ガンクレイジー・デイズ (The Ugly Killers Now) 【シナリオ形式】
<主要登場人物>
琴子:上原琴子。高2で、外見は典型的優等生イメージ。
母親:琴子の母親。
男子A~:男子高校生たち。
先生:数学の教師
強盗A~:3人組の強盗。
おじさん:強盗の被害者。
刑事:壮年の刑事。
○学校
パァン……と銃声が響いてる。
○教室
眼鏡をかけ、痩せた先生は黒板に向かったまま、動じる様子もなく。
先生「えー、つまりこの公式は……」
モノローグ「銃声が聞こえても誰も反応しない。もう慣れっこになってしまっています。」
琴子は虚ろな目の無表情で口を結び、ノートを取っている。
琴子は小柄な女子生徒。髪を細いリボンで結んでいる。(ツイテ?)
モノローグ「おびただしい汚職や不正で警察組織は崩壊……『平和主義』の名のもとに一切の軍事・治安組織のない国になってから7年。」「時代は、予想と違う方向へ行ってるようです。」
先生の左脇にも拳銃が見えている。
○屋上。
射たれた男子が、瀕死の状態で転がっている。
男子A「痛え…痛えよぉ…」
琴子、冷たい目で見下ろしてる。
モノローグ「わずか十年前まで、学校で殺人があると全国ニュースになっていたと聞いてます。」「どこの学校でも週に1人や2人は死人が出る今の時代からだと、まるで異世界のような話です。」
どこかから銃声が響いてくる。パパァン パン!
○後者裏
琴子、虚ろな目のまま歩いてくる。
そこには、撃ち合って重傷となった男子が2人と、死んでる女子一人。
男子B「ううっ……」
男子C「医者ぁ……、医者頼む…。」
琴子、死んでる女子を見下ろす。
銃は持っていないが、射殺死体で、死ぬ前に暴行された様子も見られる。
男子C「た、頼むよう…」
男子C、琴子の足にすがり付こうと寄って来る。琴子、本能的に後じさる。
琴子、下に拳銃が落ちてることに気づく。
琴子「拳銃…もちろん違法です。でも、取り締まる人がいないから、外国からどんどん入ってきます…国内でも作られてると聞きますし。」
琴子、歯を剥いた表情で拳銃を拾うと、
バァン パァァァン! 男子Cの額を撃ち抜く。
男子B「ヒッ……」
琴子「あなたたちは、助けてあげてもどうせまた殺し合うもの。」
琴子、男子Cに銃口を向ける。
男子B「や、やめろ!」
琴子、発砲。
男子Bも血まみれで、断末魔の苦しみ。
漂う硝煙の後ろで、琴子は返り血を浴びた顔でにらみ付けている。
ピクッ……ピクッ……男子二人はすでに死体。
それを見ていた琴子……
やがて苦悶の表情。
そして、膝をつき、四つん這いで吐きはじめる。
モノローグ「生ゴミの山よりもひどい悪臭……。それは、自分がやったことによって生まれた、気持ち悪い、汚物と排泄物の腐ったニオイ。」
しかし、吐き終わると、胃液の流れ出る口元がわずかに笑っている。
○琴子のマンション(勝手口?)
琴子、扉を開けながら
琴子「ただいまぁ」
母親は夕食の支度中。
母親「ちょうどいいわ…琴子、お夕食……」
琴子「いらない。」
母親「?」
その後ろでニュースが流れている。
TV「国会は治安組織の必要性を審議しておりますが…」「与党××派は反対の意見で党論をまとめようと……」
○琴子の部屋
琴子、ベッドに鞄を投げて、横になる。
琴子「…………」
琴子、しばらく天井を見ていたが、
鞄に手を突っ込み、
拳銃を取り出して見つめる。
○荒れ果てた、物置のような教室。
サボリ中の数人の男子が、マリファナを手に談笑中。
男子D「いい葉っば、手に入ったじゃねえの。」
男子E「こればっかりは止めらんねえよな。」
男子D「これ、憶えちゃうと、生きてるのがバカバカしくなるぜ。」
ガラッ…そのとき、無造作に扉が開かれて、琴子が入って来る。
男子E「なんだよ、てめえはよ?」
琴子、ポケットから拳銃を抜き出すと、
驚いてる男子たちに発砲。パァ…パァン パァン!
男子たち、銃を抜いた者もいるが、反応が遅れて次々と撃ち抜かれていく。
男子D、腹を撃たれて苦しみながら、涙と血まみれの顔を上げて
男子D「な、何するん……」
琴子「生きてるのがバカバカしいんでしょ?」
琴子、男子Dの口に銃口をねじ入れて、
琴子「じゃあ死ねば?」
ドッ。撃ち抜く。
琴子、硝煙の中で微笑を浮かべている。
モノローグ「生きた人間が、死体という、ただのモノになる。」「吐き気を催していた悪臭さえも、しだいに心地よい空気となってきました。」
○教室
授業中。
先生「そういえば……」
ふと先生は雑談。
先生「最近、銃声が少なくなったな。」「ワルどもの死亡率が上がってるのかねぇ?」
それを聞いてる琴子。
口元に微笑を漏らす。
先生「もうすぐ警察も復活するらしいし、また昔みたいに……」
モノローグ「…………あれから数ヶ月。校内で、銃を持ってる生徒はだいぶ減りました。」
○河原
並べたカンを、琴子が撃ち抜いてる。(射撃の練習)
すべて当たってるわけではないが、まあまあの命中率。
琴子「そう。最初からこうすればよかったのよ……」「世の中に、いたら迷惑な人間はいない方がいい。」「そのための道具もあるのだから。」
ガシャン! とガラスの割れる音が響いてくる。
琴子「?」
その音は、河原の近くの家からしたようだ…。(家の外見)
○河原の近くの家
琴子、そっと窓から覗いてみる。
琴子「!?」
家の中では、おじさんや家族がガムテープで縛られ、女性が強盗たちに暴行を受けている。
金目のものを物色している強盗たちもいる。
琴子、そっと窓を離れる。
(時間経過)
強盗たち、何食わぬ顔で家の中を物色中。
強盗A「そろそろ、いこう。」
強盗B「おう。」
が、強盗Bがいきなり後ろから撃たれる。
驚く強盗たち。
琴子が、家の中に入り込んで、物陰から撃っていた。
もう一人強盗Cも、驚いてるうちに射殺。
慌てて拳銃を取り出して撃つ強盗A。
しかし琴子は、両手で拳銃を支え、落ち着いて狙って撃つ。パァン!
強盗A「グァハッ!」
琴子「ヘタクソ…ろくに練習してなかったのね。」
琴子、部屋に入って来て、苦しんでる強盗に、さらに数発を打ち込む。
強盗の体が跳ね上がり、血が飛び散る。
琴子の顔にも返り血が。
モノローグ「……たまらないわ。」
琴子、冷たい目で嬉しそうな表情。
琴子、目を見開いてふるえてるおじさんに気がつく。
そして口のガムテープを乱暴にはがしながら、
琴子「大丈夫ですか?」
おじさん「あ……あ……あ……」(ショックで何も言えない。)
琴子「手だけ解いときますね。あとは自分で……。」
手のガムテープを剥がす。
おじさん「う……あ……あ……」
琴子、軽蔑した目。
モノローグ「……なにを動揺してるのかしら?」
○学校
モノローグ「学校は、だいぶ静かになりました。」
○屋上
白骨死体が風に吹かれている。
モノローグ「迷惑な人間はいない方がいい。」
○琴子のマンション
琴子「ただいまぁ」
母親(青い顔)「琴子……」
琴子「?」
母親、蒼ざめて震えている。
母親「あんた…なんてこと」
母親を押しのけるように、見知らぬ男(刑事)が。
刑事「上原琴子さんですね?」
琴子「はい?」
刑事「拳銃不法所持と連続殺人の疑いで逮捕します。」
驚いて言葉を失ってる琴子の手に、手錠が。
○マンションの前
パトカーへと連れてこられる、茫然自失の琴子を、野次馬が取り囲む。
おじさん「そうです、まちがいありまぜん。あの女の子でした。」
警官に証言しているおじさん。
琴子、呆然とした表情のままおじさんの方を見る。
刑事「早く乗るんだ。」
パトカーのドアが閉められ、
サイレンを鳴らしながら走り去ってゆく。
TVの声「警察復活の逮捕第一号は、都内の女子高生でした。容疑は連続殺人……」
「政府は、治安回復のためには劇薬の処方、いたら迷惑な人間はいないほうがいいという方針で、成人・未成年に関わらず、犯罪者はすべて死刑という新刑法を……」
~~~ 終 ~~~