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まわる。  作者: 藍色
2/2

プロローグ。

どれほど歩いただろうか。喉はカラカラで足ももつれてきた。だがようやく目の前に多くの建物があるのが見えた。


あぁ、やっと、やっとたどり着いた。


だがこの村は人の街だろうか?先ほどの緑の生き物たちの住処ではないか?


建物の奥には山があり、その山はとても大きく、空も薄暗くなってきていたため目の前の建物も含めて、なんだか恐ろしく感じた。


そうこうしていると、建物の方から馬にまたがる人がこちらへやってきた。見目麗しいが、どうやら男性のようだ。


「旅の人か?何用でここまできた?」

なぜだかわからないが、僕にも言葉がわかるようだ。


「気がつくと平原にいました。右も左もわからず、ようやくここにたどり着きました。」


ほつれる脚を誤魔化しながらもなんとか言葉を紡いでいく。


「おぉ、そうかそうか。良かったらこの村に案内しよう。幸い今年は豊作だ。食べ物もたんとある。分けてやろう。」


「ありがとうございます。」




どうやらここは村のようだった。特に村に名前などは無く、ただ人々が集まっている。ただ、この村の人々は男も女も皆美しかった。



見ず知らずの僕のような人にも優しく接してくれ、とても美味しい料理を振る舞ってくれた。

料理は日本で食べていたものと遜色なく、まるでここはまだ日本で、遠い田舎に来たのではないかと錯覚するほどだった。


先程遭遇した緑の生き物たちについて尋ねてみたが、皆一様に首を傾げていた。どうやら彼らはこの村からあまり出たことがないようだ。


今日は夜が深く、危険だからと一泊させてもらえることになった。




「それで?あなたはこれからどこに行きたいの?」

と蕩けるような声で美しい女性が言う。


「帰りたいです。僕には家族がいますしきっと心配しています。」


「そうなの?でも帰り方もわからないんでしょう?ここから他の村に行くまでにはとても距離があるし、旅の商人や移動馬車も半月は来ないわ。それにこの村の裏の山はとても危険なの。それまではここにいなさいな?ね?ね?」


うんうんと皆がうなずいている。となると僕はこの村を見つけることができてとても幸運だったのだろう。その言葉に甘えることにし、今夜はひとまず寝ることにした。








真夜中。誰もが寝静まったであろう夜。意識は朦朧として体を動かすのも気怠く、今は夢なのか現実なのか定まらない時間。


この世のものとは思えない声だろうか?いや、音と表現した方が良いかもしれないものが聞こえてきた。それは酷く耳に残る音で、なんだか嫌なものに感じた。


この感覚はそう、緑の生き物たちと遭遇した時の感覚と似ている。

だが、瞼は重く目は開かない。きっと夢の中だろうと自分を落ち着かせ眠りにつくことにした。





「おはようございます。昨日の夜、ものすごい音が聞こえませんでしたか?」


朝になり、私を泊めてくれた方に尋ねてみたが、困った顔で首を傾げるばかりでどうやらあれは夢の中のようだった。


実際あのような音が現実でなればきっと僕がどれくらい眠たかったとしても目を覚ましていただろう。


もう気にするだけ無駄だ、今日は少し山を見に行こうか。



山の方まで向かっているとあることに気付いた。ここには建物はあるのに畑も田んぼもない。それどころか皆外を出歩いておらず、声もあまり聞こえない。


仕事はどうしているのか?あの食べ物は?気になることは多かったがまずは、山へ向かう。


その事を深く気にすることはなんだか良くない事のように感じた。


建物を越えて山に入ると、大きな木が群生しており、空は明るいにもかかわらずとても薄暗い。


少し進めばもうほとんど光源はなく空から少しばかり差し込む光でなんとか視界が保たれていると言う状態だ。村の人たちが危険だと言っていた意味がわかった。


しばらく歩くと人がいた。だが人と呼ぶにはその姿形は人とは違う点がいくつかあった。耳が長く皮膚は人のそれよりも木に近く、透き通るように白く、醜かった。そしてその木のような人は弓を持っていた。


「××××××××××?」

何を話しているのかがわからない。

だがとても嫌なものに感じる。ここは逃げなくてはならない気がした。村まではそう遠くないし、逃げ切れない距離ではないだろう。


木のような人は何か声を発しながら迫ってくる。


逃げなければ。ここは木も多い。早く逃げよう。逃げよう。


走る。村へ、逃げよう。


木の人の叫ぶ声が聞こえる。その声はとても醜くおぞましく感じた。これはなんだ、なんだ。僕はどうしてこんな間に合わなければならない。


村へ逃げれば、村へ逃げればもう、、、。



木の人はどうやらあまり追って来なかったらしい。

すぐに振り切ることができた。


だがおかしい、村がない。


「どこだ??村はどこだ??」

 

叫ぶがどこにも村はない。山を抜けて戻った場所にはーーーーー。



ーーーーーーーーーー何もなかった。



僕は確かにそこでご飯を食べ、眠り、話をした。


僕は目を閉じ、首を振る、頬をペチンと叩く。


目を開ける。何もない。だが、そこに広がるのは平原などではない。ただ何もない空間だ。後ろを振り向くと山もない。

なんだ、なんだ、これはなんだ。


空間は徐々に狭まってくる。


なんだ、どうしてこうなった。どうして。どうして。どうしてーーーーー。








目が覚めた。朝だった。どうやら夢だったらしい。


だが夢?どこからが?一体何が夢で何が現実?部屋に人が入ってきた。


だがおかしい、僕を泊めてくれた人はこんな、、、。


「×××××××××××?」

にっこりと笑うそれは酷く醜かった。


それは僕に近寄ってくる。


「近寄るな!!!!やめろ!!!!」


それは大きな口を開けて、大きな口を、、大きな口で、、






目が覚めた。

めがさめた?夢から?なにから?なにが、なにが、なにがなにがなにがなにがなにがなにがなにがなにがなにがなにがなにが、なにがなにがなにがなにがなにがなにがなにがなにがなにがなにがなにが、なにがなにがなにがなにがなにがなにがなにがなにがなにがなにがなにが、なにがなにがなにがなにがなにがなにがなにがなにがなにがなにがなにが、なにがなにがなにがなにがなにがなにがなにがなにがなにがなにがなにが、なにがなにがなにがなにがなに

がなにがなにがなにがなにがなにがなにが、なにが

なにがなにがなにがなにがなにがなにがなにがなにがなにがーーーーーーーーーー。






ああ。ーーーーーーーーー綺麗だ。
























ーーーー。

旅の者は、村に立ち寄る際は必ず魔除の鈴を持たねばならない。なぜならその村が本当の村なのかは分からないからだ。

だが村は立ち寄る時にその鈴がなると言う事はもう、手遅れだ。しかし、自害する事はできる。

その村に立ち入れば、立ち入った者にとって最上の幸せを得るが、最上の絶望も得るだろう。

無限の不幸、絶望、苦しみから解き放たれるには鈴がなった時点で、自害しなければならない。でなけらば自害することすら出来なくなるのだ。



ローエンスの手記。58ページより引用。

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