裕福と貧困
中に入ると、コンクリートの壁に囲まれた、薄暗いエントランスがあった。
「何か不気味ですね・・・。」
ピノキオが怯えて言った。
「はあ?何言ってるの?これくらいで不気味なんか言ってたら、詐欺師失格よ。」
クロネコはクールに言った。
「そうなんですか、あはははは・・・。」
ピノキオは苦笑いをして言った。
そしてその先にある階段を登って二階に行くと、広くて、2つのふかふかのソファと、しっかりとした黒い木製の長テーブルがある部屋があった。
「ここはオシャレでいいですね。」
ピノキオは少し微笑んで言った。
「そうだね、しっかりしたオフィス用のデスクもあるしね。」
ニコラはニヤリとして言った。
そして三階に行くと、ちょうど6つの部屋があり、中は埃っぽいが、豪華な内装だった。
「わあ、懐かしいですね。
私が裕福だった頃を思い出します。」
ピノキオはそう言って、彼女は子供の頃の記憶を思い出した。
「お嬢様、ここが私たちの新たな邸宅ですよ。」
年を取った女性の家政婦がそう言って、豪邸の大きな扉を開けた。
「わあー!」
あまりの豪邸の広さに子供の頃の彼女は嬉しさのあまり、声を上げた。
「何で家がこんなに広くなったの?」
彼女は家政婦に聞いた。
「それはですね、お父さんが投資に大成功したからなんです。」
家政婦は優しく答えた。
「”とうし”?」
彼女は不思議そうに聞いた。
「そう、と・う・し。
“とうし” って言うのはですね、儲かるなあって思う会社の株を買って、その会社が儲かったら、株を売ってお金が増えるようにする取り引き、いわゆるゲームみたいなものなんです。」
家政婦は優しく説明した。
「ふーん。」
彼女は理解したふりをしたが、内心理解していなかった。
そして彼女は小学校の間、とても裕福で充実した暮らしをしていた。
実際、彼女は美味しいごはんを何一つ不自由なく食べることができた。
そして私立小学校の中でも比較的成績が良く、勉強は普通にできていた。
さらに、彼女は人間関係のやり方も極めて上手で、友達も多かった。
そのため、彼女はすべて完璧だった。
12歳までは・・・。
ある夏の日の深夜、ボーっという音が聞こえ、彼女の豪邸はあっという間に炎に包まれた。
彼女の父は株価の大暴落により、父の持株会社は大量の借金を抱えてしまったのだ。
そのため彼女の両親は自暴自棄になり、彼らは自殺し、家を自ら放火してしまったのだ。
彼女は燃えている家を、大きな入り口の門から見て、呆然と立っていた。
しばらくして家政婦が来て言った。
「お嬢様、私はお嬢様をお世話することができなくなってしまったので、最後に、ひとつだけ言わせてください。
強くたくましく生きてほしい。
人生は、いろんな壁に直面し、時には失敗することもありますが、あなたの父のように諦めてめちゃくちゃにしたら、それが本当の過ちです。
お嬢様、どんなに困難に陥っても、父のようにだけはしないでください。
分かりましたか?」
彼女は無言で泣きながら、うなづいた。
それから彼女は孤児院に入った。
そして彼女は院内のいじめに耐えながら、自力で必死に勉強して、京応大学法学部を奨学金で合格した。
その後、警視庁公安部に入るが、この世を救うために、二重スパイとして、詐欺集団ヘルメスに入団した。
しかし彼女は大人になった今でも、あの残酷なトラウマを毎日のように思い出すのだった。