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悪夢

作者: 銅座 陽助

おぎゃあ

と、芋虫が泣いた。時刻は午前三十七時マイナス四分五十二秒八三の事である。私はゆっくりと首をもたげ、辺りの様子を見回した。目に入る限り一面の焼け野原である。生き物の焼ける香ばしい匂いが私の脳髄に突き刺さった。さて、今日も勤めを果たさねばならぬと私は外していた左の目玉を嵌めると素早く逆立ちをする。百貨店に行くとどうやら私が最後の客のようで、急げ怠け者がと罵倒を浴びせられた。心地よいシャワーである。未だに寝ぼけ眼であった私はばちりと脊髄を覚醒させ、出来うる限りの素早さでアンドロメダ行きのトースターへと入り込んだ。ジリジリと私をトースターが焼く。ふむ、どうやら今日は不調のようだ。いつもよりムラが大きい。

「トースターくん。もう少し肝臓を小分けにすると良い」

私がアドバイスをすると彼はすぐさまいつもの調子を取り戻した。

定刻になると

ちーん!!

と、高らかに鈴の音が鳴り響く。私達はその音に合わせて素早く右腕を右肩甲骨に叩きつける。ぐじゅりと良い音が鳴る。絶好調だ。そのまま私達は隊列を組み、忍び足で堂々とがなり立てる。

やあやあ我こそは紀元前三億七千二百万の昔より首を傾げに来た木の洞の惑星である!遠からん者は音に聞け!近くば寄って目にも見よ!これこそがかつて三つの銀河と七つの指を滅ぼした彼方より来たるカセットテープである!

がらんごろんと音がした。見ると砂塵の果てより身の丈千尋を超える能面が転がり来たる様子である。

おおっ

と、歓声が上がった。私達の王の帰還である。皆が一斉に走り出す!

くはは

はははは

あははははははははははは

ぷちりぷちりと潰されてゆくその様はまるで地に咲くパプリカ。これには王も私達も大興奮である。

祝え!祝え!祝え!

夢なるものは夢に非ず!

現なるものは現に非ず!

ただこれこそが真実!我らが世界!

月に咲け!空を仰げ!星に祈れ!太陽を奉れ!

我らがゆくは視線の彼方!

我らが見つめる事こそが真!

全てが事実!総てが虚構!

我らのみがその確定を司らん!

さあいざ行かん!虚の先へ!



……

…………………

じりりりり

と、目覚ましが鳴る。時刻は午前6時半。カーテンの隙間から差す光が私の目を灼いた。なんだか恐ろしい悪夢を見ていたような気がする。私は身支度を整え、机の上の左手を掴むと外へ出た。

実に良い天気だ。

今日も黒ずんだ黄身が海の果てで踊っている。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ダリの絵みたいな?シュールリアリズムという 感じがしました。 迫力があって、ユニークに感じました。 [一言] 僕の小説も感想くださいね。
2019/09/17 23:15 退会済み
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