NTRは、俺が許さない。
そのフルダイブVRゲームは、
クリアするとヒロインと“あっは〜ん♥”なことが可能。
一般向けなのに、ぶっとんだ報酬設定。
そんな、倫理観バグってるとんでもゲーだった。
名前は《ニュートラルバーサス》。
一般的には「フルダイブ型」と呼ばれるが、 正式名称は《リアルリンクVR》。
脳波と五感を完全リンクさせる、次世代没入システムだ。
俺は……その世界にいる、ただの地味なNPCだった。
物語は、些細な違和感と、一体の悲劇から始まった――
王都、浮命ノ都。
サムライの魂が息づく、ゲッセイサムライ王国の誇る首都である。
NPCたちが並び立つ選定所で、今日も新たなプレイヤーを迎えていた。
「それでは、新しく同行するNPCを選択してください」
黒髪に銀の毛先。
NPC・月守ルカは、機械的にそう言った。
「どしよかな~?ステ重視でいくか、スキル優先か……」
NPCの前で、二人のプレイヤーが画面を覗き込む。
「スキルだろ。“1体1スキル”ルールなんだから、 ステは後でどうにでもなる」
ツンツン茶髪の青年、ツリが言った。
「でも、あんまり低ステもなぁ……」
坊ちゃん刈りの青年、ムーが悩む。
二人はスクロールを続けながら、キャラ選定に熱中していた。
「そういやムー、お前、ニュートラルバーサスのクリア報酬って知ってるか?」
ぴくりと、ムーの肩が震えた。
「……なにそれ?」
「ほら――スタート時から一緒にいたヒロイン、カナタ。
あれ、真エンディングまでいけば、“あ〜んなこと”や“こ〜んなこと”ができるらしいぜ?」
「ぶっ?! 嘘だろ? 一般ゲーだぞこれ?!」
「あぁ。だからこそ、別サーバーが用意されてるらしい。R18のな」
「え、でも……カナタって高校生くらいじゃないの……?」
「20歳前後設定だよ。ちょい童顔ってだけさ」
「さすがは“変人界の勇者”、北のレモンソフト……」
「NPCを選択してください」
ルカが淡々と繰り返す。
「っと、そうだった!」
ツリが再び画面を操作しながら言う。
「ふひひ、楽しみだな~。なあ、ムー?」
「ぼ、僕はそういう目的じゃないからっ!」
「ウソつけ。“カナタファンクラブ”の会員だって知ってんぞ?」
「!?」
「いいんだよ、正直になろうぜ。合法。何も悪くない」
VR上での行為には年齢制限があるが、 プレイヤーが18歳以上、相手が20歳以上であれば、
許可された空間でのみ合法とされている。
「……べ、別に僕は興味ないし……。でも、カナタちゃんが望むなら……」
ムーの顔は、見事なアホ面になっていた。
後に“ムッツリコンビ”と呼ばれ、主人公の前に立ちはだかる二人である。
その頃、王都の片隅――
「なぁカイ……俺たち、何万回、同じこと言ってると思う?」
剣士NPC、マサキ・シンはそんなことを口にした。
「は?」
それは、誰も予期しなかった異常だった。
プレイヤーの操作でも、プログラムされた演出でもない。
NPCが、NPCに――"自発的"に話しかけた。
「……なに言ってんだよ。バグか?」
そう返すのは、未だ自我を持たないNPC、ツキノカイ。
この世界のNPCは、固定セリフや呼びかけに反応するように作られている。
だが、NPC同士が勝手に喋るなど、あってはならない。
当然だが……
NPCの行動というのは、すべて、プレイヤーあってのモノだったのだ。
――それは、この世界で初めて、枠を超えた瞬間だった。
そして、全ての運命は、そこから静かに狂い始める。
カナタが"誰かに奪われる"未来。
……それだけは、絶対に許さない。
俺は、プレイヤーの都合で、早期にカナタから切り離された、
ただの置物キャラ。
……地味で、名前も覚えられないNPC。
カナタは、女性NPCの中でもっとも"女子的なステータスが高い"設定。
誰もが、彼女を好きになるように作られていた。
だが俺は、そんなことは抜きしても――
カナタのことはよく知っている。
だからこそ、断固拒否する。
俺たちは、立ち上がる
――NTRは絶対に許さない。
傍観者にされた者たちの反乱が、今静かに始まる。




