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第11話 学園生活

 謎の少女リコから、色々と事情を聞いた。情報が新しい内に、頭の整理をすると……


 俺が人間ではないと言っていたが、妖怪でもないとも言っていた。


 それが真実であるのならば、俺の頭の中にいるもう一つの『ナニカ』は、警戒すべき対象だろう。

 なぜなら、得体の知れないものに、『得体の知れないモノ』とお墨付きを貰ったのだから。


 思考を巡らせている内に、学校の校門に、着いた。


(今日からここが、俺の母校になるわけだ……)


 とても感慨深い。

 ここまで、長いようで短かった。


 噛み締めながら、学校への第一歩を踏み出した。





 学校に着いて早々、職員室で担任になるであろう先生と打ち合わせをした。

 

「マコトくん……! 今は不安で心がいっぱいだと思うけど、安心して!」

「マコトくんは、コミュニケーションがとても上手い子だから、すぐに友達ができて、クラスに打ち解けると思う!」


 真剣な眼差しで、俺をみる彼女は、担任の鏑木かぶらぎ 里奈りな先生だ。

 とても優しい先生で、雰囲気から、おおらかなオーラが溢れ出ている。

 顔は丸顔で、髪はフワッとした天然のようなパーマ。カジュアルな丸いメガネがより一層、人柄をよく見せる。


「もし、クラスのみんなと馴染めないと思ったら、すぐに私に相談してね!」


 目の前の優しさに触れ、俺は『周りの人に恵まれているな』と改めて認識する。


「鏑木先生。ありがとうございます! 至らないところ多々あると思いますが、何卒よろしくお願い致します!!」


 その言葉遣いを聞いてか、鏑木先生はびっくりした顔で止まっていた。 


「先生。大丈夫ですか?」

「あっ!ごめんなさいね。マコトくんのあまりの丁寧さにびっくりしちゃってたわ」


 鏑木先生は戸惑っている顔をしながらも、微笑んできた。


「それでは、そろそろホームルームの時間ですので、自分は、自己紹介の準備しますね。」


 俺はそう言って、自己紹介カンペをポケットから出した。


「あら! 台本まで書いてきたの、エラいわね!」

「はい!! 効率よく、クラスの皆さんに覚えてもらうために、考えてきました」


 そんな会話をしていると、ホームルームの予鈴が鳴った。


「いけない!もうこんな時間……! 一緒に、教室に行きましょうか」


 俺と先生は、自分たちのクラスへと向かった。


 教室に着くと、ホームルームより先に、俺の自己紹介をすることになった。


「みなさん!おはようございます。今日は新しい友達が転入して来ましたので、紹介します」


 先生はそう言って、俺に目配せをした。


「おはようございます!ご紹介に預かりました。津曲つまがり マコトと申します。皆様とお友達になれるよう、精進しょうじんして頑張りますので、ご容赦いただけますと幸いでございます!」

「転入初日ですので、色々と分からない点ありますが、皆さまのご指導ご鞭撻べんたつのほど、何卒よろしくお願いいたします。」


 潜在的に言い慣れた挨拶テンプレで、自己紹介すると、クラスのみんなは、ポカンとした表情になっていた。


「あっ、ありがとうございました! マコトくんは、この街に引っ越してきて、まだ日が浅いから、学校以外のことでも、手助けしてあげてね!」


 自己紹介が終わり、空いてる席につくと、ホームルームが始まった。

 先生が教壇で、話している最中。クスクスと笑いながらクラスの子達が、俺の方をチラチラと見てくる。


(この反応。自己紹介、失敗だったか……)


 小学校三年生の初めての自己紹介なんて、分からない。頭の中にでてきた、自己紹介フレーズがだいたい、社会人みたいな奴しかない。


 もう少し崩した言葉を、使った方が良かったと思う。しかし、かえって生意気に思われても、怖いので、出たフレーズをカンペに書き写し、そのまま、言ってしまった。


「はい!それでは1時間目の授業を開始……あっ! プリント忘れてきた……!!」


 先生のドジによって、クラスの視線が俺ではなく、先生の方へ向けられる。


「ごめんね、みんな!! ちょっと、プリント持ってくるから、自習か読書しておいて!」


 そう言って、急いで、職員室に走っていった。


 先生が行ったのを確認すると、いっせいにクラスの子達が、俺の方へ寄ってきた。


『津曲くん! よろしく!!』


 たくさんの子達が、挨拶しにきてくれた。

 

 人だかりの中、リーダー的ポジションの子が、ヌッと割って入ってきた。


「これ、みんなから!」

 

 色紙のような物を、手渡され、認してみると……

 なんと、手作りの寄せ書きだった!


 寄せ書きには、たくさんの歓迎コメント。

 色ペンで、文字が、色鮮やかになっている。

 ところどころ、漢字を間違えてる子もいる。黒ペンで無理やり修正している子もいる。


 涙が頬をつたっていくのを感じる。

 自然に涙が溢れ出した。


 いつも家族にする笑顔で『ありがとう』と伝えたかったが、今回ばっかりは、笑顔が作れない。


 うわずった声で、振り絞るように言った。


 「ありがとう……」


 その姿を見た子供たちは、感激していた。その中には、涙を流す子もいる。


 持ち合わせていない感覚に、違和感を感じつつ、喜びで打ち震えた。


 その時だった。

 過去の自分が、少しだけ、垣間見えた。

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