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目の上のたんこぶ
正義は過去の記憶を振り返る旅に出た。
正義は父誠一郎、母史子、姉久子、和子の5人家族の長男として生まれた。
誠一郎はミシンの営業マン上がりではんこ屋兼市議会議員。
史子は店番兼主婦。
姉二人は双子で正義より6つ年上だったので、当時既に小学校高学年。
父誠一郎はたまに怒り出すと手をつけられない狂暴性があったが、母史子は正義に対していつも優しかった。
姉二人は弟を可愛がってくれるのを期待していたが、実際は逆だった。
両親が市議会の会合で出かけると、留守の間に正義を柱に叩きつけ、気が済むまで暴力を振るっていた。
泣いてもわめいても暴力は止まることはなかった。
おかげで唇が切れて口が曲がってしまった。
このことは正義にとってトラウマであり、いまだに何で自分がそんな理不尽な暴力を受けたか分からない。
この体験が「人間は恐い生き物だ」という強烈なインプレッションを正義に植え付けた。
以後姉たちに上から抑圧される辛い幼少年期が続いた。
正に目の上のたんこぶだった。