21.人生って哲学みたいな物ですか?
「…てことで、またひとりおともだちがふえたの」
「…リリィってなんかすごいよね」
「そうかなぁ?」
今日はレオがお花を取りに家に遊びに来てくれています。
「我が妹ながらおそろしいよ…」
「えー?おにいさまひどい!」
お兄様ももちろん一緒。
この世界、部屋に男女2人きりでいるのは好ましくないとされていて必ず使用人やメイドを置くか、部屋の扉を少し開けておくっていうのがルールなのだそう。
私の場合は、ロウとセルが付いているから安心!(母談)だそうです。
「だって、フェンリル様だけでもすごいのに、兄弟のヨルムンガンドまで…だよ?恐ろしい以外に言葉がないよ」
『オイオイ。クリスよオレはセルだ。ちゃんと名で呼べよ』
「はいはい」
「今日初めて見たけど、ロウ様もセル…も…どっちもスゴイよ…圧倒される」
レオまでそんな事言う?
「でも、ロウだってセルだっておかしなところもたくさんあるのよ?このあいだはなした、ロウのおならとかー」
『ーー!!オイ!リリィお前何を話してんだ?』
「えー?オナラが臭くてパタパタしたのとか、寝ぼけてビクッとしたとか…」
『やめてくれよ…』
『カカカ!ロウお前情けないなぁ』
『ーー!お前だってこの間自分で自分に絡まってたじゃないか!クククあのジタバタした姿…クククッ』
『ーーーっ!!テメェ!』
『お!やるか?やんのか?魔力が減って小さいままでしかいられない奴がやんのか?」
『なんだと!?やってやるよ!』
ガタガタと窓や机が揺れる。
「ちょっ!」
「ふたりとも!!やめなさい!!」
パコンと2人を叩いた。
『リリィー!だってコイツが』
「うるさい!もう!やめなさい!!セルがからまってたのはほんとでしょ!はずすのたいへんだったんだからね!!」
『フンッ』
「ロウも!おにいちゃんなら、もっとおとうとにやさしくしなさい!」
『ケケッ』
『ニョロニョロ蛇野郎が…』
『んだと?モフモフかわい子ちゃんが!』
「やーめーなーさーいー!ふたりともおかしぬきにするよ!あやまりなさい!!」
『…すまん』
『…悪かったな』
「よろしい。もうけんかはだめよ!」
「…すごいね。いつもこんな感じなの?」
「うん…セルが来てから毎日騒がしいよ…」
「少なからず、聖獣様達…だよね?リリィといるとそんな風には見えないよね…」
アハハとお兄様とレオが2人で顔を合わせて笑っていた。
◇◇◇◇
「あ、レオこれ、どうぞ」
約束してた花を自分の分の花冠を少し崩してミニブーケにして渡した。
「そのままでもうしわけないけど…」
「リリィ!ありがとう!!リリィから貰えるならどんな物でも嬉しいよ!泥でも砂でも何だって宝物だよ」
ニッコリ笑うレオは子供だけど大人っぽく見える。
「コレ、本当にすごいね。上位の加護だよね…誰が?って聞かない方がいいか」
「うーん。わたしはちょくせつきいてないからわからないんだ」
「そっか、でも本当にありがとう。嬉しい」
私の手を取り手の甲に軽くキスをされた。
ボッと顔が赤く熱くなってしまったじゃないか…。
レオのキラリと光る指にはこの間リンリンさんの所で直して貰っていた指輪がついていた。
「あ、そのゆびわ。このあいだのだよね?きょうもきれいにかがやいてる!」
「ん?ああコレ?そうだね。直してもらったばかりだしね」
「こわれたの?」
「壊れた…というか、加護が切れたといった方が正解かな」
フフ…と笑うレオはなんかいつもと違う感じがした。
どうしたのかな?
「…そのゆびわもかごがついてるんだ!じゃあ、このミニブーケといっしょにもってたらさいきょうだね!」
「ふふ。そうだね最強だね」
ロウが尻尾をパタリと動かし、セルがグニャリと身体を動かした。
「レオ、今日は夜はどうするの?家に戻る?それとも食べていく?」
「え?かえっちゃうの?せっかくだから、たべていけばいいじゃない?ロウとセルだってそうおもわない?」
何となく、レオともう少し一緒にいた方がいいような気がして勢いよく誘っちゃった…
引いた?引いてないかな?
「ええっと、どうしようかな…」
『…もう少し、ここに居たらいい。少しくらいは苦しみを紛らわす事ができるだろう』
「ーーー!」
「ロウ?なに?」
『いや、何も』
「?へんなの…」
「うん。じゃあ、お言葉に甘えて夜までいさせてもらおうかな」
「やったー!じゃあ、ニナ!おかあさまにつたえてきて!」
「畏まりましたー。レオ様、好き嫌いは?」
「はは。特にないです。お手数をおかけします」
…レオ、何かあったのかな?いつもと何か違う感じがするけど…。
少し気になるけど…でも本人が何か言ってくるまではこっちから聞かない方がいいよね?
知られたくない事なんて、一つや二つやっぱりあるからね。
私だって中身ハタチ超えで大人なんて…
うわー!知られたくないや…
ムリムリ!!
よし、やっぱりレオから何か言ってくるまでは黙っておく事にしよう!!
『レオ、オメーの魔力はなんかちぐはぐだな』
って、セルーーー!!
私が心に決めたばっかりなのに!!
何ストレートに聞いちゃってるのよ!!!
ロウも、あ、言っちゃった…。みたいな顔してるし…。
お兄様はあちゃあ…って顔してるし…本人に至っては、目を見開いてフリーズしちゃってるじゃん!!
セル!お前はもっと空気を読む勉強をしなさい!!
あーもう!どうしよう!どうしよう!!
「えーと、レオ?ひとはちぐはぐなものなのよ?」
「え?」
あー!違う違う!!こんな事を言いたい訳じゃなくてーーー!
えーとえーと。
「えーと、いきてると、おもいどおりにならないことのほうがおおいじゃない?そんなものなのよ、じんせいなんて…」
「え…?」
じゃなくて、こんなの3歳児のセリフじゃないわ。えーとえーと…
「じぶんいがいのひとに、じぶんをわかってもらえないっていうのはけっこうあたりまえのことなのだとおもうの」
「リリィ…?」
あー!違う違う!こんな哲学めいた事を言いたい訳じゃなくて!
「じぶんでどうにかできることだったら、ぜんりょくでがんばったほうがいいけど、どうにもなりそうもなかったら、ほうっておいてもいいとおもうの」
そうそう、こんな感じの事を言いたかったのよ!
「ーーー!」
「じぶんではどうにもならないのに、そのことにとらわれて、おもいなやんじゃったりするのよね。それってむいみだったりするじゃない?」
「ーーでも、やっぱり悩んだり自分でどうにかしようとするよ…そういうものじゃないかな?」
「うん。するとおもう。でも、どうしようもならないことをがんばってるより、ほかのことやったほうがいいとおもう。たにんにまるなげしちゃうのもありだとおもうし」
「え?丸投げ?」
え?丸投げの所に食い付くの??
「うん。まるなげ。よろしく!って。とくいなひとにまかせちゃうの、おねがいねって。それでもじふんでもすこしくらいはかんがえておかなくちゃだけどね」
「フフフ…丸投げねぇ。それでもいいのかも。でも、じゃあ誰に丸投げしたらいいんだろう?」
「だれに…。えーと、むずかしいけどしんらいできるひととか、ぷろふぇっしょなるなひと…とかかな?」
「プロね…」
と言って、レオはロウとセルをじっと見つめた。
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