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第25話:意外にピュアです

 真っ青な顔で平気だと言われても信用が出来るわけがない。


(いい男ってのは、顔色悪くてもいい男なんだな)


 濡れたような黒髪に翡翠の瞳、着ている服も上等で、ここがどういった者達が暮らしているかいまいち理解していないレイアは、貴族が寄付にでも来たのかと見当違いな事を思っていた。


「久々に食事を――その、したのですが……お恥ずかしながら逆に空腹感を覚えてしまいまして……」

「あ、わっかるよ、飢餓感が酷い時に一気に食うと余計にな!」

「はい」


 はにかむ表情も可愛い、リリアほどではないけどな!とか思いながら立ち上がろうとする男に手を差し伸べた。


「それこそアンタが吸血鬼とかなら、血を提供してやれるんだけどな」


 レイアにとってはただの冗談だった。

 吸血鬼の存在なんて御伽噺、刀鬼のセリフは完全に忘れていたゆえの失言。


「…………良いのですか?」

 

 だが男は冗談にとってはくれなかった。

 何より久しぶりの食事と、中途半端に満たされた食欲が判断力を鈍らせていたのだろう。


「へ?」


 長くて白い指がレイアの喉にのび、するりと肌を滑る。


「貴女の血をいただけるのですか?」


 男の瞳が紅く光る。

 人の姿をした魔物だと本能が告げるが不思議と怖くはなかった。


「いいよ――」


 言い終わらぬうちに腕を引かれ、男の胸に抱きこまれた。

 羞恥が沸くより先に首筋に鋭い痛みが奔り、熱さと同時に力が抜かれていくのを感じた。


(うわ、これ恥ずかしい!!!)


 血を吸われている事実より、初対面の男に抱きこまれている事実の方がレイアにとっては大事で、パニックのあまり暴れ出したくなった。

 咄嗟に殴ろうと腕を動かそうとしたが、意外に力強い腕によって阻まれている。

 

(ぎゃぁぁぁぁぁ、心臓持たねぇぇ!)


 貧血ではなく羞恥で気が遠くなったところで、首筋をぴちゃりと舐められ、それがとどめとなった。


 ボン、と音がするほど紅くなったレイアの意識はそこで途絶え、遠くで「責任は取ります」とか言っているのが聞こえた気がした。


 その日、レイアは悟った『美形に関わるとろくな事がない』という事を。


おかしいな……姉さまの最盛期は教会の壁をぶち抜いたところだったんですけどね?

手を加えて修正どころか、物語のヒロインが変わっちまってるよオイ。

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