『プレスマンの森』
武蔵国の秩父のあたりには、子の権現というお宮が幾つもありますが、中でも吾野というところにある子の権現は、多くの人の信心を集めていました。境内も大層広いのですが、広いのに大きな木がなく、日除けがなくて困る参拝者も多いのでした。
そんな子の権現に、一人の修験者が立ち寄りました。何やら霊験のありそうな修験者で、誰ということもなく、境内に名木が茂るようにしてください、と両手を合わせて拝むのでした。
修験者は、境内の灯籠に腰を下ろして、弁当を使いながら、うんうんとうなずいて、食べ終わると、はしを地面にぶすぶすと差して、十日ほど水を与え続けるように、と言い残して、さっさと行ってしまいました。
残された者は、ほとんどが近くに住む者たちでしたので、かわりばんこに水をやるための相談をしましたが、冷静に考えてみると、はしが木になるわけがなく、何か不思議な力のあるはしなのかと思って、近寄ってよく見てみると、はしどころか、それは二本のプレスマンで、はしが木になるわけがないと思った人々からすると、その気持ちはさらに強くなりました。
ほんの何人か、言われたとおりにしようという人たちが、毎日水を与えたところ、どういうわけか、プレスマンだったはずの修験者のはしは、すくすくと育って、三年もすると、大木になり、虫も鳥もヘビも住む森ができたということです。
教訓:プレスマンの木にプレスマンが実るというのが、最もすばらしい未来。




