第15話:かえるの子はかえる
闇が笑う。
しばらく振りの再会と、いつもと変わらぬ非道な命令。
汚れ役に使われるのは嫌いではない、むしろ誇りとさえ思っている。
不要になったら捨てられるわけではないとちゃんと分かっているからこそ、どんな非道な命令も受け入れ実行する。
何より養父も守護龍も守役も知らない闇を任されるのが心地よい。
きっと彼はこんな仕事、他の者には任せないだろう。
自分の闇を露呈するような非道な行為、死の精霊と呼ばれる自分達だからこそ、彼の闇を知り、受け入れ、共有する事が出来る。
けれど……。
――ふふふ
――ますます
――似てきたなぁ
誰にも、特に養父に知られぬように、彼にだけはこの闇を見せたくないと繰り返す自分達の主人を思い出し、死の精霊が楽しげに笑う。
彼の養父もまた、息子に知られたくない、知らせないでくれと前置いて、幾度か彼らに仕事を頼んだ事がある。
世から離れて暮らす人だが、たった一人の息子のため、風を読んで世情を探り、息子の邪魔になる可能性のあるものを排除する依頼をしてくるのだ。
息子は父に、父は息子に自分達の闇を知られたくないと言う。
どちらも互いの闇を見抜き、知っているくせに知らない振りをする二人。
二人の闇を知り、自分達だけの胸にしまいこみながら、三人はいつも顔を見合わせて笑うのだ。
やはりあの二人は親子なのだと。