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終章 『序章の幕開け』
「というわけですの」
午前二時半過ぎ。
普段灯りが消されているはずの時間帯に、控えめに灯された一室。室弥家一階、リビング。
そこに子供一人、大人三人。
一方的に子供が話し、それを大人三人がただ黙って聞くだけの時間。
口を開き続けるのは子供だけ。呆気に取られて口を開けてはいるが何も発せないでいる大人は、尚も黙って子供の言葉を聞き続けている。
「私がこうして話しているのは後に、大事にして欲しくないと判断しただけですわ。それと、今まで大切に育てて下さったことへの感謝と、理解はされなくとも、私の行為を見守って欲しいという身勝手な要求。そして・・・・・、お兄様の足止めと制御をお願いしたく」
薄桃色に染め上げられたタンバル盛りで、くりくりっとした大きな瞳。
可愛らしいお嬢様風ドレス式パジャマを身に纏い、きちっとした姿勢で大人三人を前に堂々とした態度で。
室弥蛍は、宣言した。
普段と何ら変わりのない、お嬢様口調で。
「私、ここを、家を、出て行かせていただきますの」
それが、どれ程周囲に影響を与えるかも知らずに。彼女の意思は、動き出す。




