アメリカの実力
ロサンゼルス空港の baggage claim でアメリカ一周のお供に選んだ小ぶりのリュックが運ばれてくるのを今か今かと待っていた。
預け荷物を待つ時間というのは意外と長い。
飛行機から早く降りれたとしてもなかなか自分の荷物が出てこないものである。
ようやく、
ウィーーーーン
とベルトコンベアが動き始める。
ドンッ。
ドンッ。
ドンッ。
と。スーツケースが運ばれてくる。ベルトコンベアからもう一つのベルトコンベアに移動する際、段差があるため、スーツケースの落下音が鳴り響く。
落ちたスーツケースは、そのまま回転寿司のようなベルトコンベアで回っている。
旅行者達はその回転寿司のように回っているベルトコンベアから自分の荷物を拾い上げ出口の方向に歩いていく。
ドンッ。
ドンッ。
ドンッ。
スーツケースが落下する度に鳴るこの音のリズムのテンポが良かったからなのか、ただ単にアメリカに到着したことで興奮していたからなのか、それともさっき聞いた「ハッピーハロウィン」という言葉のせいなのかは、わからないが、軽いトランス状態に入っていく自分がいた。
そしてついつい想像してしまう。
自分の小ぶりのリュックが流れてくる光景を。
少し笑える。
ベルトコンベアでは、とても大きくて頑丈そうなスーツケースが運ばれている。
なのにもし、その中から突然俺の小ぶりのリュックが登場したら
アメリカ人達は
「えっ、」
て、なるのかな??
普通、機内に持ち込める小ぶりのリュックは、預け荷物なんかには、預けない。
誰も、このベルトコンベアから小ぶりのリュックが流れてくるなんて予想していないはず。
それなのに小ぶりのリュックが流れてきたら、ベルトコンベアから自分の荷物が出てきたら
「えっ、」
ってなるのかな??
ガン見しながら自分の荷物を待ってるアメリカ人達の反応がどうなるのか想像しながら俺の小ぶりのリッュクの登場を待った。
「えっ、」
て、なるのかな?
どうかな?どうかな?
「えっ、」
て、なるのかな?
トランス状態とは、恐ろしいもので、外国人のリアクションを想像するとこんなくだらない事でもニヤニヤが止まらなくなる。
そして、
その時は、来た。
たくさんの大きいスーツケースが流れてくる中、
汚ねぇダンボールが流れてきた。
「えっ、」
ってなった。
なぜダンボール??
まわりを見渡すと、俺しか
「えっ、」
ってなっていなかった。
「えっ、」
ってなった。
えっ、ダンボールっていいの??
なんかへんなビニールでスゲーぐるぐる巻きにされてるダンボール流れてきてっけど、これ、、、いいの??
普通にお前ら汚ねぇダンボールスルーして自分の荷物流れてくるの待ってるけど、これいいの??
スーツケースじゃなくてダンボールで旅行していいの!?
この異常な光景に
俺以外「えっ、」ってなってる人がいない事に驚いて、「えっ、」てなった。
いや、きっと1人ぐらいは「えっ、」ってなってる人がいるはずだと、
もう一回、まわりを見渡した。
そしたら、そこに
真っ黄色のスーツに真っ黄色のシルクハット、さらには真っ黄色の靴まで履いた、じーさんが普通に立ってた。
もちろんシャツもネクタイも真っ黄色。
「えっ、」
ってなった。
「えっ、私服なの??」
ってなった。
真っ黄色だけど、それ私服なの??
それで飛行機乗ってきたってこと??
「えっ、」ってなった。
…。
ダンボールとは違う
「えっ、」
が増えた。
スーツケースが流れてくる中、やっと俺の小ぶりのリュック流れてきた。
俺は真顔で静かに拾い上げ、出口へと向かって歩き始めた。。。
…。
拝啓、日本の皆様へ…
アメリカは、、、すごい……。