102.戦う理由!!
目の前からリリィが消えて残されたのはレオ、隣国の王子と王女だけだった。
「精霊姫は素晴らしいな! 一目で心を持っていかれたぞ! マリアと同じクラスならば中等部2年って事か。美しい子だったな」
「───殿下……おやめ下さい」
「何をだ?」
「殿下は国に婚約者がいるでしょう!」
「まあ、そうだな。アレは一応王妃として置いておいて精霊姫には側妃としてプライベートを支えてもらうのもいいな」
「殿下……ご冗談はよして下さい」
「フフ、冗談なんかじゃないと言ったらどうする?」
「──っっ」
「フフフ、さてどうするか……」
「あら、お兄様ばかりズルイですわ。私もレオが欲しいわ」
「───っっ! 私達は物ではございませんので」
「クク……ではマルタン王に会いに行くか」
「あら、いいわね! 私も行くわ」
「───っっ殿下!!」
◇◇◇
「何なんですかね!! あの人達!!」
『ちょっと……落ち着きなさいな……』
師匠の所に転移して、薬草をちぎりながら思いっきり愚痴を言わてもらっています。
「だって!! 師匠はどう思います!? 初めて会った人の事ベタベタ触って!! それに……」
『それに……?』
「勝手な事ばっかり言って、一目惚れだかなんだか知らないけど!! レオだって!!」
『まあ……相手はトレファス王国の王族でしょう? 最近無謀な事ばかり言う兄妹って噂よ……』
「やっぱりね!! あんな非常識な人こっちには居ないわ!! あ───っっムシャクシャする!!」
『フフ……でもいいの? レオが来るんじゃないの……?』
あ、そうだった。
本当は気持ちを伝えようと……思ってたんだ……。でもさ、レオ始めは止めてくれたけどさ……。
シャラッと胸元のペンダントが揺れた。
「今日は……もうそんな気分じゃないな……」
『……そう、じゃあポーション何個か作って落ち着いたら帰りなさい……』
「……はぁい」
ブチブチちぎって鍋に放り込んで水入れて魔力を注ぐ……無心でやってたら落ち着くかな?
ボンッ
───
『リリィ……なんか変なモノ入れた……?』
「──いえ、薬草と水だけ……です」
鍋の中には黒紫色のドロリとした何か……
『鑑定かけたけど……アンタこれはヤバい……』
「── 」
『毒薬ex……一舐めで意識不明に、一口で致死量……この量あったら1学年は殺れちゃうわね……』
「──私はまたなんて物を作ってしまったのか……師匠……封印しておいて下さい……」
『……ええ』
◇◇◇
はぁ……と溜息混じりに部屋に戻り、自分の気持ちのモヤモヤがまだ晴れてはいない。
コツッと音がしてバルコニー側の窓を見ると暗闇にレオの姿があった。
───っっ!!
今日は……ムリ。何も話せない……。
でも来てくれた……から……
カチャッと窓を開けてバルコニーに出ると、おもむろにレオが抱きしめてきた。
「──っっ」
「───リリィごめんね」
「……何が?」
「止められなかった……」
「何を?」
「──ミラン殿下が……」
「…… 」
「マルタン王に……」
「──っっ」
「でも! リリィの婚約者はオレが第一候補だ!!ミシェル様がリリィの事を簡単に許す訳もない!!」
珍しくレオが興奮して声が荒ぶっている。
「レオ?」
抱きしめられた腕の中でモゾリと動いてレオの顔を見つめると、怒りに任せているような今にも泣き出しそうな表情をしていた。
「……今夜王とミシェル様が話し合うと言っていた……。結果によっては……」
「結果?」
「───リリィ」
「──?」
「オレに拐われてくれる?」
「───えっ?」
「ミシェル様が了承する筈がないとは思うけど、万が一トレファス王国に……ミラン殿下の元へと決まってしまったら、オレはリリィを拐って逃げる」
「え? ちょっと待ってよ何? 何で私がトレファスに?」
「ミラン殿下が王とミシェル様に話してしまったんだ……リリィが欲しいと……」
───っっ!!なんて事!!
「私はそんな事了承して無い!!」
「分かってる、これが隣国の王族じゃなかったらそれで済むんだ、だけど相手は王族……下手な事をすれば戦争になりかねない……」
「──腹たつ」
「え?」
「腹が立つって言ってんのよ!! 何が王族よ!! 言ったら私だって王族の端くれよ!! マルタンがトレファスなんかにやられる訳ないじゃないの!!」
「それは、皆が分かってる事だよ。それでも平和を守るには目を瞑らなくてはいけない事もある」
「だからってレオ、私は逃げないわよ? 理不尽な事に屈したくないわ。レオが私を拐って逃げてくれるって言ってくれたのは嬉しい。もちろんそれはYESよ!!」
「リリィ……」
「だけど、あんな奴らに屈して逃げたくない。戦うわ」
「リリィ?」
「私を連れて行けるのは、私より強い人だけよ」
「リリィ……何をするつもり?」
「明日、お父様達が何を言ってくるか知らないけどね、私より弱い人に興味はないわ!! そう言うだけ。それだけでお父様は分かってくれるわ」
そう、何か言われたら戦うだけ。
それが嫌ならお帰り頂くだけだわ。
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