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しんせかい  作者: 日陰四隅
第一章 リンネ
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アンチ・アザーズ⑤

 その夜、市中に警報が鳴り響いた。


 市街各所で伝令が走り、眠る市民に避難するように声を上げる。


 次々と目を覚ます市民は困惑した面持ちで窓の外を見る。


 遠目に変化はない。一体何に対しての避難勧告のか。あるいは、その時に上空にいる存在に気づいた市民は何人いただろうか。



「なんだなんだ?」


 警報の音に魔王城で飲んでいた魔王達はぞろぞろと表にでてきた。


 今晩は何やら騒がしく、通りには管理局員やら治安維持部の班員やらが市中を埋め尽くしているらしい。


 事件かはたまたクーデターか。どちらにせよ自分たちには関係ない事だと決め込んでいた矢先のコレだ。


 いよいよどっかの馬鹿が国家転覆でも考えたか、と皆は思ったがどうやら様相が違うらしい。


 市中ではあちこちで伝令が避難を呼び掛けていた。市民も困惑した面持ちで事態を把握出来ていなかった。


 だが、彼らはこの警報がなんの為に鳴らされているのか理解した。


 それは、市中が騒がしくなってから警報が鳴る直前の事。この街の中心に近い場所から嫌な気配を感じ取った事。そして。


「あの野郎が原因か?」


 真下に管理局をのぞむ上空。暗闇の空に浮かぶ1つの存在に彼らは気付いていた。


 その時。


「諸君。仕事の時間だ」


 管理局員ケージを小脇に抱え、その一派とともに魔王ゲーデ、エドモン・ダンデスが現れ告げたのだった。



 シュッセ邸のゴタゴタの後、そのまま管理局にいた魔王様に小脇に抱えられ、俺は他の連中とともに魔王城にやってきた。


 魔王城の前ではゾロゾロと化け物の親玉達が集まっており、その様相はさながら百鬼夜行の如くであった。ただ、流石に魔王と呼ばれていただけはある。連中は揃って管理局の上空に浮かんでいる存在に気付いているのであった。


 そんな事を思っていると魔王様に投げ捨てられた。


「あてっ! ちょっと魔王様、もうちょっとマシな下ろし方ないの?」


 そうエドモン・ダンデスに抗議すると彼は鼻で笑った。


「オイオイ、エドモン。いきなり現れて仕事だっつーけど一体なんなんだ。まぁ、想像は付くけどよ」


「想像が付くなら説明は必要あるまい。各自、勝手に配置につくように」


「待て待て、早急だな。俺達は肝心な事を聞いていない。つまり、報酬は誰が払ってくれるんだ?」


 聞かれた魔王様が地面を指差す。それを見た魔王達が揃って声を上げた。


「つまりとりっぱぐれはないわけ、と」


「まぁでも、こう頭数が無駄に多いと懐に入る金額もこの国は俺達をいくらで買うと言っている?」


 その言葉に魔王様は空を指差した。


 瞬間、口笛と歓声があがる。


「マジかよ!」


「気前いいじゃねぇか!」


「けど、それってことはそれだけの強敵という事」


「ここにごまんといるのはラスボスの集まりだぜ? それを前にして何が対抗できるってんだ?」


 違いない、と笑って魔王たちは一斉に消える。次の瞬間には彼らは市街のあらゆる屋根の上に現れた。


「やる気満々じゃない」


 カズヤが口元をつり上げた。


「さぁて、それじゃあ新参者に上下関係を叩き込んでやらねぇとな」


「ああ、存分にやりたまえ」


 意気込み魔王達に魔王様、エドモンは頑張れと告げた。


「で、実際どうなんだ? 行けそうなか?」


 怪人を見あげている魔王様に聞いた。


「わからん」


「わからんて。大丈夫なのかよ」


「なるようにしかならんだろ」


 魔王様の言葉にそりゃそうだが、とおもった時、屋根の上の魔王達が動き出した。


「地の底、世界の果て、裏切りの代償、永劫の責め苦、此処は魔の王を繋ぐ氷原、許されざる者の監獄、コキュートス!」


「灼熱の業火、永劫の焦熱、赤色の鉄針に全身を穿たれ、全身を裁断されなお消えぬ炎にその身を焼く、ダークインフェルノ!」


「死して御身に拝謁し、己が罪を測りにかけなさる。我が心は地に墜ち、その魂は無へと帰す。ブラックホール」


「とりあえずビーム!」


 屋根の魔王達がそれぞれ呪文を唱える。現れるのは炎や氷や黒色の魔力のようなものやビームやら。何やら数名雑な奴がいたような気がしたが、それらが一斉に空に浮かんだ怪人目掛けて一直線に突き進む。


 微動だにしていない怪人。魔王達の攻撃は全て怪人に直撃した。


 瞬間、空に巨大な火球が発生した!


「やり過ぎだ! 馬鹿野郎!」


 反射的に地面に伏せて、吹き荒ぶ風をやり過ごす。魔王達の攻撃は加減を知らず、その余波でアルストロを壊さんばかりの威力だった。


「うわぁ! すっごい派手!」


 同様に真横で地面に伏せているスキエンティアが言った。


 衝撃波が過ぎ去り、一転して市中から悲鳴や叫び声が響き渡る。顔を上げれば空には巨大な黒い雲が浮かんでいた。


「いーやっはー! 見たかこの野郎!」


「これじゃあ消し炭も残らんなぁ!」


 ご機嫌な魔王達。これを見せつけられると腐っても連中が化け物だという事を実感せざるおえない。しかし、よく物分かりよく話聞いてくれてるよね、コイツラ。


「流石にコレではあやつもただでは済むまい」


 立ち上がったアオエが空を見上げてそんな事を言った。普通に考えたらあんな威力の攻撃を受けたら欠片も残らないだろうが、無言で佇む魔王様が真顔で空を見上げているのがものすごく不吉である。


「…………あ? なんだありゃ!?」


 屋根の上の魔王の一人が言った。その言葉に一斉に俺達と魔王達が空を見上げた。


「…………嘘だろ?」


 カズヤが呆れる。俺もそれを見て唖然とした。


 漆黒の煙が晴れてくる。空に浮かんだ輝く月に照らされ、変わらない姿であの怪人が浮かんでいた。

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