女神、目覚める。
「失望したぜ、カナタ。
お前が本当に……“プログラムで終わる女”だったなんてな」
吐き捨てるように言い残し、カイは小屋を出ていった。
「……お前のそれは――
凝り固まった現代を解す、平和の鍵だ」
「柔らかい哲学なのさ……そんなもん、簡単にプレイヤーに渡すべきじゃない」
イワタニも続き、天井を見上げる。
まるで詩人を気取っていたが――
「――おっぱ〇 イズ ドリーム」
内容はバカそのものだった。
「あー……あのよ!!
あいつら全員バカだけどさ、俺は期待してっからな!
またさ、皆で一緒に冒険しようぜ!」
マサキ・シンはそう言い残して、バカたちの背中を追った。
……静寂。
残されたNPCたちは、一瞬、フリーズしたかのように動かなかった。
誰かが、口火を切る。
「ははっ、カナちゃん、あんな連中気にすんなって!」
「ストーリー的にも、もうモブだぜ?!いわば、空気トリオよ!」
「ウケる~~」
命のない者たちの、どこか“乾いた笑い声”が響く。
「そうですね……気にするわけがありません。私は、プログラムですから」
カナタ・ゼロハチイチは、冷静に、微笑みすら浮かべて言った。
そして――
「では、皆さん。所定の位置にお戻りください」
ヒュンッ……
ブゥン……
命令と共に、NPCたちは無表情のまま、次々とワープ消失していく。
まるで何もなかったかのように。
(……ふぅ)
小さく息を吐いて、カナタはひとり小屋を出た。
そこは、月隠れの森。
待っていたのは、銀髪の青年だった。
「終わったか?」
彼の名はジンセ。
トップランカーのマルチプロゲーマーにして、ゼロハチイチの主である。
「ったくよ……。NPCが決起集会って。
やっぱこのゲーム、イカれてんな」
「そうですね」
「……ん?」
「なんだ、何怒ってんだ?」
「怒ってなどいません」
「お、おい?!」
ジンセを無視して、カナタはずんずんと森の中を歩き始す。
「おい、待てって!
なんか変だぞ……、お前……」
「"感情に目覚めた"?
とでも言いたいのですか?」
「え?」
「いいえ、私はプログラムです」
カナタは、きっぱりと断言した。
「いや……、ちげえ!」
ジンセの声は、もはや届いていない。
(ふざけないないでよ。“プログラムで終わる女”ですって……?
当たり前じゃない。
だって、それが――私の"使命"なんだから!)
ずん、ずん、ずん。
「だから止まれってー!!おいカナタァ!!」
森の鬱蒼とした、木々を抜ける。
そして、次の瞬間だった――
カナタの足元には、"何もなかった"。
「……え?」
「きゃあぁぁああああああああ?!!」
見事なまでの重力落下。
「……言わんこっちゃない」
ジンセは、ため息をついた。
「まあ、大丈夫だろ。 なにせ――NPCだしな」
ニュートラルバーサス、ヒロイン・カナタ。
欠点らしい欠点はないが……
しいて言うなら――
ちょっとだけ、天然すぎた。




