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父と母
父誠一郎が何故営業マンから市議会議員になれたのかというと、某政党の支持母体の宗教団体への勧誘実績がずば抜けていたからだという。
誠一郎の話術と情熱は他人の心を惹き付ける魅力があった。
政治家としての誠一郎は欲の無いことも手伝って金銭的なトラブルもなく、評判も上々だった。
正義はそんな父を尊敬もしていたし、自慢の父親であった。
母史子はそんな誠一郎を陰で支えながら、要領よく生きていた。
自分の意見を持たないというのがたまに傷だったが。
臆病で弱々しい正義にはいつも優しかった。
激しい気性の姉二人と父とは対照的に穏やかで上品な性質の持ち主だった。