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31.かりんとうは皆を救う?


 『で?リリィは何をしてるんだ?』


「かりんとうづくりよ!」



キッチンの扉からロウとセルが顔を覗かせて話しかけてきた。

キッチンは、動物禁止ですからね!


この間のお茶会とか、お母様の方のお茶会とかでもすごい好評だったらしくて、今度のヴィータの生誕祭?に持って来てって皆に言われたのよ。


特にお母様が王妃様に強めにお願いされたって言ってたし…。

王様も食べてみたいって。

作っていかないとヤバそうな雰囲気だったからね。

本当は…町で何か探そうと思っててレオと約束したんだけどね…。

楽しみにしてたのに…


…月の雫亭でご飯食べるの。



『目的が変わってるぞ…』

『まぁ、リリィだから…』



だってさ、せっかく町に行けるチャンスだったのに…。

あ、町には行けないけど孤児院にかりんとうを差し入れに行こうかなー。

それだったら、お母様も許してくれそうな気がするし!

町には行けないし、月の雫亭にも行けないけどねっ!


あーぁ、行きたかったなぁ…月の雫亭。



『…リリィは食い意地が凄いな』

『何よりも三度の飯が大切だってこの間叫んでたぜ…』


『本能のままに生きてるな…』

『忠実にな…』




◇◇◇




お母様に許可を貰って今日は孤児院に来ています!

明日はヴィータの生誕祭だからあんまり遅くまでは居られないけどね。


月の雫亭とは反対方向にあるこの場所で、ふぅ…と月の雫亭の方向を見ながら溜息連発よ…。



「……どうかしたの?」



わっ!!ビックリした!!



「リュド!びっくりしたー!!おどろかせないでよね!」


「…なんだ、げんきじゃん」


「なに?わたしはげんきよ?」


「…ならいいよ」


「あ!しんぱいしてくれたの??ありがとう!」


ニヘラと笑ったらリュドの頬っぺたが赤く染まった。

あ!熱中症?日陰に連れて行かなきゃ!

この世界の人達は熱中症になりやすいのかな?

対策ちゃんと教えてあげなきゃ!!


「リュドこそ、ちょうしわるいんじゃないの!?ひかげにいこう!」



グイグイと手を引いて木陰に向かう。


「ねっちゅうしょうはね、ひかげであたまとわきをひやすの!あとはすいぶんをとって…」


「…ねっちゅうしょう?」


「あ、しらない?あついひになるびょうきみたいなものよ。へたしたらしんじゃうからねっ!」


「…びょうき?なら、ちゆいんで…」


「バカねっ!そういうのにたよってばかりじゃ、いざというときにこまるのはじぶんなのよ!きちんとじぶんでできるたいさくをべんきょうしておかなくちゃ!」


「……リリアーヌさまって…」


「リリィでいいわよ?」


「リリィさま…」

「リリィ」


「リリ」

「リリィ」


「…リリィは…なんかかわってるね」


「そう?ふつうだと、おもうけど…」


「ふふふ…。かわってるよ。ちゆいんにたよるなとか…」


「あら、それはあたりまえじゃない?まずはじぶんでできることはじぶんでしなくちゃね!」


「……なんでためいきついてたの?」


「…きいてくれる?」


「う、うん」


「…わたし」


「うん…」



ゴクリとリュドの喉が鳴った。



「つきのしずくていにいきたかったの!ほんとうに…うぅ…しんぷるに、しーふーどどりあがたべたいきもちだったの…」


「………」


「うちのしぇふにつくってもらったの、おいしかったのよ。おいしかったの!でもね!もしかしたらつきのしずくていだったらもっとおいしいのかも!?ってかんがえたらとまらなくて…」


「……」


「じぶんでつくる?ともおもったけど、やっぱりいかとかえびのしょりがめんどうだし…いかのしょりってめんどうじゃない?いか…あれ?このせかいたこってあるの?たこ、たこやきたべたーい!!あ、でもあのまるくやくためのてっぱんがないか…じゃあ、おこのみやき?それならいけるね!ヨシ!」


「ぷっ…ぶふっ…」


「…?リュド?だいじょうぶ?」


「あはは!それはこっちのセリフなんだけど!」



あはは!とリュドが大笑いしてる。

なんか暗かったリュドの表情が明るく見えるよ?

そんなにツボる事あった?



「クック。ふぅ…。リリィ、やっぱりかわってるよ」



えっ!?中身大人ってバレてる??

なんか変だった?確かに3歳にしてはちょっと食い意地が張ってるかな?とも思うけど…。

でも、それくらい普通にいるでしょ…?いるよね…?



「…どこが?わたしふつうだとおもうけど…」


「…きぞくのひとって、ちかよりがたかったり…こわかったり…してたけど。リリィはちがうね」



あ、そっち系ね。

良かった。



「こわい?」


「うん。ボクをみるめがね…。えものをみるようなめだったり、むしけらをみるようなめだったり…」




それって…闇の属性のせいで?獲物って…何かに使うって事?



「リュドはきぞくはきらい?」


「いちぶのね。ベルナーけのひとはそんなことないけど。イヤなやつもおおいとおもってる」


「いやな…やつ」


「きぞくは…やみのぞくせいのせいで…ボクじしんのことなんてどうでもよくて、ただそのちからがほしかったり、さげすんだりしたいだけなんだ」



こじらせてる…ね。

やっぱり辛い事沢山あったんだ…。



「リュドは…こんごどうしたいの?」


「こんご?そんなもの…」


「まだ3さいかもしれないけど…かんがえたほうがいいとおもうよ?」


「……」


「まだやみのぞくせいって分かってるだけでしょ?せんていしきで、どのせいれいがけいやくしてくれるか、わからないじゃない?」


「…まあたしかに」


「すごーいせいれいがけいやくしてくれたり、そうじゃなくても、これからは『やみ』がいいっていうひともふえるとおもうんだけど。れあ、だし」


「レア?」


「そうよ。これから『やみ』にたいするにんしきがかわるわけじゃない?そしたら、すくない『やみ』ににんきがあつまってくるわけよ」


「…にんきね、ふん」


「リュド?」


「そんなの、ただおもしろがってるだけじゃん。」


「うーん、はじめはそうかもしれないけどさ、そこはじつりょくで、ねじふせていけばいいんじゃないの?」


「じつりょく…」


「じぶんではなにもせずに、ただぶーぶーともんくいってるだけなら、そこまでのひとってことだけどさ、ちゃんとじぶんをみてほしかったら、じぶんでどりょくしてから、じゃないの?」


「……。」



お説教みたいになっちゃってるじゃんー。

そんなつもりはないんだけど…リュド顔が青くなってきてる?あれ?やばめ??やっぱり調子悪いんじゃない?



「だいじょうぶ?」


「…うん。ど、どりょくしても、みてもらえなかったら?どりょくしただけむだじゃん!」


「うーん、だれかひとりにでもみとめてもらえたら、それはせいこうだとおもうけど…」


「…だれにもみとめてもらえなかったら?」


「んー…どりょくのほうこうがまちがってたかな?っておもう。で、ちがうやりかたでまたやってみる。みとめてもらうのって、そういうののくりかえしだとおもうけど」



…前の世界でもそうだったもんな。

努力が全て報われる訳じゃないけど、見てくれてる人がいるもんなんだよね。

それだけで、がんばれるというか…。



「…くりかえし」



ん?リュド、顔色が戻ったね。

もう具合悪くないのかな?良かった良かった。



「うん。そしたらきっとだれかがみてくれるはずだよ!すくなからずわたしはみてるよ!」



こうやって関わった以上は私もその一人としてしっかり見させて頂きます!

何目線だよー!何様だよー!って感じだけどねっ!



「リリィが…みててくれるの?」


「?うん」


「そっか…リリィがみててくれるんだね…」


「うん。あ、かりんとうたべる?」


「かりんとう?」


「おいしいよ!みんなのところにももってきたけど、…これはほんとうは!わたしのぶんだけど…リュドにあげるわっ!!」



しゃーなしや!

コレは私の隠しおやつ…だけど、あっちに持っていった分はすぐになくなりそうだったし、もうないかもしれないから…。

リュドにも食べさせてあげたい!って思ったし。



「はい!」


「ありがとう…」


「………」


「リリィ?」


「……………」


「リリィ?どうしたの?」


「…やっぱり」


「うん?」


「いっしょにたべない?」


「…ぶふっ!」



あ、また笑われちゃったよ…。

大人気ないけどさー、皆に配るばっかりで最近自分で食べれてないんだもん…。



「あははは!いーよ!いっしょにたべようよ」


「うふ!ありがとう!」



ポリポリと木陰に2人で座って無言で食べる。

うん、やっぱこれだよね!緑茶とか飲みたいわー。



「…リリィ」


「ん?ポリポリ」


「ありがとう」



かりんとうの事かな?

いいのよ!皆で食べたら美味しいしさ!



「ん?ポリポリどういたひまひて」


「ボク、…がんばるよ」


「ん、がんはっへね!ポリポリ」


「ぷっ…クックック…あーあ、ばかみたいだ!」


「?ポリポリ」


「なやんでいたのがばかみたいにおもえるじゃん…リリィに…もっとみとめてもらえるように、うん…がんばろ!」



ポリポリ食べてたらリュドが何かブツブツ言ってるけど、ポリポリでよく聞こえないな。


早く食べないと、かりんとう無くなるよ?







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