ギャンブルによって失われた物
するとニコラは、ふといい考えを思いついた。
ーあっ、そうだ!
この話をして、彼を落ち着かせようー
「中林さん、あの…子供の頃にポーカーという遊びをしたことはありますか?」
ニコラは突然、中林に質問した。
「ありますけど」
中林は、ややイライラした様子で答えた。
「あれって面白いですよね。他の人の表情を見てカードを予測しつつ、自分の手札の状況を考え、賭けるチップを決める。そして何より、最後まで相手を欺き続けて勝利したときの達成感。子供の頃、すっかりはまっていましたよ。中林さんも、そうだったんじゃないですか?」
すると中林は、幼少期の記憶を思い出した。
「私も、昔はよく両親とその遊びをしていました。あの頃は、とても楽しかったのを今でもよく覚えています。しかし、私の両親はパチンコにのめり込み、そのせいで多額の借金を抱えてしまいました。それ以来、私はギャンブルをくだらなく、そして恐ろしいものだと思うようになったんです。でも…やはり、みんなは私の両親とは違って、ほどほどでやめられるものなんでしょうね」
中林は、悲しそうにそう言った。
「すみません。先ほどは怒ってしまって。
自分の中にある、残酷なトラウマを思い出してしまい、つい怒鳴ってしまいました」
彼は反省するように言った。
「いえいえ、大丈夫ですよ」
ピノキオは、優しく応じた。
「では、審査通過ということでよろしいですね?」
「はい」
中林は、落ち着いた声で答えた。
「それでは審査通過ということになります。皆様、これからお配りする書類に、お名前のサインをご記入ください」
そう言ってピノキオは、いくつかの書類を彼らに渡し、署名させた後、回収した。
「ありがとうございます。次に、弊社では融資の際、万が一のための保証金と手数料を頂いております。まず、弊社の銀行口座に、融資額の50分の1にあたる10億円を保証金として、そして手数料として一律10万円をお振り込みください。その後、融資額の500億円に、保証金と手数料を加えた金額を、皆様の御社の銀行口座にお振り込みいたしますので、ご安心ください。それでは、皆様よろしいでしょうか?」
「ちょっと待ちなさい」
鋭目が、鋭い目つきで言った。
「それ、本当なの?普通なら、そんなお金は発生しないはずよ」
彼女は、きっぱりと言い切った。
ーどうしよう。何とかして、彼女を信じさせなきゃー
ピノキオは内心そう思ったが、いい考えは浮かばなかった。
彼らは、またしても絶体絶命の大ピンチに陥ってしまったのだった。
一方、静まり返った拠点の二階のオフィスでは、ポンジがイヤホン越しに取引の音声を聞いていた。
彼らが金融庁の役員に疑われ、窮地に立たされている、その瞬間である。
そんな中、最も重要な役割を担うリーダーのポンジは、ニヤニヤと笑っていた。
「すべて、作戦通りだ」
そう言って彼は、サイコパスのような笑みを浮かべていた。




