第7話 修正
(どういうことだ。さっきまで、アオイパパと一緒に、児童相談所に行って、落胆していたのに。いつの間にか、家に帰っている……。)
外を見てみると、真っ暗になっていた。アオイさんもアオイパパもママも、自分含めて、全員、食卓を囲んでいる。夜ご飯だ。
児童相談所にいた時は、13時30くらいだった。まるで、スキップされたように、時間が経過していた。
「お父さん。結局、マコトくんはウチにいれるの?」
アオイさんはご飯を食べながら、アオイパパに聞いた。
「相談所に聞いたらね。マコトくん戸籍がなかったんだ。両親は不明で、見つけることは難しいということだったから、ウチで養うことにしたよ!!」
アオイパパがとんでもないことを言った。
(養う!?いやいや、それがダメだったから、落胆して――)
ただ、アオイパパの目は真剣だった。
「やったぁあ!! じゃあ、今日から弟じゃん!!!」
「実際に、家族になるためには、手続きが残ってるけど、また今度だね。あとは、小学校に面接に行って、生活品と学校に必要なものさえそろえば、終わりだよ!」
それを聞いたアオイさんは、嬉しさのあまり踊っていた。
あまりに自分の認知と事実が違いすぎて、何も言えず、苦笑いになった。
「どうしたの、マコトくん? 気分悪いの?」
アオイママが心配そうに、聞いてきた。
「いえ! 大丈夫です。ただ、家族になる手続きとかって、役所の人が、難しいって言っていたような……」
その問いに答えるように、アオイパパが大量の紙を出してきた。
「大丈夫! マコトくんの戸籍謄本もあるし、養子になる手続きも正式なものを、今度してくるから!!」
アオイパパは戸籍謄本のほかにも、見覚えのない申請書や許可書を机に置いた。
まさか、あのスキップした時の中で、ここまでの処理が終わったとは到底思えない。あのノイズが原因だ。ノイズが、現実を書き換えている……。それとも……。
ここで改めて、記憶がなくなる前の自分が何をしていたのか、何者なのか、この頭のなかにいるもう一つの『ナニカ』が何者なのか、追求したくなった。
「ということで!!」
「家族になるということだし、マコトくんも敬語は禁止だよ! 呼び方も変えよう」
アオイパパのノーテンキな感じに、こっちまで呑気になった。
いくら考えても、頭が痛くなるだけだ。今は、記憶が戻るまで、この家族と共に、子供として人生を謳歌しよう。
そうやって半ば言い聞かせるように、新しい家族と一緒に新生活を始めた。
その後、魑魅魍魎と戦うことになるなんて、今の俺に、知る由もしなかった――