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第二章 行間 『夕から夜のつなぎ』
「もしもし」
――・・・・・・・・何。
「ねぇ、桜って綺麗だっていうけど。なんにも感じない。どうしたらいい?」
――・・・・・・・・・。
「ねぇ、黙ってないで答えて下さいよ。俺珍しく真剣」
――綺麗じゃなく、美しいと感じればいいんじゃないかい?同じであって同じでないし。
「美しい?んー、なんだろ。妖艶っていうか、ほら淡く光っている気がする。それかな」
――それでいいと思うよ。元々花に興味のない者が突然それを見て感じろだなんて、無理な話だと思うのだけれど・・・・。
「そうっすか・・・・・」
――何故桜なんて見に行ったんだい?
「三巣桜って長生きがいるって聞いたから来てみただけ。特に意味はないです」
――・・・・・本当、君は自由だよね。少しでも興味を持つのはいいけど、俺は生憎忙しいんだ。明日聞いてあげるから、聞きたいことがあるのならどこかにメモして提出しておくれ。
「分かりました。じゃあ今日持ってく」
――・・・・・うん。人の話を聞かない代表的存在だな。まぁいいよ。じゃあ気を付けて帰っておいで。くれぐれも桜の真下には近づかないように。