10.聖獣っていうのは何かすごいヤツですか?
ロウの身体に光が吸収され、何か変わるかと思ったけど何も変わらなかった。
……なんだ、つまらん。
『…リリィは意外と口が悪いな』
「あらっ!オホホそんなことございませんわよ」
『まぁ、良い。では、そろそろ戻るか?』
「うん。なんだかんだできれいなけしきもみれたし…ふしぎせいぶつともなかよくなれたし」
『……』
「ロウ、かえろう」
あ、ダジャレじゃん。
ぷぷぷ。
ロウは横目でメチャ見てきた。
すまん。
「どうやってかえるの?」
『このまま一緒に歩いて行く』
「そっか、じゃあせいれいのみなさん、またね」
周辺がピカピカ凄い光っていた。
凄いなぁ。
ん?ここって連れて来て貰わなくちゃいけないんだよね?
「ねー、またきたいっていったら、ロウがつれてきてくれるの?」
『…そうだな。我とだったら何処にいても瞬間でここまで来れるぞ』
あの湖の水は持ち出し禁止なのかな?
一瞬ですごいスベスベになったから、アディのお肌トラブルにも効きそうなんだよなー。
『む、持ち出しか…それは湖の乙女の管轄だから我には何とも言えない、』
「みずうみのおとめ…」
『あいつも気まぐれだからな。どのみち今はまだ
話もできないから…』
はらりと頭上から大きな葉が降ってきて、手のひらで受け止めるとポチャンッと数滴の水が入っていた。
「ーー!!びっくりした!なにこれ?」
『ーー。湖の乙女からの土産だそうだ。湖の滴、ただ無闇に人に与えてはいけないぞ』
「えー?じゃあアディにわたせないじゃん…。あ、うすめてけしょうすいとかにまぜてわたすのは?」
『ーーー。百歩譲っていいそうだ。ただ、ここの滴だという事は秘密にしろと、約束を違えたら湖に引き摺り込んで…』
ゴクリ。
引き摺り込んで…どうなっちゃうの!?
『…ずっと一緒に遊ぶ…だそうだ』
「………。ばつげーむにもなってないし!」
ま、まあどっちにしても貰えちゃったので、お礼は必要だね!
「みずうみのおとめさん、ありがとう!」
『次に来た時は遊んでくれ…だと。で、名前を呼んでくれと言っている』
それくらいお安い御用!
来た時と同じようにサクサクと歩き隣には来た時には居なかったフェンリルだっけ?のロウが一緒に歩いている。
変な感じ。
それにしても、気が付かない内にこんな所まで連れて来られてたなんて…
…ロウが居なかったら?
ゾッとした…。
『…精霊共は無邪気だが残酷な所があるからな。善悪の区別が曖昧な奴も多い』
「…かってなイメージだけどいいこたちばかりだとおもってた」
『精霊は気に入った奴の言う事は聞くんだ。気に入れば悪い奴の言う事だって。ただ、基本的には
善の心に反応するから大丈夫なんだが』
ああ、そういう事か。
気に入った子からのお願いだったら悪い事でもやっちゃうってやつ?
それって怖いよね。
例えば、セバスのヒゲを片方だけ剃って!ってお願いしたら……
ぷぷ。
『…リリィ、精霊は本当にやるから下手な事は願ってはいけない。あと、精霊を使うとなると魔力が必要になる。大きな願い程使う魔力は膨大になっていく』
「やらないよ!ちょっとセバスにいやがらせしたかったなーなんて…ね」
えへへと笑っていたら森から出れた。
あー、なんか疲れたな…。
ーー!!
ロウはこんなに大きいんだから乗せてくれてもよかったんじゃないの?
って思って隣を見たら、目を逸らされたよ…。
チッ。
『…リリィ、前から来るのはお前の父達だな』
ん?あら、本当だ。
「おと…「リリィ!大丈夫かっ!じっとして!動いちゃダメだ!」
えー?何?何があった??
チラリとロウを見ると少し呆れたような表情をして尻尾をフワリと私に絡めてきた。
「ーー!!リリィを離せ!」
お父様が掌をロウに向けて何か呟いた。
ブワリと鳥肌が立つ。
ロウの身体に何かが纏わり付こうとしていた。
何これ?ヤダ気持ち悪い。
ロウの身体に纏わり付こうとした何か気持ち悪いモノをあーやだやだと、パパッと手で払った。
うん。
スッキリしたね。
良かった良かった。
ん?皆どうしたの?そんなにびっくりした顔して。
ん?ロウまでそんな顔しちゃってー。
もう、気持ち悪くないよね?
あれ?まだ変なの付いてる?
『…リリィ、お前何ともないか?』
「へ?べつになんともないけど?」
強いて言えばなんか手を洗いたい気分かな?
「…リリィ……だ、大丈夫なのか?」
「おとうさま?なんかへんなのとばさないでくださる?」
ザワッと皆が目を見合わせて驚いてるんだけど、何なの?
私何かした?
『リリィ、お前今最高位の捕縛魔法を手で払ったんだぞ?』
えー?ナニソレ。
捕縛魔法とかそんなのもあるんだ!
すごいねぇ。
縄とか要らないね!
『リリィ…』
あらやだ、そんな残念な顔で見ないでくれる?
「…リリィ様…その…獣…は?」
ハッと始めに気を持ち直したのはセバスだった。
「あ、ロウです。おともだちになったの」
ほら、皆に挨拶しなさいよっ!
ゴスゴスと肘でロウの身体を押したら、またザワッと騒がしくなった。
「ガゥ」
えー?何で?喋れるのに喋んないの?
キモイんだけど。
『リリィ、お前とは頭の中で会話している。皆ともできるが…』
「しゃべれるならちゃんとして!恥ずかしい!」
ロウの頭をパコンと叩いてやった。
『す、すまん。皆、我はフェンリルのロウと言う。宜しく頼む』
ちゃんとやればできるじゃん!
始めからちゃんとしてよね!
それにしても何か手がイヤだなー。
ロウの毛で拭いてやった。
ヨシ。
皆の騒めきが止まらない。
「フェ、フェンリル…」
お兄様?ロウの事知ってるの?
「聖獣の…」
「え?あのフェンリル様?」
「リリィ様となんで?」
なんか皆口々に言ってる。
あー、何なんだろう。
めんどくさいなぁ。
ロウ、あんた何かしたの?
『我のせいにするな。お前がいきなり我を連れている事と捕縛魔法を手で払ったせいだろう』
「えー?わたしのせい?」
「リリィ!説明して!なんでフェンリル様と一緒にいるの?」
「なんで…って?えーと、ともだちになってつれてかえってもらったからです」
皆の頭上に???マークが浮かんでいるのが見えたような気がする…。
失礼な!
『コホン。我が説明しよう。…リリィは妖精の悪戯のようなモノで世界樹の湖に連れて来られていた』
「世界樹の!!」
ザワザワと皆さん落ち着かないね。
『連れて来られたはいいが契約している妖精がいる訳でもなく返す術がなかったのだ。そこに我もちょうど水を飲みに来ていてリリィと出会った』
「妖精が…!?」
はいお父様、復活しましたー!
『あぁ。そこで我はリリィを気に入った。聖獣として契約しても良いと思うくらいに。リリィに名を貰い契約して連れて帰ってきた。それが我がここに居る理由だ』
「さすが…リリィ様…高位魔法を片手で払う事と言い…なんて素晴らしい!」
セバスの視線が何か気持ち悪い。
ニナと同じで何かわからないけど…重い。
「リリィ。お前は…本当に規格外の娘だ」
お父様が近づいて来てロウの前で跪いた。
「先程は失礼致しました。娘の危機かと思い…」
『構わん。あれくらいの捕縛魔法は何ともない』
えー?なんか皆ロウに対しての扱いが丁寧じゃない?
お父様が膝突くなんて王様の前くらいって聞いた事あるけどロウって……ナニ?
「リリィ、聖じゅう様と契約したの?」
「おにいさま。せいじゅうさまってなんですか?」
「…リリィは知らないの?」
「えーと、よくわからないです」
「絵物語とかにもなってて伝説も沢山あるんだけど…まあ、いいや。かんたんに言えばね、ヒトや世界を災いから守るけもののことだよ。それと、聖なる地を守る者。だから聖じゅうって言うんだ。フェンリル様はその中でも高位の聖じゅう様だよ」
ロウを見ると、何かドヤ顔してる。
何か腹立つ顔だな…
「聖獣様、リリィと契約は完了しておられるのですか?」
『うむ。名を付けて貰い契約は為された』
「そうですか、ありがとうございます。リリィ、聖獣様にあまり粗相のないようにするんだよ?」
…解せぬ。
何で私がロウに粗相のないようとか!
でも、まあロウのお陰で戻って来れたから…
うーん、でも腹立つ顔してやがる。
ヒゲをギュンッと引っ張ってやった。
『ギャンッ』
ふん、ザマーミロ。
「リリィ!」
頭を抱えるお父様の後ろで、びっくり顔のお兄様となんかドヤ顔のセバスが見守っていたのだった。
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