第46話:大ピンチ!
傀儡として完成させた王を旗印とし、反逆者討伐と銘打って王都最大の軍が出陣した。
王都最大とは言え、中身は香で自我をなくた奴隷や混血児、金で雇われた傭兵や冒険者中心で構成されている。
目標は海岸沿いにある古い修道院。
そこに王を殺した者がいると情報が入ったのだ。
孤立した修道院は身を隠すのにはなるほどちょうどよい、何より一網打尽にすれば全て一度で済むというもの。
おあつらえ向きに修道院の周辺には森すらなく平地が広がっていた。
ただ霧が濃く視界は多少悪かったが。
翁達は彼らは魔物が霧に乗じて行動する事を知らなかった。
何度も霧を通り抜けた彼らの行動は魔物側には筒抜けで、修道院に到着する頃には魔物側の戦闘態勢も整っていた。
その上、魔物に進軍を知られまいと分散して進軍したのが仇となり、幾つかの隊は霧の中に潜んでいた魔物らに襲われ、目的地に到着する前に倒れた。
王を先頭にした隊は呪術師である翁達がいたため、無事魔物の巣窟であろう修道院に辿りついたものの、手勢は少なく、無謀とも言えるほど。
しかし自らの有利を信じる翁は、現れない者らを遅れていると解釈してしまった。
王は餌。
魔物の王を戦場におびき出すための餌であり、魔物の王にとどめを刺すための道具。
辛うじて生き残った隊が到着し、修道院を取り囲んだ所で王が剣で修道院を示し、それが開戦の合図となった。
敵味方が入り時混じる乱戦を、離れた崖から冷ややかな目で見下ろすのは翁達。
「今回の魔物は強いのぉ」
「うむ、統率が取れておる」
「これは負けてしまうかもしれぬぞ」
「それは怖い怖い、早く魔物の王を仕留めねば」
口々に笑い合うその表情は余裕そのもの。
まるで最初から結末を知っているかのような口振りだが、理由を問うものはここには存在しない。
「王はまだ死んでおらぬだろうな?」
「前線でよぉ戦っておる」
「致命傷を負っても死にはせぬよ、あれの肉体は疫病でとうに死んでおる」
くつくつと不気味に笑っていると、不意に戦場の空気が変わった。
「現れおったか」
「ふむ、では用意を」
馬から降り、それぞれ杖を持って王の見える場所へと移動した。
見下ろす戦場は地獄絵図。
数は人間の方が圧倒的に多かったはずなのに、魔物側の統率が取れているせいで今や壊滅寸前の状態だった。
修道院から現れたのは伴侶を伴った魔物の王。
「番も一緒か、都合がいい」
「魂を砕いて封印してやろうぞ」
「それだけでは足りぬ、二度と余計なものが介入せぬよう、教会の地下奥深くに封じてしまおう」
「それがいい、それがいい」
「王と魔物の王が剣を交えたぞ」
「では始めるとしよう」
トン
地面に杖を立てると、翁達は一斉に呪文を唱え始めた。
刀鬼「王都が留守になったからちょっと燃やしに行ってくる」




