第24話:出会い
だらだらと院内を探索しながら、なぜ刀鬼がリリアではなく自分を花嫁として推すのか考える。
リリアの方が可愛いし、可愛いうえにお淑やかで笑えば花が咲くように心が温かくなるし、綺麗なドレスや宝石も似合うだろう、社交ダンスとかもきっと上手に踊るに違いない。
レイアには花を愛でる趣味もなければ、社交性どころか教養もないし愛想なんて振れないだろう。
何より人殺しが幸せになるなんて赦されない。
とは思わないけど。
少し前までは思ってたけど刀鬼と語り合って考えを改めた。
ただ少し、与えられた力と望まれた役割に戸惑っている。
(うじうじ考えるのは性に合わねぇ、外の空気吸ってくるか)
足を速めて来た道を思い出しながら外へと向かう。
歩きながらふと悪戯心が沸き、右腕に視線をやりながら心の中で呪文を唱えれば、金色の光が腕を包み、一瞬のうちに右腕だけ鎧に包まれた。
次に呪文なしで鎧の解除をイメージすれば、なるほどただの小手に戻った。
(通常は呪文を唱えて変身すると思わせておけば、万が一の際に敵の隙を付けるなこれ)
例えば光の精霊を呼び出す際に、長々と呪文を唱えるパフォーマンスで敵の油断を誘うとかも可能になる。
(大前提としてその呪文を考えたり、口にしなきゃならないのが酷く苦痛だけどな! 最後の手段でいいなこの案は。単身突撃した方が精神的ダメージ少なそうだわ)
大聖堂を通りながらなぜここからしか出入り出来ないのかふと気付く。
豪奢さに気を取られてたし、リリアを守ることに専念していたため気が回らなかったというのもあるが、改めてみれば大聖堂はとても広い空間だった。
それこそ戦うのに不足がないほどに。
出入りは正面扉と、奥へ続く人が2~3人ずつしか通れないだろう小さな扉。
攻め込まれた時は奥への扉を封鎖し、ここで迎撃すれば奥の住人は守られる。
(最悪、敵を全員引き込んで天井を崩せば――と覚悟はしてそうだな)
扉を開ける前にもう一度大聖堂を振り返り、ここの住人は基本的に根が昏いと結論付けた。
(せっかくだし武器の調整もしてみるか)
鎧の方はもう慣れた。
呪文を口にしても変化しないという芸当が出来るぐらいに。
そうそうあるとは思えないが、来客があっても邪魔にならないよう建物にそって奥を目指す。
素振りの回数などを計算しながら歩を進めれば、行き止まりでうずくまる人影を見つけた。
「おいアンタ、どうした具合でも悪いのか? 人呼んでくるか?」
「……いえ……」
青い顔をしながらも申し訳なさそうに振り向いたのは、レイアの保護欲をかきたて守らねばと使命感を煽られるような、線が細く物腰柔らかそうな男だった。




