天才ゆえの苦悩
5人の貧乏そうな人々と一人のサラリーマンが六本木にある、プリンサホテル東京の朝食ビュッフェで、必死に食べていた。
「どう?
美味しいだろう?」
細川は微笑ましく言った。
「はい、もう最高です!」
「行き返りました!」
「本っ当にありがとうございます!」
3人が感謝して言った。
「良かった。
8時になったら、みんなチェックアウトして、一緒に六本木駅前のユニクルと、ドラッグストアで、変装グッズを買おう。
それまでは楽しんで。」
そして8時になり、6人はチェックアウトをして、タクシーで駅前に行き、洋服店のユニクルで大量の帽子、サングラス、そしてドラッグストアでマスクを買い、路地で着替えて、残りは全てスーツケースにしまった。
それから、駅前のトトールで、作戦会議をした。
「まず、私たちの偽名と担当を決めよう。どの偽名にするか自分で決めなさい。」
細川は真面目に言った。
「うーん・・・。」
しかし、急に全員が黙り始め、沈黙がしばらく続いた。
「じゃあ、自分の得意な分野で、それに関連する偉人、またはもので決めたらどう?」
スーツを着た、頭の良さそうな男性が冷静に提案した。
「いいね、それで行こう。
じゃあまず、君。
僕に最初に返事をしてくれた人。
君は何が得意なんだ?」
細川は少し微笑んで聞いた。
「僕は計算、特に経済の統計学が得意です。」
彼は謙虚な態度で、しかし誇らしそうな表情で言った。
「そしたら、科学者にしよう。あなたが1番尊敬している科学者は誰なんだ?」
細川は彼をよく観察しながら言った。
すると彼はふと何かの記憶を思い出した。
それは彼の小学生の頃の思い出だった。
「賢君って、頭いいよねえ。」
友達は、小学校のテスト返却で、99点の答案を見て言った。
「そう!?ありがとー!」
賢は嬉しそうに言った。
すると別の男子がまた意地悪に口を挟んだ。
「でも、あいつ、賢人は100点だぜ?」
すると、賢は驚いた表情をして、クラスメイトに囲まれている賢人の答案を覗いた。
100点
すると、彼はたちまち顔が曇った。
すると、さっき口を挟んだ男子がみんなに言った。
「賢と、賢人、有名な科学者だとしたら、お前ら誰にする?」
「えー、賢人君は絶対エジソンだよね?」
ある女子が彼に好かれようとして言った。
「確かに!!!何かいっつも発明してるしな!」
みんなは面白そうに賛成した。
「じゃあ、賢は?」
さっきの男子がみんなに意地悪そうに聞いた。
「賢は・・・ニコラ・テスラかな?」
誰かが急に態度を変えて、つまらなさそうに言った。
するとみんなはまた煽るように賛成した。
「いいね、じゃあこれから二人はそのあだ名で行くか?」
さっきの男子が意地悪に言った。
「よろ!
エジソン、ニコラ!」
みんなは半分褒めて、半分からかった。
そして、賢人は満面の笑みを浮かべた。
しかし、賢はわざとらしく苦笑いをしていた。
それからは、賢は、みんなからニコラと呼ばれるようになった。
そして、中学校は公立で、高校は東京都立響谷高校に、永遠のライバル、賢人と一緒に進学した。
しかし、いくら勉強を頑張っても、学年2位、賢人には勝てなかった。
彼の高校時代は、そんな比較されただけの辛い思い出だった。
そして、大学は二人とも留学したが、賢はイギリス、賢人はアメリカで、ようやく離れた。
さらに、賢はオックスフォード大学経済学部に合格し、嬉しさに浸ったが、それは束の間だった。
一日後、高校のグループチャットで、賢人がハーバード大学法学部に合格したことが、話題になった。
それを見た瞬間、賢は悔しすぎて、ロンドンのマンションの部屋で、泣いて泣いて泣きまくった。
その後、賢はアメリカに移住し、ルーマン銀行に入社し、彼の能力が認められ、数年後すぐにマーケティング部部長に出世した。
しかし、1ヶ月後すぐにルーマンショックが起きて、銀行は破産、会社員は全員解雇された。
そして賢は路頭に迷った。
しかし賢人はその頃、日本に帰って、警視庁捜査二課の警部に就任し、数々の難事件を暴き、新聞にも載るほど有名になっていた。
賢は、彼の人生の中でずっと悲劇のエジソンのライバル、ニコラ・テスラだった。
「二・・・コラ。」
彼は半泣きで言った。
「分かった、君はこれからニコラだね。あなたは?」
細川は短髪で、強そうなジャージを着ている若い女性に聞いた。
「私は猫が好きだから、クロネコで。」
彼女は即答で答えた。
「分かった、君は?」
細川は、キャップをかぶっている40代の男性に聞いた。
「俺は・・・映画が好きだからスピルバーグだ。」
彼は、スピルバーグを憧れるように言った。
「分かった。君は?」
彼は、いかにも引きこもりのような髪がボサボサの男性に聞いた。
「僕、もともと大手ソフトウェア企業のBananaに勤めていたので、創業者のジョブズにします。」
彼は言った。
「いいよ、じゃあ最後に、君は?」
彼は疑いながら、作り笑いをしているスーツを着ているポニー・テールの若い女性に聞いた。
「あの・・・誤解しないで頂きたいのですが、私、実は警視庁公安部に勤めていまして・・・。」
その瞬間、細川とニコラ以外の全員が彼女の方を向き、激しく睨んだ。
「こっこのおおおお!!!!てめえー、裏切り者だったのか!?」
スピルバーグはそう言って、彼女の胸ぐらを思っいきり掴んだ。
ニコラ・テスラ
エジソンのライバルである、天才発明家。IQが160~310と異常に高く、数々の画期的な発明を残したが、エジソンとの対立、そして商売の能力のなさで、失敗。借金を多く抱えて孤独に晩年を過ごした。