謎の銀行員
すると、ビルはスピルバーグが戸惑っている様子に気づき、ジェスチャーを始めた。
「ん、ん!」
彼は手で円の形を作り、それをスピルバーグに見せた。
それを見たスピルバーグは数秒考えてから言った。
「はい、そうです。特捜部が、警視庁公安部の…」
すると彼は、また黙り込んだ。
ピノキオのコードネームを思い出せなかったのだ。
再びビルは、スピルバーグにジェスチャーをした。
両手をお腹の横に置き、手のひらを花の様な形にして示した。
それは、桜、つまり桜道捜査官を表現しようとしていたのだ。
しかし、スピルバーグには理解できなかった。
そこでビルは、自分のメモ帳に急いで「桜道」と書いた。
それを見て、ようやくスピルバーグは理解した。
「桜道捜査官に依頼致しました」
スピルバーグは必死に言った。
「ふーん、分かりました。しかし、今後公安に依頼する時は、直接個人に連絡するのではなく、公安部を通してください。では、失礼致します」
そう言って切野は電話を切ったが、ピノキオを睨んだ。
ピノキオも切野を睨み返し、二人はしばらく睨み合った。
その沈黙を破ったのは、山岡だった。
「もう確認は取れたんだからいいだろう。まだ取り調べをしていない銀行員も大勢いるし」
そう言われ、切野は仕方なく言った。
「…分かりました。桜道捜査官、もう帰っていいですよ」
悔しさを滲ませながらの言葉だった。
ピノキオは礼も言わず、怒ったように叫んだ。
「じゃあ、もう退職します!こんなところ、もう嫌です!!」
そう言って彼女は退職届を提出し、公安部を後にした。
しかし、警視庁の建物を出た瞬間、ピノキオはサイコパスな笑みを浮かべた。
ーこれで正当な理由で退職できた。しかも事件のことで怪しまれないー
全て計算通りだった。
そして捜査対象となっていた人見は、その様子を呆然と見つめていた。
ー伊集院さんは、僕にとって程遠い存在、まるで、かぐや姫の様だー
彼は心の中で、そう思っていた。
その後、ジョブズは東京地検の通信サービスを再開させた。
「はあ…」
夕焼けに染まるオレンジ色の空を見上げ、切野はため息をついた。
「何か手掛かりはないのかなあ」
疲れた声でそう言う。
「そんな初日から見つかるわけないだろう。切野君、君は頭がいいが、少し自信過剰だ。もう少し謙虚になりなさい」
山岡は厳しく言った。
「はーい…」
切野はそう答え、再びため息をついた。
そのとき、高木が、取調室へ向かって走ってきた。
「大変です! はあ、はあ…!!」
激しく息を切らしながら、高木は言った。
「どうした?」
切野が問い返した。
「自分が犯人だと名乗る銀行員が、突然現れました!!!」




