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しんせかい  作者: 日陰四隅
第一章 リンネ
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怪盗ルイス・J・セルリーヌ7世⑪

「…………これは」


 煙でむせ返る中、怪盗の息を呑む声が聞こえた。隠し金庫? の扉が開いたためか、吹き抜ける風が煙を攫っていく。


 晴れた視界の中、涙目を擦りながら佇む怪盗に掴みかかった。


「テメェこの野郎! もう許さねぇぞ!」


 呆然とする怪盗の胸ぐらを掴む。


「君、見給え」


 そう言って金庫内を指差す怪盗。あ? と答えて振り返り、俺は目を見張った。


「…………こいつは」


 金庫の中にいたのは複数人の人間だった。それも女子供ばかりが2桁に届くほど。


 中は暗く、灯りは天井に空いた小さい穴が1つ、そこから月明かりが差していた。


 皆、痩せ衰えて憔悴しきり、こちらをみる目は一様におびえていた。


「この世界では奴隷商は推奨されていたのか?」


 心底不愉快そうに怪盗が吐き捨てる。これは十中八九間違いない。


「…………行方不明のアザーズか!」


 歯噛みしながら鋼鉄の扉を叩く。怪盗を追っていたらとんでもないものを当ててしまった。


 遅れてきた三人も金庫の中を見て顔をしかめた。


「酷いことをする」


 アオエが吐き捨てた。


 その時、階段の方から足音が聞こえた。振り向くと灯りが近づいており、息を切らしながらシュッセが走ってやってきた。


「商人シュッセ! これはどういう事か!」


 俺は怒声を上げた。


「うるさい、黙れ! 良くも勝手に私の屋敷を彷徨き、あまつさえ地下金庫の商品に手を出しおって! 貴様ら、生きて帰れると思うなよ!」


 取り繕うこともせずにのたまうシュッセ。この状況をして商品といいやがるか。


「ケージ。僕、あの人嫌いだ」


 不快感を露わにスキエンティアが吐き捨てた。


「同感だ」


「なぁ大将。このおっさんはぶち抜いて構わねぇよな?」


 心情的にはやっちまえ、といいたいところだったが拳銃を構えたカズヤを制止する。商品、といったのだから買い手がいる。そいつを聞き出さない限り、喋らなくなっては困る。


「シュッセ氏! いきなり走り出してどうなさった! それより、この地下は? って、ケージ!? ルイス・J・セルリーヌ7世!? なんでお前らが一緒にいる!?」


 遅れて叫びながらゲオルグが走ってきた。


「おっさん! そいつを捕まえろ!」


 俺は叫ぶ。


「貴様ァッ!! 私はおっさんじゃない。いや、そうじゃなく貴様、何を言って…………、」


 近づいてきたゲオルグは俺達の背後のものに気付いたらしく、目を見開いて足を止めた。


「アレは何か説明をいただけるか、商人シュッセ」


 ゲオルグは物凄い権幕で佇むシュッセに近づきその肩を掴んだ。


「ああ、クソ! 揃いも揃って私の平穏を脅かす賊徒共め!」


 憤慨するように髪の毛を掻きむしり、そのまま手を上げ指を鳴らした。


「貴様! 妙な動きを…………、」


 ゲオルグがシュッセを拘束しようとしたその時、二人の背後に天井から何かが落下した。


「…………ッ! おっさん、逃げろ!」


 俺は叫んだ。天井から落下し体躯を持ち上げたソレは、人間のような姿をした"モノ"だった。


 2メートル50センチほどの筋骨隆々とした、顔面の潰れた巨漢。問題は身体中の至るところから金属質の管が伸び、左胸部には金属盤が埋め込まれていること。


 明らかに人の手が加えられた化け物。そいつが肩から生えた足のような腕を振り上げているのだ。


 俺の言葉におっさんが振り返る。それと同時に化け物はその腕を振るった。


「…………ぐッ、ヌゥッ!!」


 反射的に腕を構えて身を丸めたゲオルグだったが、ハンマーのような一撃は1メートル80センチを超えるゲオルグの身体を軽々しく吹き飛ばし、つみあがった木箱に叩きつけた。ぶつかった衝撃に耐えきれず箱は破砕、そのまま壁へと激突した。


 ゲオルグは床に転がったまま動かない。それにとどめを刺さんと化け物が振り返り、再び腕を上げた。


 瞬間、連続するマズルフラッシュ。カズヤが手に持つ拳銃の弾丸を化け物に撃ち尽くした。


「大将、まずかったか?」


 拳銃のマガジンを落とし、腰につけていたマガジンを込めながらカズヤは言った。


「いや。大正解だ」


 何より人命優先。弾を喰らったことで化け物の意識がゲオルグからこちらに向いた。


「アレも、この世界の者かな?」


 怪盗は皮肉っぽく俺に向けて言った。


「生憎と、あんな出来の悪い悪趣味なものはこの世界のものじゃなくてね」


 そもそもあんなものがどこの世界のモノかなんてかはわからない。ただ、重要なことはあの怪物はシュッセの言うことを聞く存在である、ということだった。


「貴様らは見てはいけないものを見てしまった。今日、ここから全員帰れると思うなよ。貴様らはここで、この私に与えられた"ニューマン"によってひき潰されてしまうのだから!」


 そういってこちらを指差すシュッセはまさにお伽噺の悪役だ。


「"ニューマン"とか、大層な名前じゃないか」


 銃を構え直したカズヤが言う。


「まったく、主殿といると飽きないであるな」


 そういって刀を引き抜くアオエ。


 佇んでいた怪盗も足元の杖を拾い上げ、スキエンティアも構えた。


 どうやらシュッセから聞くことをは多いらしい。後ろの金庫の中身の行く先。そして、化け物をくれた人物。その他にも聞きたいことはあるが。


「とりあえず、まずは怪物退治としゃれこもうか」


 狭い地下道を歩き近づく化け物を前に俺は言った。

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