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しんせかい  作者: 日陰四隅
第一章 リンネ
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怪盗ルイス・J・セルリーヌ7世⑬

「は、ははは、はははははは、あはははははははははっ! 見たか、貴様たち! これが、"使途"よりもたらされた私の力だ!」


 降り注いだ破片の中から這い出てきたシュッセが、頭部が再生する化け物を見て俺達を指差して言った。


「あのデブ、ぜってーいまビビってただろうに!」


 俺は吐き捨てるように言った。


「しかして、いかにするか! これではキリがない!」


 アオエが俺に向かって言う。


「いや、おそらく不死の生き物じゃねぇ! 機械人形ってーのもいるらしいが、その類でもない気がする! おそらく、何かしら弱点があるはずだ!」


 絶対自身があるかといわれれば流石に言い切れないが、経験則から言えば種があるタイプの不死だ。何かしらの仕掛けを持って不死に近い状態になっているだけで殺せない生物ではないはずだ。


 となると生物の弱点というのは頭ともう一つに決まっていて…………。


「それじゃあ、アレしかないんじゃないかな?」


 どうやらスキエンティアも同意見らしく明らかに金属で守られている心臓を指差した。


「私もそう感じる。しかし、アレは撃ち抜けそうか?」


 怪盗がカズヤに聞いた。


「馬鹿言うな。あんな金属の塊、45口径でぶち抜ける分けねぇだろ」


「先ほどの弾は?」


「後一発」


「後一発だと! 何だって二発しか持ってきていない! 馬鹿なのか!?」


「その一発をお前に叩き込んでやろうか! 試作品だって言ってんだろう! 大体、魔法弾の小型化は手間がかかるんだと!」


「喧嘩は構わんがそろそろ時間がないぞ」


 言い争う怪盗とカズヤにアオエが言った。見ると化け物の頭は失う以前の形をほとんど取り戻していた。


「あくまで金属部は人工物だ。人が作った物なら何かしら手が加えられるはず…………、いけるか?」


 怪盗は考え込んでいった。 


「保証はあるか?」


 俺は聞く。


「あるわけないだろ、馬鹿者。最善を尽くすだけだ。だが、少し奴の動きを止めて欲しい」


 カズヤは、トドメとして俺を含めた三人がやるとして…………。


「…………某かぁ」


 と溜息をこぼすアオエ。


「しかたなし」


 頭部が再生した怪物がこちらを見る。


「某が首を落とす」


 そういってアオエが刀を構えた。


 歩みよる化け物。カズヤが迷わず銃を構え、撃った。


 その弾丸を化け物は手で遮る。


「あ、この野郎!」


 防がれて叫ぶカズヤ。化け物はそのまま肩からカズヤに向けて突っ込んだ。


 それをカズヤが真横に避ける。そのまま地下の壁面に激突する怪物。


 衝撃で地下が揺れ、天井から埃がこぼれた。


「まったく、嫌になるね」


 拳銃からマガジンを引き抜いたカズヤがぼやく。


 化け物は壁面から身体を引き抜くとカズヤを見やった。その時、化け物の背後から首にロープがかかった。


「こちらだ化け物!」


 それは怪盗が投げた物だった。首に縄をかけた怪盗はそれを引く。が、化け物はビクともしていない。


 逆に今度は化け物が首にかかったロープを掴んだ。


「アラッ!?」


 間抜けた声を上げる怪盗。それと同時に化け物が縄を引っ張る。瞬間、怪盗の身体が浮く。


「アホーッ!」


「キャッチ!」


 それを見て俺とスキエンティアが縄に飛びついた。一瞬、浮いた怪盗の身体が再び地面に付く。


「すまない、助かった!」


 振り返って怪盗は言った。


「それより、前! 前!」


 目の前の光景を見て俺は言う。怪盗も振り返る。そこで化け物がさらに力を込めてロープを引こうとしていた。


「「「あ」」」


 今度こそ終わった、そう思っていると化け物の肘がぶち抜かれた。


「今だ! 引け!」


 銃口から硝煙を放ちながらカズヤは言う。


「カズヤ! 愛している!」


 それだけ言うと俺達は全力で引っ張った。化け物の身体は腰から折れ、そのまま仰向けに倒れ込む。


 そこに脇構えのアオエが素早く回り込む。


「キェェェアァァァァァァッ!!!」


 声を上げ、倒れ込む化け物の首を下から上へ両断した。


「怪盗殿!」


 刀を振るうアオエが叫ぶ。


「任された!」


 そういうと怪盗は持ったロープを手放し倒れ込んだ化け物に取り付いた。


「しかし、一体誰がこのような事を。この生物は人のようにも見えるが、しかし、この大きさでは…………、」


 ぶつぶつ言いながら怪盗は胸部の金属部分をいじっている。


 その間にも怪物の頭はどんどん形成されいた。


「怪盗殿! お早く!」


 元の形を取り戻しつつある頭を見てアオエが叫ぶ。


「ええい! わかっている!」


 いまだに金属部をいじる怪盗。


 先に怪物の頭が元に戻った。


「ヤバイヤバイヤバイ!」


 仰向けに垂れたまま頭だけで体にとりついている怪盗を見た。怪物はそのまま片腕を持ち上げる。


「もう、少し、で!」


 最後、金属板と身体に設置された金属部の隙間に器具を差し込み力を込めて引き上げようとし、そして外れた。


「外れた!」


 そう声を上げると同時に身体が転がる。怪盗を捕まえようとした化け物の手は虚空を掴んだ。


 その後、化け物は地面に手を付き立ち上がる。一度、自身の左胸を触ると怪盗を見た。


「まさか、意識があるのか!?」


 座り込んだままの怪盗が驚く。


 胸から腕を外し、やや早歩き気味にも見えない様子で怪盗に近づく化け物。明らかに狙っていた。


 剥き出しの心臓が鼓動を打つ。近づく化け物は両腕を振り上げて怪盗を潰そうとしていた。


 そこに、カズヤが割って入る。


「地獄に落ちな!」


 カズヤは言うと引き金を引いた。


 高速で放たれる弾丸は的確に心臓に吸い込まれ、貫いた。


 噴き出る血液。怪物は自分の胸を一度見るとそのまま倒れ込んだ。


「…………やった」


 座り込んだままの怪盗が言った。


 怪物は赤い水たまりを広げて倒れ込んだまま動かなかった。今度こそやったらしい。


 各々俺たちは立ち上がりシュッセに振り返る。


「さて、商人シュッセ。ご自慢の化け物があのざまだがこの後はどうなさる」


 俺の言葉を聞いてシュッセが鼻で笑う。


「貴様、まさか"ニューマン"がたった一体だとは思っていないだろうな」


 若干ひきつった笑みを浮かべてシュッセは言う。想定外は想定外だったらしい。


 だが、ちょっと待て。


「…………オイオイ、まさか」


 俺の言葉にシュッセが指を弾く。同時にあの化け物の頭が転がってきた。


「…………ッ!?!? 何故!?」


 転がってきた頭部を見て今度こそシュッセが驚愕していた。


「ああ、これはすまない。その趣味の悪いものは私が全て処理してしまった。どうにも、我慢ならない程気色が悪かったものでな」


 そいつは階段の方からやってきた。


「やぁ門番殿。相変わらず面白い状況に巻き込まれているようだな」


「アレ? 魔王様なんでいんの?」


 気さくそうに声を掛けてきた男に向かって俺は言った。


 やってきたのは魔王ゲーデ、エドモン・ダンデスであった。

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