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第6話 第一歩

 お風呂に入って、パジャマに着替えた。子供用のパジャマは、女の子のモノしかないらしい。


「そりゃ、一人っ子っぽいから、こうなるよな」


 かわいいお花の絵がプリントしてあるパジャマだ。はたから見たら、凄く滑稽に見えるだろう。


 そんなことはどうでもいい。俺は今から、アオイさんと添い寝することになっているのだ。


アオイさんから一緒にお風呂に入ろうと誘いを受けたときは、嬉しさと驚きを隠せなかったが、すぐに断った。だからといって、添い寝が大丈夫というわけではない。普通に緊張するし、できれば別々で寝たい。


 添い寝なんて、絶対に寝れない。余計疲れるはずだ。でもあまり断りすぎると、感じが悪いし……。


 そう思いながら、アオイさんの部屋のドアを開けた。

 なんとそこには、すでに爆睡しているアオイさんがベットで、大の字になっていた。


(めっちゃ、寝とる……)


 自分が思い描いていたものと乖離と高低差がありすぎて……


「風邪ひくわ」





 目覚めは最悪だった。

 布団はアオイさんがほとんどを占領してるし、ベットの割合も8:2くらいだ。泊ったことはないが、これはカプセルホテルのほうが寝やすそうだなと、潜在的に思った。


「おはようございます。アオイさん……! 朝ですよ」


 昨日アオイさんから、『寝坊癖があるから起こして』と、モーニングコールを引き受けた。


「うへぇ? あんた誰?」

「自分は、マコトです。昨日から、この家で、居候することになったものです」


 アオイさんはハッとした顔で、笑いながら、起きた。


「ごめん、ごめん。忘れてた。昨日はちゃんと寝れた?」

「おかげさまで、ぐっすりと眠ることが出来ました!」


 いや、全然眠れていない。緊張して眠れなかったというより、アオイさんの寝相が悪すぎて、睡眠妨害を受けていた。


 二人で、一階のリビングに行くと、すでに、アオイママが朝食を作ってくれていた。

 アオイパパとママは、自分たちより先に起きており、朝食を食べていた。


「じゃあ、アオイは高校に行って、マコトくんは、僕と一緒に色々と調べ物をしよう」


「えぇ、いいなぁ~。私も学校休んで、一緒に遊びたい……」

「コラコラ。アオイはテスト近いんだろう。アカネちゃんもいつもの時間に、バス停で待ってるだろうし、いっぱい勉強してきなさい。僕たちも、別に、遊びに行くわけでもないんだぞ」

「ケチ!!」


 横にいるアオイママが、その言い合いをみて、クスクスと笑っていた。


 今まで味わってきたことのないこの感覚。この家庭の雰囲気を見ていると、胸が苦しくなった。家族団らんで、食卓を囲み、会話がある。


 なぜだか、今、孤独に対して、とてつもない恐怖を感じた……。





 アオイパパは、丁度仕事が休みということで、まずは、一緒に児童相談所に行った。


 結論、家族にあたる人物は、特定できず、手掛かりもなかった。

そしてわかったのが、そう簡単に、養子縁組になったり、戸籍が確定するなどは、難しいということで、他の福祉事務所や警察にも相談に行くことになった。


「ごめんね。昨日は、張り切って、マコトくんは家族だ! なんて大見え切ったけど、僕にはこの先どうなるか……」


 アオイパパはとても悲しそうな顔で、謝罪してきた。


「自分のことは気にしないでください!! なんなら、いきなり無理を言って、上がり込んで、迷惑をかけたのは、自分ですから。なにより、わざわざ、せっかくの休みを使ってまで、寄り添ってくれたことに、とても感謝しています!」


「マコトくん……」


 アオイパパが泣きそうになっていたので、肩をさすって、慰めた。


 ここまで俺のことを考えてくれるなんて、きっとこの家族ぐらいだろう……。もし、この家族と一緒に、いられるならどれ程、幸せか。そう頭の中で、強く思った。


 その時――



ガガガガガガガガガガ


 

 いきなり頭のなかで、ノイズが鳴り響いた。

 これは……。そうだ!! ブランコに乗る前にも、この感じ……。

 あまりのノイズの大きさに、目を閉じ、顔をしかめた。


 ノイズがだんだんと小さくなり、おさまってきたので、目をあけた。


 目を開けて広がっていたのは、なんと、津曲宅のリビングだった。


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