ネクスト・コンフィデンス
実は一日目の朝、ポンジは池袋でホームレスたちに支援をしていた。
だが、彼はそれだけではなかった。
彼はその日、ある男性に会っていた。
その男性の名は、黒木勇男だ。
彼は10年前、四井墨共銀行で働いており、上司からのパワハラに耐えられず、その上司を殺した人物だった。
「君、殺人犯だろ?」
ポンジは彼に尋ねた。
「そうだ」
黒木は、道端で寝そべりながら、絶望したように答えた。
「今は、そのことを反省しているか?」
ポンジはしっかりと彼の目を見て聞いた。
「反省しているよ、とても」
そう言って、彼は泣き始めた。
「なら、もういい。君、人生を変えないか?」
ポンジは彼に不思議な質問をした。
「変えられたらうれしいよ。でも、そんなことできるわけ…」
「それができるんだよ」
ポンジは嬉しそうに言った。
「どういうことだ?」
そしてポンジは、黒木に作戦を伝えた。
作戦は、黒木がこの事件の犯人として振る舞い、刑事たちに通帳のコピーを見せ、そのまま逮捕されるというものだった。
成功すれば、報酬は一億円だという。
「いいが、一度逮捕されたら、もう…」
「大丈夫だ!家宅捜索の際、君の部屋に証拠は一つも無い。そうすれば、たとえ現行犯逮捕されたとしても、証拠不十分で不起訴になる。だから、お願いだ。やってくれないか?」
ポンジは必死に頼んだ。
「いいよ、やるよ。どうせこのまま野垂れ死ぬより、百倍ましだ」
そして、今に至った。
「どういうことだ!?ニノ花!!?」
警視庁の取調室で山岡は激怒し、彼の首を掴んだ。
しかし、彼はずっとニヤニヤしていた。
「ニノ花は、俺が作った偽名だ。本当の名は黒木、黒木勇男だ」
その瞬間、山岡はハッとした。
実は黒木は、かつて山岡自身が捜査し、逮捕した人物だったのだ。
だが今、彼にとってそんなことはどうでも良かった。
「あの書類は誰からもらった!?」
山岡は怒鳴った。
「それは言えない。その人に、絶対に言うなって言われてるからなあ」
黒木はニヤニヤしながら言った。
「言え!!」
山岡は、ほとんど脅迫するように叫んだ。
「やーだね。だってこの国には、言いたくないことは言わなくていい「黙秘権」があるからなあ」
黒木の笑みは、次第にサイコパスじみた表情へと変わっていった。
「この卑怯者!!!」
山岡は激しく罵った。
「だが、これは言ってもいいと言われた。この事件は、すべて詐欺集団ヘルメスがやったことだ」
それを聞いた瞬間、山岡は叫んだ。
「クソッ!完全に罠にはまった!!」
一方その頃、ヘルメスの面々はセブ島のビーチで、のんびりと過ごしていた。
「黒木は不起訴になったそうだ。良かったな」
ポンジは微笑んで言った。
「本当に良かったです」
ニコラは嬉しそうに答えた。
「あの…僕、最近考えていることがありまして…」
ニコラは言いにくそうに切り出した。
「何だ?何でも言っていいぞ」
ポンジは優しく促した。
「ポンジさんには失礼かもしれませんが、
詐欺って、正々堂々と戦っていないですよね。本当に正しいことなのか、分からなくなってきて…本当の正義が、分からないんです」
ニコラは、珍しく悩んでいた。
するとポンジは、穏やかに語りかけた。
「本当の正義というのは、苦しんでいる人のことを考え、行動することだ。例えどんなに世間から悪だと言われても、やり遂げること。そして例えその手段が詐欺のように卑怯だとしても、結果として誰かのためになるなら、それは正義だと、僕は思う」
「それに、このツッターのコメントを見てくれ」
そう言って、ポンジはスマホの画面を見せた。
ー横浜カジノ誘致、詐欺にまんまと引っかかる
犯人、金をホームレスにばらまきか(ヤハーニュース)
よくやった、ヘルメス!
私、ヘルメスを応援してます!
ヘルメスは貧しい人たちの味方だ!ー
「みんな、僕たちを応援している…」
ニコラは驚いた。
「そうだ。これが、僕たちの行動が正義だという証明だ。だからニコラ、君の行動は正しい。自信を持っていいぞ」
「はい…ありがとうございます…」
ニコラは号泣しながら、深く頭を下げた。
その夜、ピノキオはAと一緒に、ビーチを眺めながら雑談していた。
「アハハハ」
「ハハハハハ」
「あの…ニ年前、僕が自殺しようとした時、助けてくれてありがとう。あの時のこと、今でも覚えているよ」
Aはそう言った。
「いえ。あなたも大切な仲間ですから」
ピノキオは微笑んだ。
しばらく沈黙が流れた後、Aは意を決したように言った。
「実は俺、あの時からずっとピノキオさんのことが好きなんだ」
すると、ピノキオは顔を赤らめた。
「実は…私も、あなたのことが好きでした」
二人は、ビーチの夜景を背に、静かにキスを交わした。
それから二人は交際を始め、やがて結婚した。
ヘルメスのメンバーたちはフィリピンへ逃亡し、セブ島のリゾートで、事件の熱が冷めるまで身を潜めた。
その間もポンジは頻繁にマニラを訪れ、ホームレスへの支援を続けた。
三年後の2024年の秋の夜、彼らはヘルメス結成の地、渋谷サクランブルスクエアの屋上に立っていた。
東京の高層ビル群の夜景を見下ろしながら、ポンジが言った。
「そろそろだな」
他のメンバーたちも、静かに頷いた。
彼らは以前よりも、ずっと逞しく見えた。




