第42話:ギルが壊れた
盛大な溜息を一つ吐き、倒れたギルバートの横に刀鬼が立った。
「春日ー」
名を呼ぶと同時に紅蓮の髪を持つ神が降臨した。
「あいよ~」
「ギルを生き返らせて」
「ギルってあれだろ、刀鬼の恩人だろ、何があった」
ざわりと剣呑な空気を出しかけた春日に刀鬼が首を振る。
「エロ親父発言が駄々洩れして嫁に殴られて即死した」
「……どっちに同情すりゃいいんだろうな俺は」
くっだらねーと呟き、乱暴に頭をかくとギルバートの横に膝をついた。
「嫁を怒らせるたびに蘇らせに来るの超めんどう」
だからさ
「俺の加護を与えよう、刀鬼を保護してくれた礼代わりに」
淡い光が一瞬ギルバートを包み、一拍おいてゆっくりと目を開けた。
「……」
一連を見守っていたレイアは思った。
エロ魔人をあの一撃で殺してしまったのも衝撃だったが、それ以上に気になったのはエロ魔人を蘇らせた春日と言う男。
だるだるとした言動。
色気駄々洩れの雰囲気。
刀鬼に対して一瞬見せた過保護さ。
こいつが刀鬼の性格を形成した一端なのは間違いない。
「レイア!」
目を覚ました瞬間、ギルバートは瞬間移動とも言える速度で動き、レイアの背後に回ると全身で嫁に絡みついた。
つまり、凝りてない。
「レイア、レイアレイアレイア、私の可愛い人」
ダメな感じが加速したうえ、デレにデレを重ね、胸焼けしそうな甘い空気を駄々洩れさせている。
「あれか、駄々洩れるのは何かの病気か感染病なのか」
一度殺してしまった罪悪感と色々と達観したのだろう、遠い目をしながらレイアが呟いた。
レイア馬鹿は死んでも治らない
むしろ悪化した模様




