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しんせかい  作者: 日陰四隅
第一章 リンネ
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怪盗ルイス・J・セルリーヌ7世⑨

「…………さてと、あとは二人、だが」


 手をはたいて怪盗はこちらを見た。


「とおー! 先手必勝!」


 いきなりスキエンティアが飛びついた。


「何やってんのお前!?」


 先の2人とのやり取りをみてそれ。完全な自爆特攻。が、怪盗も想定外だったか固まっていた。しかし、飛びついてくるスキエンティアをさっと身を引き躱し、すれ違いざまに足を払った。


「あ」


 そのまま豪快に地面に倒れ込んだスキエンティアであった。


「…………君は何がしたかったんだ?」


 少し呆れ果てている怪盗。だが、奴の気がスキエンティアに取られている今が最大のチャンスであった。


「さて…………って、ぐおっ!?」


 佇む怪盗の横っ腹目掛けてタックルをかました。


「油断したなこの仮面野郎!」


 突っ込んだ勢いのまま俺は怪盗諸共倒れた。組み付いた状態で地面を転がる。


「くっ、馬鹿に気を取られていた所為でこんな工夫も何もない手段で! この、離せ!」


 身体を起こした怪盗が俺を引き離そうとする。


「離せと言われて離す馬鹿がいるか、このクソ野郎!」


 手で怪盗の上着を掴み、足を身体に回してしっかりとホールドする。


「あ、コラ! 上着とズボンを掴むな!」


 拘束を解こうと暴れる怪盗。離すまいと必死に食い下がる俺。互いに抵抗しあい、地面を右へ左へと転げまわった


「いたたた。いや、慣れない事はしないものだ」


 仰向けになり、怪盗が俺に乗っかっている状態でスキエンティアが身体を起こしたようだ。


「あ、スキエンティア! よし、いいぞ! こいつを捕まえろ!」


 よく見えないが、立ち上がったであろうスキエンティアに向けて言った。


「君がもう捕まえているだろう! いいから離せ!」


「離すか、馬鹿野郎が!」


 顔面を掴んで引き剥がそうとする怪盗に必死で抗う。


「捕まえろって言われても…………、あ」


 拘束具を探していたのか、何か見つけたらしい。


「いいものがあったよ」


「よし。それでいい。そいつでいいからこいつにやれ!」


 了解〜、とスキエンティアは近づいてくる。

 

「いいものって、こんな地下に私を縛るようなものは何も…………って、それ、君、私のでは?」


 スキエンティアをみて怪盗がそんな事を言った。


「あー、仮面付けてるからあれじゃ足りなさそうだなぁ」


 えい、っとキュポンと何かを外すような音がした。


「え゛!? ちょっと、君、まさか…………、」


 怪盗の動きが止まる。


「ケージ、いけそう」


「よし、今すぐやれ!」


「待て待て待て待て、冗談じゃない! ちょっと待て、冷静になろう! それはまずい!」


 スキエンティアの動きをみて何やら焦りだす怪盗。実に効果的な何からしい。


「そんな話を聞くか、さっさとやれ!」


 わかったー、とスキエンティア。


「おい馬鹿やめろ! 止まれ! いいか、わかっているのか! 君の仲間もいるんだぞ!」


 拘束されている側の言葉でない。


「構わねぇ、やっちまえ!」


「やめろ、わかった! 大人しく縄につこう! 私にも最低限プライドがある! 言ったことは守る! だから止まれ!」


「誰が信じるかそんな話!」


「馬鹿者! いいから離せ! というか目下君も危険な状態何だぞ!」


「何言ってんだ、このやろ…………、」


 暴れる怪盗の身体が動き、前方の視界が開く。近づくスキエンティアが手にしてたのはどうやらカズヤに吹きかけていた薬品らしく、その蓋が外れていた。


「えい」


 そう言って手を大振りに薬品を撒いた。


 そいつが俺達の顔面に直撃した。


「「あ」」


 揃って声を上げる。薬品は液体だったのか、と思った瞬間、ソイツはきた。




「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っっっ!!!!!!」」




 激痛、ただ激痛。目に、鼻に、口に焼けた鉄でもぶっ刺されたような激しい痛みが襲ってきた。


「君の仲間は馬鹿かぁぁぁっ!!!!」


「俺もそう思うぅぅぅっ!!!!」


 顔面を抑えて仰向けに膝を立ててつま先で立ったり、腰を打ち付けている怪盗に、顔面を押さえて右に左に転がる俺は呼応した。


「…………っ、クソ、ようやく落ちついたってなんだコレ、どうなってんだ?」


 ようやく復帰したカズヤが俺達をみて言ったらしい。


「強力だね、コレ」


 それに小瓶を見せつけているスキエンティアの姿があった。


「おま、まさかそれ中身直接ぶっかけたんか?」


 驚きと困惑のカズヤに、イエス、とスキエンティアが返した瞬間、カズヤの拳が飛んだ。


「俺の状態みて躊躇なくぶっかけたんか!?」


「いや、強力だったから」


 呆れ果てたカズヤに頭を押さえたスキエンティアが言った。


「くっ! 我ながら確かな効能! というか、目が、目が焼けるぅぅぅっ!」


「粘膜という粘膜がぁぁぁっ!」


 互いに叫びながら悶える俺達。頭部が火だるまになった錯覚を覚え始めていた。


「そこの物騒な飛び道具を持った君! 私の上着の内ポケットから青い小瓶を! それがこの薬の中和剤だ!」


 顔面を押さえながらカズヤを指差しして怪盗は言う。


「どうせ嘘だろ! 大体自分で使えんじゃねーか!」


 かろうじて開いた目で怪盗を見ながら俺は叫んだ。


「こんな状態でできるか馬鹿者! 流石にそこまで器用でないわ! というか、このままだと私達失明するぞ!」


 同様に仮面のままこっちをみて怪盗は言った。というそういう重要なことは早く言ってほしい!


「お願いカズヤ! 早くポケット、ポケットから青い小瓶とったげてぇぇぇっ!!!!」


 悶える俺達の絶叫がいつまでも響いていた。

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