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戯-たわむれ-  作者: 櫻月 靭
一日目~ショッピングモールの話~
6/53

第一章5 『お会いもの』

  5(AM 10:52)


 大型ショッピングモールの一番南、一階にあるスーパーマーケットに向かう少女。

 何故か正反対のイエローゲート東入り口から入店した少女は、二階の廊下を一人で歩いていた。

 目的のスーパーマーケットは一階に位置しているのだが、少女は二階を歩く。理由は簡単。

 一階と比較すると二階の方が人は少ないからだ。といってもガラガラに空いているという訳ではなく、ただ単に二階の方が大人向けの店が多く、家族連れは一階にあるキッズ専用のゲームセンターや遊び場、ファミリー向けの飲食店の方へ集中するというだけだ。

 一階の床はセラミック式であるのとは違い、二階は絨毯(じゅうたん)が敷かれている。少女は履いているクロックスを絨毯にするように歩いていく。 

 フード付きピンク色パーカーに青色に短パン、さらに腰にもう一種類別のパーカーを結び付けた格好の少女は、被っている兎耳のフードを脱ぐ。

「はぁ~。今日はゆっくり寝たかったんだがなぁ~。お母さんったら突然買い物押し付けてくるんだからぁ~。でも、ご褒美に桜餅を作ってくれるって言うんだからこっちとしてはご褒美レベルは半端ないんだけどぉ~」

 語尾を伸ばす癖の少女――宇佐木侑李(うさぎゆうり)

 引きこもりでも人見知りでもない侑李だが、常にフードを被っている。何処に行くにも何をするにもフードを被る。しかもフードは必ず耳つきであるという条件付だ。気分でどの耳にするかが変わるらしく、朝に二枚のフード付きパーカーを選抜。一枚を着用、二枚目は腰に巻き付け行動する。

 よく夏にもフードを被ろうとしているため、侑李母が熱いから代わりにと耳付き帽子を買ってきて阻止した事があった。

「さすが、大型ショッピングモールは土日になると他県からも人が来るよなぁ~。別に都会ってわけでもない目立たない所なのにぃ~、不思議ぃ~」

 歩みを止め、二階の手すりに掴まりながら一階を覗き込む。フードを深く被り直し、下を歩く人達を眺める。

「んー、あの子の髪色中々にいいなぁ~。雑誌に載っていたものを適当に選ぶのではなかったなぁ~。おかげでどっちつかずだよぉ~」

 藍色と金色。

 本屋でたまたま買った人気雑誌を購入し、パラパラと流し読みだけした後、ついでに行った美容院でろくに選びもせず「これで」と言ってしまったが最後。右半分を藍色に、左半分を金色という髪色にしてしまったのだ。メッシュはよく周囲でも見かけるが、中々に半分ずつというのは周囲ではいない。

「けど、嫌じゃないからいいかぁ~。個性個性~」

 気持ちを切り替えるように、侑李は大きく背伸びをする。

「さてと。三時までに帰って来ればいいって言われたし、母さんの行為に甘えて色々と店を見て回ろうかなぁ~」

 最近仕事が忙しくろくに休めていなかった侑李は、今日という日を待ち望んでおり、昼まで寝てやろうと決めていた。

 だが、急に九時に起こされたと思いきや買い物に行ってくれ、と母親に言われた時には苛立ちで枕を投げつけたくなる気持ちだった。膨れながら買い物用のお金とリストを受け取り、着替えをしながらリストに目を通していた際、一番下に『明日ゆっくり寝るとして、今日はパフェでも食べておいで』という色ペンを使った母からの一言を見つけた。しかも買い物用のお金にパフェ代が含まれていたことに気付いた時、侑李はこれ以上ない至福だと感じ、母を神扱いした。というのが一時間半前の話。

「パフェは昼食時にするとしてぇ~、二階をぶらぶらしようかなぁ~」

 一瞬フードを脱いだとことで見せてしまった髪色に周囲から「あの子の髪色凄くない?」「派手~」と言った声が聞こえてきたが特に気にした様子はない。今迄も気分で髪色を変えてきたので、(はや)し立てられるのには慣れている。

「あ!あれってもしかしてかなぁ~」

 目的地探しをするため、周囲を見渡していた侑李は何かを見つけたらしい。クロックスとは思えないほど、軽快な動きで走り出す。

 満面の笑みで。

 短距離走でもするように。

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