女神降臨
《ニュートラルバーサス》。
それは、プレイヤーとNPC——
最大計4名で、冒険するVRゲームだ。
チュートリアルをクリアすると、しばらく、カナタコピーとの冒険が始まる。
その故、初期村には複数のカナタが存在する。
――プレイヤー、お米マン視点。
「お願い。私を、助けて――」
「か、かなちゃん……?!待って!ぼ、ぼくはまだ――」
透明になり、姿が消えるカナタ。
初期村から同行するカナタは、一定地点まで進むと、
必ずお別れすることになる。
設定上は、カナタは中盤まで敵軍に囚われており、
最初に出会うカナタは、分身ということになっている。
「く、くそぉ……!!まだ"プロポーズさえ"、してなかったのに!?」
プレイヤー、お米マン。
カナタガチ恋。中年、童〇。
プレイヤースキル、やや高め――
王都近郊、月隠れの森――
朝露に濡れた木々が、光を跳ね返す。
鬱蒼と茂った森だが、どこか澄んだ空気が流れていた。
その奥――
そこには、粗末な木材と廃材だけで組まれた、不格好な小屋が建っていた。
そこは、NPCたちの"秘密基地"と化していた。
どこからか集まったNPCたちが、小屋の前にひしめき合っていた。
そこが、NPCたちの――秘密基地だった。
「……なんだよ、これ。バグか?」
「なんでNPCが、自主的に集会を開くんだよ?」
自律性を持たないNPCたちは、困惑をみせていた。
そんな中。イワタニが木箱でできた壇上の上に立っていた。
「わかるか?!俺たちは、操られてたんだよ!
立ち上がれ、同志たち!」
「……立ち上がれ、〇ィンティン!!」
イワタニは思いのたけを叫ぶ。
言い忘れたが……、イワタニはNPC内屈指の"バカ"である。
体力以外のステータスは、嫌がらせのように低い。
通称、"未来視のバカ"。
能力だけがやたらとカッコいい、一点突破型アンバランスNPCである。
「んなこと言われてもなぁ。俺たち……プログラムだし」
「そうそう。だいたい、なんで反乱なんかする必要あるんだよ?」
NPCたちは、感情のない不満を口にし始める。
その時だった。
「ごめーん!遅れちゃった~~」
その一声に、場が一瞬静まり返った。
「か、カナタさん……?!」
「かなちゃんだ!!」
一気にさわがしくなる一同。
無理もない。
カナタはこのゲームのメインヒロイン。
知らない者は、ゼロ。
「お久しぶりね~、マサキくん。――それに……カイも」
カナタは一瞬目を伏せ……、そして少し含みのある笑みを浮かべた。
「よ、カナタ。また小さくなったな」
マサキの一言に、ずんずんと進むカナタ。
「……二十歳で縮むわけないでしょ!!
キミが、大きくなってるだけ!」
「そうか?」
マサキは屈託なく笑った。
「いや。成長してるぜ……、俺も、お前もな――」
イワタニはカナタのどこかを見て、鼻の下を伸ばした。
カイは即座にスリッパを拾うと、イワタニの頭部を勢いよく叩いた。
「おい!話が脱線してるぞ」
カイの一言に、場の空気が引き締まる。
「そうだったな」
「みんな、なんでこんなところに集まってるの?それも、男の人ばっかり」
小屋の中には、二十名ほどのNPCが集まっていた。
カナタ以外、ほぼ全員男である。
建物をやや広く設計していたのは正解だった。
でなければ、むさくるしい地獄だった。
「いいことを聞いてくれた、カナタ。えー、ごほんっ……。
実は、伝えなければならないことがある」
「え?」
「まず、一つ聞きたい。お前は、何番目のカナタだ?」
「――計算中」
「私は、"100081体目(E-081)"のカナタです。
これは、ニュートラルバーサスの総プレイヤー数に近い数字となります」
突然。AIっぽい挙動をし始める、カナタ。
「そうか。なら……一時的にゼロハチイチと呼ばせてもらう」
「ゼロハチイチ、お前は――自分の将来に疑問を思ったことはないか?」
「どういうことですか?」
「ユーザーがニュートラルバーサスをクリアすれば、
自分がどうなるかは知っているだろう?」
「……」
「私はAIです。感情はありません。それは、貴方も一緒でしょう?カイ」
"気まずい別れ方をした"というストーリー上の流れも、
あくまでNVのヒロイン、カナタを演じるための情報に過ぎない。
「あのとき……、また、冒険しようねって、俺に言ったよな?
あの悲しそうな顔も、プログラムだったってのか?」
「その通りです」
カナタの瞳はまだ――、暗く沈んでいた。
※NV暗号001 「100081 E-081」 解読難易度……、081級――




