表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

世界はそれを何と呼ぶのか

掲載日:2025/12/29

短編です

 はじまりは小さなそんざい。ふわふわで、あいまい。風がふけばとんで行ってしまいそうなほど、やわらかで小さなもの。

 ときおり来るナミにさらわれてしまいそうにもなる。

 ふとしたひょうしに消えてしまうこともある。

それが私だった。

 誰かにふれられて、はじめて、その外にカラを成した。それでもまだ、小さく弱い。カラは柔らかで、すぐに破れてしまいそうなほど脆い。

 やはり風が吹けば飛んで行ってしまいそうなほど軽い。

 次第に触れる誰かの手が、声が増えてくると、殻は少し安定した。ちょっとやそっとの事では破れない。手でつまんでも問題はない。

 しかし時々、触れる手が、鋭いトゲを持っていると、途端に破れてしまう。比べるとまだまだ弱い、私の殻。

 トゲに刺された穴を修復していると、今度はつるつるの棒に殴られた。

 修復途中の殻に、またヒビが入った。中身が漏れ出してしまいそうだ。早く修復をしなくては。

 隙間を埋めるように、柔らかいものや優しいものを詰め込んで、中身も補充して、不格好ながら修復は完了した。しかし硬くなりつつあった外殻は少し脆くなったように見える。

 よく見ると、裏側には小さな穴まで開いている。流動的な中身は、そこから漏れ出していた。小さな穴を埋める柔らかいもの、そんなものいったいどこにあると言うのだろうか。

 途方に暮れていると、いつぞやの優しい手が、外殻に触れた。その手は、棘はないけれど、柔らかいものも持っていない。何もない。ただ優しく開いた穴を撫でてくれた。

 不思議とその穴からは、流動的な中身も漏れ出してはいかなかった。

 優しい手は、私を壊してしまわない様に、いつも優しく温かく触れてくれた。その手の温もりが、心地よかった。

 気が付くと、私のボロボロの外殻の外に、もう一枚、柔らかなベールがかかっていた。穴を塞いではくれないけれど、中身が漏れ出すのを防いでくれた。

 少し漏れ出しても、また優しい温かな手が、包み込んでくれた。

 その手が、私に優しく語り掛けてくる。

 “愛しているよ”

 そう言ったその手は、ベールの上から優しく優しく撫でてくれた。

 ふわふわと柔らかで、形のなかった私は、この日初めて形を成した。

 私の名前は“愛”。世界は私を、“愛”と呼んだ。


——愛と呼ばれる物——

ファンタジーです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ