エチケット
台風の影響で3時間の足止めを食らったものの、10時間のフライトの末、ロサンゼルス空港へ無事到着。着陸直前、搭乗客へ「ハッピーハロウィン」という言葉が機長の挨拶共に送られ、いよいよ旅が始まるのだという期待と希望が胸の高まりは絶頂を迎えていた。そう記念すべき1日目はハロウィン10月31日だったためである。
飛行機から出るとアメリカの匂いがぷーんとした。
これがアメリカ!!これがアメリカの匂いだ!!
アメリカの匂いは、ストロング!!結構強め!!
鼻の穴から脳天に突き刺さる懐かしい匂いは、すぐに初めて俺がこの地に訪れた日の思い出を思い出させた。それと同時に一粒の汗が俺の額から流れ落ちる。
俺は知っているこのアメリカ臭の後に待っている門番たちの存在を、、、。そう、悪夢の入国検査が。。。
入国検査それは、アメリカに入るためには、必ず通らなければならない登竜門。
ここで何か不審な言動があれば、日本に再び送り返されてしまう。
普通の旅行者や普通のビジネスマンならば問題ない、普通であれば良いのだ、普通であれば何も心配いらないのだ、普通であれば、、、。
あれは、一年前、、、
大学の卒業旅行のため友達と初めて行った海外旅行、ここロサンゼルスに来た時の事だった。
初めてというのは、実に恐ろしい。恥ずかしいと言う事も知らないから恥ずかしい事もできるし。初めてだから何も知らずに何でもできてしむう。
その恐ろしい初めてに、俺たちは英語もできない俺たちが挑んだのだ。そりゃ何かは起こるだろう。
何が起こったか、それはまず、飛行機の中で起こった。
飛行機の中では、飲み物が飲み放題。
はじめての俺たちは浮かれていた。
調子に乗って、CAにオレンジジュースやらスプライトやらめちゃくちゃ頼んだ。
何杯目の時だっただろうか、
近くに来た恰幅のよいCAに「ヘイ!」と呼び止め「コーラ」と頼む。
CAはすごく不機嫌だ。
俺はピンと来た。
なるほど。なるほど。
映画好きの俺は知っている。アメリカ好きたから知っている。
コカコーラはアメリカでは「コーラ」ではなく「コーク」という事を!!
そりゃ、日本人だって「上を向いて歩こう」を「すき焼きソング」って言われて怒る人もいるだろうよ。
次は、ちゃんと「コーク」と注文しよう。
郷にいれば郷に従えである。
ちょうどスナック菓子が来たので、また
「ヘイ」
とCAを呼び止めると食い気味で
「エキスキューズミー!!!」
と被せてきた。。。
あっ、
「エキスキューズミー!!!」
エキスキューズミーと言わんばかりの迫力である。
「、、、エキスキューズミー、、、コーク、コーク」
と弱々しく答えると。
「コーク、プリーズ!!!」
と更に畳み掛ける
「、、、コーク、プリーズ、、、」
私がそう言うと
CAは、ニコっと笑い
「ok」
と香水の匂いたけ残し立ち去った。
初めての英語レッスン。。。
衝撃的だった。
が、何故かレベルアップした気分で嬉しかった。
その衝撃的な英語レッスンを受けた俺は、もう怖いものなどなかった。
飛行機から降りて、入国審査で質問を受ける。
事前に何を言われるか「るるぶ」でわかっている。
まず、何日間滞在するのか、何のためにアメリカに来たのか、旅行者かどうかなど、簡単な質問だ。
俺の番が来た。
相手はアメリカ人にしては身長は背の低い黒人だった。身長は俺と同じくらい170センチ前後であり、髪の毛はチリチリの短髪。肩幅が広く半袖から出ている腕や制服の上からでも胸板が厚いのがわかる。はち切れそうな筋肉の持ち主である審査官に俺は心の中でボブと名前をつけた。
ボブの質問タイムが始まった。
How long stay?
1週間だからone weeks!!
言おうとした瞬間、次から次へと疑問が生まれた。
あっ、でも7泊5日だから1週間じゃないか?
え?7泊5日ってなんて答えるの??
むしろ飛行機にいた時間って入れるの?入れないの?
アメリカに滞在する時間って7泊5日じゃなくね???
え?何て答えればいいのッ!?
結果、俺の口から出た言葉は
「アワアワ」
だった。
ボブの目が細くなった!!
やばい!!
疑われてる!!
ボブに疑われてる!!!
どうにかしなくては!!!
俺は、素早くホテルの宿泊場所の書かれたプリントを見せる!!
まだ、ボブは細い目でこちらを疑っているようだったが少しは信用してくれてもいそうだった。
次の質問で決まる。
そう、直感が教えてくれた。
答えなければ、、、やられる、、、。
凄まじい緊張感が二人を包まんでいた。
テロを防ぎたいボブとアメリカに足を踏み入れたい俺の闘いがそこにあった。
けれど、知っている次の質問。
Are you here for business or sightseeing?
(仕事で来ましたか?それとも観光で来ましたか?)
という事を。
そしてそこでサイトシーイングと答えれば俺の勝ちが決まる。
正直、サイトシーイングって単語がわからないがビジネスじゃない方を言えばよい。
1番最後に言った言葉を言えば良い!!
俺はアメリカに入る事ができるはずだ!!!!
ボブが口を開いた。
What’s the purpose of your visit?
ん??
あれ??
ビジネスはどこ行ったんだ??
困惑する俺をよそに
ボブはまた同じ質問を繰り返す。
What’s the purpose of your visit?
何言ってんだボブーーーー!!!
お前の言う言葉は、それじゃないだろーーー!!!
なんじゃその質問はーーーー!!!
いや、落ち着け。。。
大丈夫だ。大丈夫。最後の言葉を言えばいいんだ。
「vist、、、」
チラッとボブを見ると。
ボブは頭を抱えてた。。。
嘘だろーーーー!!!
俺、どうなるだ???
冷や汗が出てくる。自分の息か少し荒くなるのを感じた。
再びボブが口を開いた。
「エチケット。」
ん?
困惑する俺に再び
「エチケット!!」
ん?どう言う事?
いやいや、エチケットってなんだよ!!
口が臭いって事!?
しょーがなくねー??
何時間も歯を磨けてないんたから口臭くなるでしょ!!口が臭いなぁー。と思っても言わないのが本当のエチケットでしょ!!
お前こそエチケットしっかりしろや!!
もしろお前の方が臭えから!!先に臭いって言った方が臭いからッ!!
あゝ頼むボブ!!
ボブ!頼むよボブ!!
俺、初めての海外旅行なんだよ!!
だから頼むから入れてくれ!!
口が臭いなんて理由でアメリカに入れないなんてメチャクチャダサいだろ!!
頼む!!!
願いが通じたのか少し考えてからボブは、入国スタンプに手を伸ばした。。。
スタンプは銀色で少しごつめの押すとガチャンと音が出るスプリングタイプのスタンプだ。
ありがとうボブ。
その御恩は一生忘れない!!
大好きだよボブ。
ボブは、パスポートの上にスタンプをのせて、ゆっくりと押す。
ガチャッ
っとスタンプのスプリングが音を聞こえたかと思ったら押すのが途中で止まってしまった。
いや、止まったのではない。
ボブが止めたのだ、、、。
ボッ、ブッ??
スタンプは押されずにスタンプをパスポートの上からさっきの定位置に戻してしまった。。。
ボブーーーーー!!!!
てぇめーふざけんな!!!
何だその思わせぶりはーーー!!!
Come on
と言いながら腰のついてた棒を手に持って俺を先導し始めた。
パシッ
パシッ
と棒を掌に打ち付ける音を出しながら歩くボブについていく。
先に入国審査を終えていた友達が呆然と見つめている姿が目に入ってきた。
そりゃそうだ。
黒人が棒持ってパシッ、パシッ、と音をたてながら犯罪者の様に友達が連れてかれて行く姿を見たら誰だってそんな顔になるよね。
友達と一瞬目が合ったが、申し訳なくてすぐにそらした。
ごめん友よ、俺はお前と一緒にアメリカで暮らせない。
なぜなら俺は、
息が臭いから、、、
完




