世界はそれを何と呼ぶのか
短編です
はじまりは小さなそんざい。ふわふわで、あいまい。風がふけばとんで行ってしまいそうなほど、やわらかで小さなもの。
ときおり来るナミにさらわれてしまいそうにもなる。
ふとしたひょうしに消えてしまうこともある。
それが私だった。
誰かにふれられて、はじめて、その外にカラを成した。それでもまだ、小さく弱い。カラは柔らかで、すぐに破れてしまいそうなほど脆い。
やはり風が吹けば飛んで行ってしまいそうなほど軽い。
次第に触れる誰かの手が、声が増えてくると、殻は少し安定した。ちょっとやそっとの事では破れない。手でつまんでも問題はない。
しかし時々、触れる手が、鋭いトゲを持っていると、途端に破れてしまう。比べるとまだまだ弱い、私の殻。
トゲに刺された穴を修復していると、今度はつるつるの棒に殴られた。
修復途中の殻に、またヒビが入った。中身が漏れ出してしまいそうだ。早く修復をしなくては。
隙間を埋めるように、柔らかいものや優しいものを詰め込んで、中身も補充して、不格好ながら修復は完了した。しかし硬くなりつつあった外殻は少し脆くなったように見える。
よく見ると、裏側には小さな穴まで開いている。流動的な中身は、そこから漏れ出していた。小さな穴を埋める柔らかいもの、そんなものいったいどこにあると言うのだろうか。
途方に暮れていると、いつぞやの優しい手が、外殻に触れた。その手は、棘はないけれど、柔らかいものも持っていない。何もない。ただ優しく開いた穴を撫でてくれた。
不思議とその穴からは、流動的な中身も漏れ出してはいかなかった。
優しい手は、私を壊してしまわない様に、いつも優しく温かく触れてくれた。その手の温もりが、心地よかった。
気が付くと、私のボロボロの外殻の外に、もう一枚、柔らかなベールがかかっていた。穴を塞いではくれないけれど、中身が漏れ出すのを防いでくれた。
少し漏れ出しても、また優しい温かな手が、包み込んでくれた。
その手が、私に優しく語り掛けてくる。
“愛しているよ”
そう言ったその手は、ベールの上から優しく優しく撫でてくれた。
ふわふわと柔らかで、形のなかった私は、この日初めて形を成した。
私の名前は“愛”。世界は私を、“愛”と呼んだ。
——愛と呼ばれる物——
ファンタジーです!




