幼なじみ
正義は小学生になっていた。
正義には近所に同い年の3人の幼なじみがいた。
サダオ、キヨシそれからチヅルちゃんだ。
サダオとキヨシは双子で正義の住居兼店舗のはす向かいの酒屋の息子。
サダオとキヨシとは男同士ということもあって、よく当時人気のプロ野球選手の長嶋や王の真似をしながら野球の真似事をしていたものだ。
お互いの家を行き来するのは勿論、時にはお風呂に一緒に入るほど仲が良かった。
小学校に上がりクラスが離れてしまうと疎遠になっていたが。
チヅルちゃんは近所の農家の末娘。
目のパッチリしたかわいい子だった。
クラスも一緒になり学校が終わると時々一緒に帰っていた。
ある年のバレンタインデーにはチョコレートをプレゼントされたこともあった。
正義もチヅルちゃんのことは好きだったので、いわゆる人生初めてのカップル成立と言って良いだろう。
まあ、小学生低学年の恋愛なので、一緒に学校から帰るくらいのデートしか出来なかったが。
小学校高学年に上がると正義はそろばん塾に通うようになった。
商売人の子供の習い事の定番と言えば定番だったが。
そこで正義はちょっとした才能を発揮した。
入塾後、塾長から「この子はものすごく理解力と吸収力があるので月謝半額の特待生にしたい」との申し出があった。
これには母史子も大喜び。
正義はメキメキとそろばんの腕を上げ、最初の8級から半年後には1級を受けるまでになっていた。
普通の子供の倍以上のスピード昇級だ。
その時は無心にそろばんをはじくのが楽しくてしょうがなかった。
人に認められる経験も初めてだったし、生まれて初めて「生き甲斐」というものを感じた。
だが、そんな幸せな時期はそんなに長くは続かなかった。