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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

遠回りしたけど

作者: @siva2nd

 私には好きな男の子がいる。

 小学校中学年から一緒の伊藤ヒトシ。

 幼馴染だと思ってるけど、周りからは微妙だと言われる。

 せっかく高校も同じになれたのに、最近は反りが合わない。

 今日も授業が終わったあと、ヒトシに話しかけたら言い争いになった。


 ヒトシとは学校こそ同じになれたけど、クラスまでは一緒になれなかった。

 だからヒトシが放課後、バレー部に行く前には話しをするようにしている。

 そうでもしないと一緒にいる時間がないから。

 それなのに雰囲気はよくない。

 友達から、私のおせっかいが過ぎるとからかわれている。

 どうやら私がヒトシを好きなことは、友達にばれているらしい。


 部活のない私は、ヒトシと話を終えてからひとりで帰ろうとしていた。

 そこにクラスメイトの鈴木が声をかけてくる。

「小林さん、今帰り?さっき伊藤と喧嘩してる風だったけど」

 見られてた?

「まぁ、いつものことだしね」

「喧嘩するほど仲がいいって言うし」

 心の間かで、まぁねとつぶやくが、黙っている。

「それにしても伊藤がうらやましいよ。こんなかわいい幼馴染の彼女がいるって。本当に漫画みたいだよ」

「そんな、彼女じゃないし」

「いやいや、無理があるって。入学してからみんな知ってるし」

 少し照れながら、やっぱり、知られているんだと思う。

 これが鈴木と話すようになったきっかけ。


 それからしばらくして、ゴールデンウィークが明けたらヒトシの噂話が耳に入る。

 ヒトシはクラスメイトの田中さんと付き合いだしたという話だ。

 そんなことは全然気が付かなかった。

 ヒトシとは連休中は会っていなかったけど、連絡はとっていた。学校でも昼休みだったり、放課後だったり、時間は少ないけど会って話をしていた。

 確かに反りが合わない時もあったけど、いつも喧嘩してるとか、怒っているとかはなかったはず。

 なのになんで急に彼女ができたって話が流れてきたのか不思議だった。

 だからその日のうちにヒトシ本人に聞いてみた。

「彼女ができたって聞いたけどほんと?」違うよね……

「誰から聞いたんだよ」

「うちのクラスでも噂になってる」

「そっか」

「ヒトシのクラスの田中さんだって話だけど……」

「そこまでばれてるんだ」

「っ!ほんとなんだ」

「ああ」

「いつから?」

「二週間くらい前に田中が告白してきて……」

「受けたんだ」

「ああ」


 それからはヒトシとなにを話していたかわからない。ただ気が付いたら学校の玄関の脇に鈴木と一緒に座っていた。

 すでにヒトシとのやり取りも私が話したらしい。

 鈴木もヒトシと田中さんの噂を知っていたし、周りのみんなも私のことが気がかりだったと教えてくれた。

 そしていきなり私のことが好きだったと言ってきた。

 今まではヒトシがいたから黙っていた。だから力になりたいと。でもタイミングが最悪なことも理解しているとも言われた。

 正直、ヒトシとのことで頭がいっぱいで、鈴木のことはどうでもよかった。

 それでも、少したら仲のいい友達になれた。


 しばらくして期末テストが終わって、鈴木と一緒に帰ろうとしていたら、学校の玄関でヒトシに呼び止められた。

 今までも見かけたり、すれ違ったりしたことはあったけど、声を交わしたのは久しぶりだ。

「二人に話がある」と真剣な目つきでヒトシが告げる。

 そして、「鈴木はユウカと付き合ってるのか?」と続けた。

 鈴木は私をちらっと見てから「付き合ってない」と答える。

 「ならユウカ、俺と付き合わないか?」

 驚くようなことをヒトシは言い出す。ヒトシは田中さんと付き合ってるはずなのに……

「伊藤。なに言ってるんだ。お前田中さんと付き合ってっるだろ」

「鈴木には関係ねぇよ。今ユウカに聞いてるんだ」

 私は黙って二人の話を聞いていたら、「ユウカが付き合ってくれるんなら、田中とは別れてもいいと思ってる。それに俺の方が先にユウカを好きだったんだから」

と、鈴木を見ながら告げてきた。

 ヒトシも本当は私のことが好きだったんだ。正直今も好きな気持ちは少なくない。でも今は……と考えながら鈴木を見る。

 鈴木も黙って私を見ている。

 すると「いいよな」とヒトシが少し大きい声を出した。その声で私は鈴木からヒトシに視線の先を替える。

 そして黙っていたら鈴木が話し出した。

「いいよ。二人が付き合えば」

 慌てて鈴木に視線を向ける。鈴木を見ても怒っている風にはみえなかったけど「いいの?」と尋ねると、一呼吸おいてから「相思相愛じゃんか」と言って、私たち二人を残してひとりで帰っていった。


 私は念願がかなってヒトシと付き合うようになった。

 でもそれは私が思い描いていたものではなかった。

 なぜなら、ヒトシは田中さんとすぐに別れなかったから。

 せっかくヒトシと付き合い始めた夏休みは、思ったほど楽しくなかった。

 そして二学期が始まっても楽しくはならなかった。


 二学期になって登校したらクラスの空気が変わっていた気がした。それは休み明けだとか席替えをしたからとは違う気がする。

 別にいじめられているとか無視されているとかではないけど、よそよそしいというか避けられているような感じも受ける。

 あと、周りのことも気にはなっていたけど、鈴木のこともすごく気になっていた。

 あれっきり、夏休みも連絡はとっていなかったから。

 でも友達と楽しそうに話をしている鈴木は、以前と変わらない様子に見えたから「久しぶり」と声をかけた。

 鈴木は私とわかると気の抜けたような声で「ああ」と言いながら周囲を見渡した。

 私も鈴木に釣られて周囲を見渡すと注目を集めているようだった。

 理由がわからず考えていると「お前ら噂になってるよ」と言われて、驚いてもう一度周囲を見渡した。

 そして「三角関係がこじれてるって」と鈴木に言われて心臓が止まる思いをした。

 もう周囲を見渡す余裕はなかった。


 慌てて今聞いたことをヒトシに伝えたら、知っていると返された。

 じゃぁ、知らなかったのは私だけ?

 噂の内容が気になって、放課後、嫌がる鈴木から聞き出した。

 ヒトシは二股のクズ。私は男を寝取るビッチ。田中さんは彼氏を寝取られた悲劇のヒロイン。ということだ。

 この話を聞いて私は憤慨したが、鈴木はそうらしいよと言って私を置いて帰ってしまう。

 鈴木の態度も面白くなかったけど、噂の内容には腹立たしかった。

 私はなにも悪くない。ヒトシが付き合ってと言ったから付き合っただけ。田中さんとは別れるって言った。

 それなのに、なんで私が悪く言われないといけないの!

 その日の夜にヒトシと大喧嘩をした。


 結局、噂が原因でというか、事実だけど、私はヒトシと別れた。

 最後まで田中さんとは話すからと言っていたけど、もう信用はできないから。

 そしてすぐに田中さんもヒトシと別れたという噂を聞いた。

 それでも私と周囲の関係は変わらなくて疎外感は続いた。

 しかし年末になるとクリスマスのせいなのか周囲が浮足立って、雰囲気も和らいだ感じがしてきた。

 そしてクラスのクリスマスパーティーにも誘ってもらえた。まぁ、パーティーと言ってもカラオケボックスでなんだけど、それでも楽しかった。

 浮かれた私は、パーティーのあと、鈴木に声をかけた。


「楽しかった?」

「ああ」

「それでさ、前にさ告白されたけど、今はどう?」

「……」

「あの時は落ち込んでて、励ましたりとかしてくれてうれしかったからさ。知てると思うけどヒトシとはもう別れてるし、だいぶ遠回りしたけど、どう?」

「……正直、伊藤はどうでもいいよ。それに小林もどうでもいい。」

「どうでもいいって」

「小林はさ、伊藤に彼女がいるのを知った上で、声をかけられたらついてく女なんだってわかったよ。伊藤も伊藤でさ、前から好きだったって言ってたけど、だったら田中と付き合うなって話。田中はいい迷惑だよな」

「いや、でもそれは、ヒトシがしたことで……」

「そうじゃないよ。あの時迷ったろ?そして伊藤を選んだろ?小林ってそういう奴なんだってわかったら、もうどうでもよくなったよ。今も俺と付き合うような話してるけど、後になって他の男と迷うんだよ。きっと」

「そんなことないよ」

「目の前で迷う姿を見せられたらな。それに伊藤がダメなら俺か?やっぱ信じられないな」

「……」

「それに小林も伊藤のはっきりしない姿を見てどう思った?自分だけをって思わなかったか?そしてどうした?それと同じことを俺にしてると思わないか?」

「……」

「俺はまだいいけど、告白を受けてもらって付き合った田中はかわいそうだな。小林だったらどうだ。昔から好きだった女がいて本当はそっちの女ががいいって言われて捨てられたら」

 そんな嫌味を言われても返す言葉もなくただ黙っていると、


「今は邪魔もいないし相思相愛でいいんじゃね」と言って私から離れていった。


 私はなにを浮かれていたのだろう。パーティーに呼ばれたって、ヒトシのことがなかったことにはならない。

 みんなは口しなくても、本当はどう思ってるのかわからない。

 あの時まで優しかった鈴木がこんなこと言うんだ。きっとみんなも同じように思ってるに違いない。


 確かにヒトシに告白された時うれしかった。鈴木や田中さんのことも頭にあったけど自分の気持ちを優先した。

 もしかしたらヒトシも自分の気持ちに従っただけで、私と田中さんを選べなかったのかもしれない。

 自分の気持ちを優先した。心に従った。聞こえはいいけど、ただのわがままだったんだ。

 だから私がヒトシから離れたように、田中さんも離れた。

 そして鈴木も私から離れた。

 クラスメイトや周りの人たちもわかっていたから……

 わかっていなかったのは私とヒトシなんだ。


 遠回りしてわかったこともあったけど、遠回りした道の先は見えなかった。




おしまい




最後まで読んでいただきありがとうございます


この作品は私の息抜きの作品です


今、純愛ラブコメを書いているのですが、設定にミスがあって大幅に変更して疲れています

内容はひねりのない一本道なのですが、手直ししたら整合性がとれなくなって困ってます


他の作家さんが執筆途中で止めたり、他の作品に移ったりする気持ちがよくわかりました

ただ書き始めるとき、絶対にエタらないと決めましたので、完結してから投稿しようと思っています



そんな私のやる気につながりますので、評価をしていただけるとうれしいです



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