リンネ管理局①
「ようお疲れ。しかし、酷い匂いだなぁ。下水でも溢れたか?」
「いや、"魔法使い"の所為だってさ」
「また"魔法使い"か。今度は何をしでかした? 魔法でも使って糞でも撒き散らしたか?」
「ほら、北方の草原に何かの遺跡が現れたでしょ。それの調査から帰ってきたらこの始末なの」
「遺跡というよりかは便所の調査だな。糞溜まりの中でも泳いで来たか、糞の怪物でもいたのか。どっちにしたっていっぺん匂いの原因を落としてくるなりできたろうに。それとも、それだけ急ぎの案件だったのか?」
「どうかしらね。ただ、"トラブルシューター"は酷くお怒りみたいよ?」
「バクスター課長も大変だな。毎度アイツの尻拭いをさせられるなんて。"北側"もあんな疫病神どうにかしたいだろうよ。というか、なんだってアイツクビにならないんだ?」
「そりゃマギアからの仕官だもの。政治的作用が働いているんでしょ。噂だと"ロード"とも懇意にしているって話だし」
「あの厄介者が? "ロード"と? おいおいなんの冗談だ? 魔法使いっていうのはみんな頭のおかしな連中の集まりなのかよ」
「知らないわよ。それに噂だし。想像できる? あの威厳たっぷりの魔法使いと、あの頭空っぽな私達の"魔法使い"が並んでるところ」
「私達っていうのは語弊があるぜ。それはそれとしてあり得ないだろ? おんなじ爺さんでもウチのゲオルグ翁とは違う、偉大って言葉が服着てあるいているような、威厳に満ちたあの魔法使いの爺さんがよ」
「いや、まぁ、確かにギリアム翁は威厳とは真逆の位置にいるけどさ。あれはあれで化け物じゃない? 元々大きな商家だったとはいえたった1代でリンネ最大の商会にまでした手腕の持ち主、"巨人ギリアム"」
「いや、そうなんだけどさ。未だに俺は信じられないね、あの酒場で散財しているただの酔っ払いの爺様が物凄い商人なんて」
「お金何て腐るほどあるのよ。出なかったら悠長に“異世界人支援委員会”の会長なんてやっていだろうし。噂じゃゲオルグ商会とは別で個人的に異世界人相手に小銭を稼いでるとかなんとか。もう稼ぐ必要なんてないでしょうに」
「そりゃ体の隅々まで商人だから何だろう。ていうか、また噂かよ。随分と聞こえる耳をお持ちなんだな」
「何よ、皮肉? みんな話してることよ」
「みんな話してりゃあってんのかよ」
「そんな大真面目に考えて話なんてしてないわよ。何? 毎回会話の内容の裏を取るの、貴方?」
「そんな面倒くさい事なんてするわけないだろう。噂、噂、噂っていい加減鬱陶しいだけだ」
「何よ、失礼しちゃう。大体話しかけてきたのはアンタの方からでしょうに?」
「あーあー、悪かった悪かった。謝るよ。けど、本当いい加減にしてほしいよな」
「そうね。毎度何かしら厄介事や問題の種を持ち込んでくるんだから。いい加減どうにかしてほしいわ、あの“魔法使い”を」