我が女神…あぁ…本当に…本当にこの世の人でございますか…?」
コリャダメだわ…。
さて、そろそろ行く時間ね。
「ニナ?かりんとうのよういは?」
「我が女神の仰せのままに…女神の元に集いし…」
はい、無視無視。
もうニナは置いて勝手に下に降りよう。
「リリィ様っ!すみません、調子に乗りました…。コチラの籠に用意してありますので、お持ちします」
チラリとニナを見て溜息一つ。
「ありがとう。じゃ、いきましょう」
今日はお父様も一緒に行くんだって!
馬車に乗り込んで出発進行ー!
「リリィのかりんとうはすごい噂になっているらしいね」
「…セバスがしょうひんかしたいっていっていたので、わたしのてからはなれているし、よくわかりません」
「すごいって!周りの子達も皆早く買いたいって言ってるよ!」
「かいに…?どこへ?」
「月の雫亭の横に空き物件があったらしくてね、そこを改装して『ホッドミミル』という店を作ってそこで売り出す予定だよ」
へー!セバス流石というか何というか…動きが早すぎて驚くわ…。
「かりんとう作るのは教会と孤児院なんだよ。リリィのお陰で子供達も楽しく手伝いをしたり、運営の方もより良くなりそうだって喜んでいたよ」
そうなんだ!良かった!いい事に繋がるならOKだよね。
ん?
…て事は昨日差し入れたかりんとう…もうとっくに手に入る状況だったって事かな…
っんだよ!じゃあ、もう少し減らして渡せばよかった…自分の分をリュドと分けたけど…チッ。
あ、でも今のうちにお父様にも確認しておこうかな。
「リリィ?」
「あ、すごいなぁとおもいまして。よいことにつながってほんとうによかったです。…おとうさまはリュドヴィックってごぞんじですか?」
「ああ、闇の属性の子だね」
「リュドは…これからどうなりますか?」
「…そうだね、闇の属性の子って基本的に魔力が多かったり、優秀な子が多いのは聞いたかな?」
「はい。セバスにすこし」
「じゃあ、王宮預かりか養子縁組かという話は?」
「はい。ききました」
「そうか、じゃあ話は早いね。僕としては王宮預かりよりも、どこかで養子縁組して王族の側近になってくれたら…と、期待してるんだ王宮預かりだと、魔導師になるのが第一でそれもそれで優秀じゃないと、なれないけどね」
そうくるかー!王族の側近!という事はヴィータの…っていうのが濃厚かな。
テオにはお兄様、ローラン様あとは会った事ないけどマティアス様が側近確定って話らしいし。
レオは辺境伯の息子だから、そっちを継ぐって言ってたしな。
ヴィータと同年代で実力者って男の子だとあまり聞いた事ないし…なる程、だからリュドって事か!
でもそうしたらどこの家に…?
「色々考えているけどね。彼にとって最良は何か…って」
養子縁組の条件ってなんだっけ?
人柄、家柄、仕事、周りの環境、四親等まで調査、面談を数回、最終的に王の許可が降りて…だったよね?
私が知る限りでは貴族の所はほぼOKって事かな?ていうか王族の側近って…何するの?
「彼は魔力量も多いし、闇の属性であるから扱いもわかっている人がなるべく近くで教えた方がいい。だけど貴族の家では彼の…言い方が悪いけど、扱いが難しいんだ」
「なるほど…」
「だけど、王宮魔導師の所だと扱い方等は教えてもらえるけど魔道士にはなれても側近にはなれない」
「ふむふむ」
「リリィが言っていたように、闇=魔、闇=悪では無い。今は国の守りは万全だから、人をしっかり守りたいんだ。周辺諸国から、というよりは国内の…」
えっえーーー!?
こんなに平和な国なのに、内側ドロドロ系?狙われてるって?誰に!?こっわ!
「うーん、難しい話になっちゃったね。だからどうしようかな…って悩んでいるんだけど、今の所は王宮預かりが一番濃厚だね」
…… えーと、もう家で良くない?
人、家、仕事、周りの環境、四親等までってのはよくわかんないけど、王族だよね?
ヨシちょっと言ってみよう!
「おとうさま、ベルナー家、でいいのではないですか?」
「ベルナー家?」
「はい。ひと、いえ、しごと、よんしんとうはおうぞくでしょう?もんだいないのでは?」
「ーー!ああ!そうか!盲点だったな!自分の所か!ベルナー家はそうだな100点満点だ!セバスもいるから教えるのも問題ないし」
「セバス?」
「あ!あぁ、うん。まあ、実力者だって事。でも、リリィはいいの?同じ歳の男の子が来るって事だけど…」
「だって、リュドでしょう?精霊王のせいでくるしんだんだもの!うちだったら、すこしはたのしめるのではないかな?とおもって」
「はは!確かにリュドにとってはいい環境になるかもしれないね。クリスもリリィもいて楽しいだろうし、セバスとトマスに鍛えて貰って、ロウ様とセルもいる!うん、全く問題ないじゃないか!僕は何を悩んでいたんだ!」
お父様…興奮しすぎですが。
「マリア!クリス!聞いていたかい?」
「ええ。聞いていたわよ。私はいつでも良いわ」
「リュドヴィック君ね。一度孤児院で見かけたけど、悪い子じゃなさそうでしたね」
「よし。そうと決まれば今日にでも王に確認取っておこう!先に通信で…」
あぁ、お父様が自分の世界に…。
それにしてもお母様も肝っ玉が据わっているというか、おおらか? なのかな? 子供が1人増えるっていうのに、軽くないか……?
貴族様ってこんなものなのかな?
うん……悩んでも仕方ない、そういう事にしておこう。
王宮に到着すると前回のお茶会なんて目じゃないくらいのすごい人数で溢れ返っていて騒めきがすごかった。
「リリィ、今日はこの間のように勝手にどこかへ行ってはダメよ?お母様かクリスと必ず一緒に居てね。逸れたら大変ですからね」
「はい!わかりましたわ」
「はぁ、不安しかないわ…。クリスもちゃんと見ててあげてね」
「はい。目を離さないようにはしますが…リリィですからね…」
「そうなのよね…リリィだものね。でも…」
「もう!そんなにしんぱいしなくても、だいじょうぶです!」
「「………」」
何?その目ー!!どんだけ!!
『皆様、大変お待たせ致しました。マルタン王、ならびにカミーユ妃、テオドール第一王子、ヴィクトル第二王子のご入場でございます』
ザワザワとしていたフロア内が静かになって、王様達の入場を見守った。
今日は挨拶は簡易形式なんだって。
一番初めに挨拶にいきます。
「お誕生日おめでとうございます。ヴィクトル殿下」
お父様、お母様、お兄様がそれぞれ挨拶。
次は私ね!ご覧下さい、この磨き抜かれた美しいカーテシーを!お母様の特訓は日に一時間毎日ずっと続いていたのよ!
「ごきげんよう、ヴィクトルでんか。ほんじつはおたんじょうびおめでとうございます。ぷれぜんとにかりんとうをおもちしたのであとでおうけとりくださいませ」
「リリィ…ありがとう…うれしいです…」
あら?ヴィータが珍しくしゃべってるわ。
4歳になって、少し変わったのかな?王様も王妃様もテオも皆驚いてるんだけど、涙ぐんでる人もいるよ…。
いつまでも誰かの後ろに隠れているなんてできないからね!良い傾向だわ。
挨拶もそこそこに、今日は立食パーティーの形式なのでバイキングみたいに料理も並んでるの!その後ろにシェフ、給仕さん、メイドさんが並んで好きな物を取って貰えるんだって。
うーん。
困った…身長が低くて何があるのか分からない…。
クッ!なによ!目の前には美味しい料理が並んでて、美味しそうな匂いを漂わせてるのに…見えない!って事は取ってもらう事もできないではないかっ!!
ああ、無情…。
この世は情けも何もないんだ…。
「ふふ、リリィ?どうしたの?」
ん!?この声聞いたことある!
振り返ったら、治癒院でお世話になっていたイケメンさん!!
「ご、ごきげんよう?…」
「リリィ大きくなったね、噂は聞いてるけど実際に聞くと見るとでは全く違うね」
えーと、えーっと、名前なんだっけ!!
「あ、ごめんね。僕はライル・シモン。治癒士だよ。君の事は生まれる前から知っているよ」
そうそう!ライル!この人に触ってもらってた時は暖かくてふわふわして気持ちよかったんだよね!
「ライルさま…」
「うん?どうしたの?悲しそうな顔をして」
「わたくし、おりょうりが…」
「あ、見えないんだね?じゃあ…」
「キャッ」
ヒョイと片手で抱き上げられて、急に視線が上がって驚いた!
目の前にはイケメン!!
ヤバッ!顔が赤くなるじゃん!
「どれがいい?何でも取ってもらえるよ?」
ーーー!
驚いたけど、今がチャンスよ!
リリィ!早く見て見て見るのよ!じっくり選んでいる暇はないわっ!ターゲットを絞るわよ!
「えっと、あれとこれと…あとこれ。うーん、これもたべたいのですが…ひとさらにはのりませんよね…」
「ふふふっ。リリィは食いしん坊さんだね。いいよ、僕も食べてあげるから好きなのを取ってもらって一緒に食べよう。お腹空いてるから沢山でも大丈夫だよ」
えー!優しい!!!
イケメンはやっぱりイケメン!!!!
「では、おことばにあまえて、ぜんしゅるいをおねがいします!」
「あはは!すごいね!全部は乗り切らないから、また取りに来よう」
「はい!ありがとうございます!!」
立食パーティーだけどテーブルとイスも用意されいるので、そこにライル様に連れられて移動しました。
「よいしょ。そう言えばミシェルはどこ行ったかな?マリアとクリスは?」
ーーーはっ!!
しまった!!離れちゃダメって言われてたんだった…料理の匂いに釣られてフラッと勝手に来ちゃった…。
やばいよね…またおこられちゃうよね…。
「リリィ!!こんな所にいた!!」
「あ、おにいさま…」
「もう!探したよ!お母様にも注意されたばかりじゃないか!」
「ごめんなさい…おりょうりが…おいしそうだったので…」
「はぁーっ」
「クリス、ごめんね?僕も勝手にこっちに連れてきてしまったから」
「ライル様!ご一緒でしたか!…こちらこそすみません。リリィがご迷惑をおかけしたみたいで」
「迷惑だなんてかかっていないから大丈夫。リリィには僕が付いているからクリスはテオドール殿下に付いててあげて」
「え!?いいのですか?」
「うん、ここでリリィと一緒に食事しているからね。行ってらっしゃい」
……ん?んん?
ライル様をチラチラ見てる女性陣の多い事…。
あ!ははーん、私を盾に女性陣の誘いを断る作戦なのね!ふふん!
「わたくしをたてにしないでくださる?」
「おや、バレてしまったか!ふふ。リリィを盾にするつもりはほんの少しあるけど、一緒に食事がしたいのも本当だよ?」
ーーー!!っく!イケメンめ!!
その困ったような笑顔は反則だよ!!
「ーーわかりましたわ!わたくしにさいごまでちゃんとおつきあいくださいませ!でざーとまで、ですわよ!」
「あはは!喜んで!食事の後はダンスでも一緒に踊る?ふふ」
くそー!!
ライル様…是非踊って下さいね!!
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