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12/22

二週間ぶり(?)ですね。お久しぶりです。あけましておめでとうございます。


「それじゃあ、ばいばいおじいちゃん、おばあちゃん」

「ああ、ばいばい」

「ばいばい、陽茉利」

おじいちゃんとおばあちゃんとハグをして、車に乗り込んだ。

「ありがとうございました」

お父さんが二人にお礼を言う。

「そんな。こちらこそありがとう」

「それじゃあ行こうか」

「うん」

お父さんがエンジンをかける音がした。

車が進み、バックミラーに映ったおじいちゃん達がだんだん小さくなっていく。

目を瞑り、窓の方へ目を向ける。

「あのね」

「うん」

「…ごめん。やっぱなんでもない」

「そうか。まぁそう言う時もあるよな」

きっと、あの涙は太陽が眩しくて泣いてしまったのだと、思われるだろう。

前を向き、空を見る。

空は夕暮れ色に染まっていた。


「ただいまー」

「おかえりー、ご飯できてるわよ」

「ありがとう。でも、今日はいいや」

「…そう。お腹が減ったらいつでも言ってね」

「うん。ありがとう」

お礼を言って、二階へ上がる。

私は今から、やらなければならないことがある。

机周りを片付けて、新しく買った、縁が黒色の便箋を取り出す。

筆箱からシャーペンと消しゴムを取り出し、消しゴムを便箋の隣に置く。

便箋の一行目に、『お父さん、お母さんへ』と、書く。

その下に、文を書き込んでいく。

一時間後

「ふう。こんなもんでいいかな」

文章で埋まった便箋二枚を読み返す。

「うん。よし」

独り言を呟き、便箋を一回折る。それをもう一回繰り返し、便箋とセットで入っていた同じく縁が黒色の封筒の中に便箋二枚を入れる。

その封筒に、『遺書』と、真ん中に少し大きめで書く。

「…完璧」

これを机の真ん中に置き、何かの拍子で飛ばないように、筆箱で文字が隠れないように置く。

まぁ、多分大丈夫だと思うけど。

その筆箱の中に、シャーペンと消しゴムを入れる。

消しゴムのカスをゴミ箱に捨てる。

一段落ついたら、ベッドに身を投げる。

時計を見てみると、七時五十七分を指していた。

ふう、と、ため息を吐き、部屋を出て一階に行く。

そこにはお皿洗っているお父さんと、洗濯物を畳んでいるお母さんがいた。

「あら、どうしたの?お腹減った?」

「ううん。お風呂入ってもいいかなって」

「いいわよ。まだお母さんたち入ってないから、一番風呂よ」

「本当?」

「本当よ」

「それじゃ、行ってくるね」

「はーい」


「出ましたよー」

「はーい」

「このまま一階に降りてこないんだろう?歯磨きはしたか?」

「うん。ちゃんとしたよ」

「そうか」

「それじゃあ、おやすみ」

「「おやすみ」」

タンタンタンタン

自分の部屋に戻ると、遺書が机の上にひっそりと置いてあり、もう私が死んでしまったのかと思うほどだった。

ピコン

スマホが震える。ベッドの上のコンセントの横に置いてあるスマホを取り、メールを開く。

『起きてる?』

送り主は菅井君だった。

『起きてる』

『明日の予定って空いてる?』

急に何だろう。

『明日の朝はちょっとだけ予定あるけど、空いてる』

『じゃあ朝十時に駅前に来て』

『何で?』

『行きたいところがある』

『行きたいところ?』

ベッドに身を放り投げる。

『ああ』

『どこ』

『教えない』

『そう。じゃ』

既読がついたのが分かり、スマホを枕の横に置く。

行きたいところってどこだろ。

菅井君のことだし、書店とか?

そんなことを考えているうちに、だんだん眠気が襲ってきた。

このまま寝てしまおうかと思ったが、電気は消してないしスマホは枕の横だ。

むくりと起き上がり、スマホをコンセントの横に置き、電気をリモコンで消す。

頭を枕に置き、薄い布団を体にかける。

十分もしないうちに、眠りについた。


後十八時間


ピ–––ピピピ–––––––ピピピ ピピピ

「………」

目覚ましの音で、目を覚ました。

カレンダーを見ると、小さい赤色の星マークが付いていた。それを見ると、急に心臓の鼓動が速くなった。

深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。

ある程度落ち着いてきたら着替える。

一階に降りる。

「おはよう」

「おはよう陽茉利」

「おはよう」

至って普通の二人だったが顔が少し曇っている。

椅子に座り、「いただきます」と言ってから朝ごはんを食べる。

時計を見ると六時六分を指していた。

縁起が悪いな、と思いながらご飯を食べ進める。

「ごちそうさま」

お父さんが食べ終わり、食器と食器がぶつかり合う音がする。

「今日はどこか行くの?」

「うん。理子の家と、どこか」

「どこか?」

「友達に駅前に来てって言われたの」

「そう」

食べ進めていた食パンんは、残り一口となった。

わざと大きく口を開けて、最後の一口を食べる。

「ごちそうさま」

「お皿はそのままでいいわよ。お母さん、もうちょっとで食べ終わるから」

そう言って、まだ三分の一しか食べていない。

きっと最期だからと思っているのだろう。ここは気を使ってお礼でも言おう。

「ありがとう」

歯を磨く為に洗面台に行くと、一足先に歯を磨いているお父さんがいた。

持ち手がオレンジ色の歯ブラシを取り、歯磨き粉をつける。

それを口の中に入れる。

シャコシャコシャコ

二重になっている歯を磨く音。

お父さんが洗面台の前に行き、口をゆすぐ。私の前を通ってリビングに行った。

後から続いて、私も歯ブラシを洗って元あった場所に戻し、口をゆすぐ。タオルで口と手を拭いて、リビングには行かずに二階にいく。

自室で、自分のお小遣いで買ったリュックサックにスマホとリップクリーム、薬、ハンカチ、ティッシュ、その他いるものを入れ、リュックサックを持って一回に戻る。

「出かけてくるね」

「行ってらっしゃい」

「気をつけろよ」

「うん」

玄関に続く扉を開け、靴を履く。玄関を開け、外に出て、理子の家に行く。


ピーンポーン

チャイムがなり、数秒したら玄関が開いた。

「いらっしゃい。陽茉利」

明るい顔でそう言い。私が中に入れるように一歩下がる。

「お邪魔します」

「あら、陽茉利ちゃん。いらっしゃい」

「おはようございます。おばさん」

「ゆっくりしていってね」

「はい。ありがとうございます」

にっこり笑っているのを見て、二階の理子の部屋に行く。

相変わらず全体が水色と白色で埋まっていた。

「理子の部屋は相変わらずだね」

「そう?」

「うん。あ、そうだ。私用事あるから九時四十五分までしかいられないけど…いい?」

「うん!もちろん!」

「良かった」

理子がベッドの上に座ったのを見て、私も理子の隣に座る。

「ねぇ理子」

「ん?どしたー?」

「ただの勘なんだけどさ」

「うん」

「もしかしたら私」

「うん」

「理子より早く死んじゃうかも」

「勘、だよね」

「うん」

「勘、当たらなければいいのに」

「でね。もし、そうなったら、私の部屋にあるぬいぐるみを、貰ってほしいなぁ」

「…分かった。貰う」

「ありがとう」

「まぁきっと、逆だけど」

「理子、死んじゃうの?」

「ううん。ずっとずっと、八十年くらい先の話」

「八十年って、理子九十七才じゃん。忘れてるんじゃない」

「忘れないよー」

「だって九十後半って、認知症になってるでしょ?」

「確かに。今のうちにメモしておこっかな」

「その必要は無いと思うよ」

「何で?」

「…だって、理子って物覚えがいいでしょ?」

「うーん、そうだけど…」

「もし認知症になったら私が教えてあげる」

「えー?陽茉利も認知症になってるんじゃ無い?」

「うーん…確かに」

「それじゃあ結局意味ないじゃん」

理子がクスクス笑う。それに釣られて私も笑ってしまった。


「もうこんな時間かあ」

「残念」

「じゃ、お暇するかな」

理子の部屋を出て、一階に行き、玄関から外に出る。

「…ばいばい。理子」

「…また、ばいばい」

「あ、ごめんつい」

「もしかして、引っ越す?」

どうしよう。そういう設定にしたいけど、きっとそのことを理子はお母さんに言う。理子のお母さんは驚いて私のお母さんに連絡する。

お母さんは多分余命のことを理子に話してるって思ってるから、引っ越さないって答えちゃうかも

「…陽茉利?」

「え、あ、ううん。引っ越さない」

「あ、そっかぁ。良かった」

「……」

「それじゃあごめんね。引き止めちゃって。また明日!」

「…う、ん。また」

結局、無理だった。でも、きっと大丈夫。


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