24.食べたいが先行するのは仕方ないと思いませんか?
翌日、いい天気になりました。
今日はリンリンさんの所に行くぞー!そして…月の雫亭に行くぞー!!!何食べるかまだ決めてないぞー!!
『リリィ…湖が本来の目的地だからな…』
ーーー!
…分かってるわよ!失礼ね!!
今日もラフなワンピースに帽子の町娘スタイル。
帽子には加護付きのお花を刺して、完璧。
うん、可愛い!
今日の準備をしながら何故かニナが震えてます。
「リリィ様…ニナもご一緒したかった…前回の町探索も置いていかれ…」
あ、拗ねてるのね。
ニナ、セバスが一緒に行くからゴメンゴメン。
「ニナ、まちへはやっぱりりつよいひととじゃないとおかあさまがね…」
「分かってます!それでも!私だってリリィ様と町でキャッキャウフフしたいのです!」
…キャッキャウフフね…
ハイハイまた今度ね…
「リリィ様、レオポルト様がおみえになられました」
セバスが扉を開けて顔を出した。
そんなセバスをニナが恨めしそうな顔で睨んでいる。
「ニナ、こんどいくときはいっしょにいこうね」
「リリィ様〜」
抱きついてこようとするニナを避けてっと、セバス…勝ち誇った顔をするんじゃない。
階下に降りると玄関ホールにお兄様とレオがいて、何か話をしているみたいだった。
「ごきげんよう。レオ」
「リリィ、おはよう。今日も可愛いね!」
あらやだ、相変わらずのイケメンです事!
サラリと褒め言葉が出てくるなんて、イケメンというより…モテ男…古い言い方かな…。
まあいっか…それよりも何食べるか…そっちの方が大事だわ!
「リリィ様行ってらっしゃいませ…」
「あ、うん。ニナ、なにかおみやげかってくるね」
「リリィ様っっ!!」
飛びついて来ようとするニナをセバスがキャッチ。
2人の方がキャッキャウフフしてるように見えるわ…。
「では、いってまいります」
「レオ、ごめんね。リリィをお願いします」
なっ!お兄様どういう意味よ?
「ハハ、オレがリリィにお願いして付いて来てもらうのだから、こっちがお願いします。だよ」
『何かあったらスグに行く』
『ま、大丈夫だろ?セバスも一緒だし』
「はい。お任せ下さい』
…この日からニナは毎朝トマスの朝練に付き合って屋敷周辺の警備を兼ねたジョギング、その後の筋トレ、木剣での手合わせまでこなす様になったのだった。
馬車に乗り込んで、町へ向かいます。
今日は私とレオとセバスの3人だけだから馬車は一台。
レオもシンプルなスタイルであのお花を一輪胸ポケットに刺していて、指輪は…
「あれ?ゆびわはずしたんだね」
「ん?うん、もう必要ないから。リリィのおかげ」
あら甘い笑顔ですこと!
フワフワとレオのオーラが揺れてる、オニキスとセレナイト、黒と白のキラキラオーラ。
なんか幸せそうにきれいに混じり合ってる。
「でも闇の妖精のシエルには休んでもらってるけどね」
キラキラの光の妖精セリカがレオの肩に居る。
あれ?今は呼び出してない…よね?
ん?なんで居るんだろう?おっと、セリカと目があった。
あ、フンッて逸らされた…。
えー?悲しいんですけど…私何かした?
せっかく楽しい気分だったけど、シュンとしちゃう…。
あ、チラッとこっち見てる。
ニコリ…笑ってみたけど…慌ててレオの逆側の肩に動いて行っちゃった…。
「リリィ?どうしたの?」
「え、うんなんでもない。なにたべようかなぁって」
「ハハッ。今日は屋台とかは出ていない日だからね。あ、でも町で流行ってるチーズボールってやつだったら持ち帰れるよね」
「ちーずぼーるか…なつかし…ふふ…おいしそうね…」
ハッ!セリカが呆れた顔で見てた…。
二、ニコリ…
セリカとはちょっとまだ仲良くなるまでに時間がかかりそうだな…仕方なし!!
「リリィ様、魔法具屋シクザールに着きますよ」
お、食べる事ばかり考えてたらあっという間に着いたわ。
さて、リンリンさんはいますかねー?
相変わらずのファンキーな外観だね。
一見さんお断り系なのかな?ってくらい入りにくいお店だよ…。
カランコロン
「いらっしゃいませ…」
あら?普通の男の人。
すごい普通の人…って言ったら失礼よね。
この世界に来てアクが強い人ばかりと一緒にいるから、このシンプルさがなんだかホッとするわ…。
「ザジさん、こんにちは。リンリンさんはいますか?」
あ、リンリンさんの弟さんか!
「こんにちは。兄さんね、最近作業場から殆ど出てこないんだよ。ちょっと待っててね」
店内はあの日とさほど変わった様子はなく、所狭しと並んだ魔法具はキラキラとしている。
「…リリィ…ごめんなさい。まだできてないのよ…。はぁ…」
え?ちょっとリンリンさん痩せた…!!
あのお花、そこまで悩ませちゃってるの!?
「あ…えと…りんりんさん、きょうはレオのようじできたの。せかしにきたわけじゃないわ」
「あら…そうなの?ふぅ。で、レオちゃんは何の用かしら?あら?指輪は?まさかまた壊れた?」
「リンリンさん、違うんだ。指輪はもうしない事にした」
「え!?じゃあ…光の子は…」
「あ、それは大丈夫!説明すると長いんだけど…」
レオが色々説明している間にキラキラと光る魔法具に視線が釘付けになる。
魔法って便利よね、前の世界では科学が発達して色々便利な世の中だったけど、この世界も負けてないよ。
テレビとかパソコン、スマホとかの所謂家電って物は無いけど、通信機はあるし冷蔵庫とか無くても氷魔法の加護をかけてある箱が代わりにある。
ドライヤーも風の加護で。冷暖房も洗濯もなんだかんだで全て魔法で補われてる。
不思議な世界だよなぁ。
何か本屋のラノベコーナーとかのオススメコメントでチラッと見たけど、確かこういう世界に転生?転移?したら元の世界の便利な物とか知識をコッチの世界に持ってきて爆発的に売るみたいなの、よくあるんでしょ?
でもさー、それってはっきり言って無理じゃね?って思ったな。
そりゃあ知識とかは、まだモノによってはいけると思う。
アディに教えた美容法とかがそうよね?
でも、物とかはその道のプロとか携わってきてる人じゃないと作り方なんて知らなくない?
カレーの香辛料が全部言えるって人って、料理好きとか興味ある人だったらねできるけど。
カレールーがある訳じゃないから無理よね、粉からの作り方知らないじゃん。
もう調べようも無いわけだし。
この世界は車が無い、じゃあ車作ろうってなっても作る工程が分からなければエンジンの作り方だって普通に知らない人の方が多いでしょ?
ま、色々言ったけど、普通の学生さんとかただの一般人にはそういうの無理よねって事。
私だって美容師の…って言っても大分忘れてきてるけど、学科で少しの法律、衛生管理、生物化学、薬剤について…とかは学んだけどさ。
この世界にきちんと知識として出せるかって言ったら、ちょっと不安だよね。
曖昧なところがあるなら出しちゃダメだと思う。
あ、でも簡単なお菓子とか流行りの食べ物とかだったら出せるかな?
「リリィ様?どうかされましたか?」
わっ!びっくりした!!
「え?あ、ううん。…セバスってあしおとしないよね…」
「そうですね。そのように訓練しておりましたから」
ハハハ…。
どんな訓練ですか…。
「リリィ、ちょっといいかな?」
「レオ?どうしたの?」
レオとリンリンさんが何か難しい顔してる…。
「…あのペンダントね、この間盗まれたのよ…」
「えっ!?」
「ザジが店番の時に女の子が来たらしいのだけど、ウチに子供だけで来るなんて殆ど無いじゃない?お使いか何かかと思って話聞いてたらしいけど…」
「そうなんです。何かすごく挙動不審というか…何か要領を得ないって感じでどうしたもんかと思ってたら、他のお客様が来てそっちの相手をしたんです。その子その後すぐに帰ったんですけど…変だな?とは思ったのですが、来店されたのがお得意様だったもので…」
「目を離したザジが悪いのだけどね。無くなったのに気付いたのが閉店してからだったの。まあ、あのペンダントはあのままじゃ何も発動しないから、ただのペンダントだし特に高価な物でも無いから諦めたのよ。子供を疑いたくもないし…」
えーと、じゃあ…代わりになる物とかは…あるのかな?無いのかな?どうしようかな…。
困ったなぁ。
「無い物は無いから仕方ないか…」
無い物は無い…そうよね。
それはもう仕方のない事!切り替えましょう!
「うん、しかたない!ほかのほうほうをかんがえましょう!つきのしずくていで!」
えっ!?っていう顔で皆見ないでくださる?
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