3、新しい仲間
やっと出てきたよ!!!!
「ここが、バシカか…」
「…そうみたいだね」
村の入り口に立った二人は物珍しそうに周りを見渡した。
廃屋と化した家々。
店はほとんどシャッターが閉まっている。
壁にもたれて座り込んでる人もいれば、地面に倒れ込んでる人もいる。
ガラガラ!
宿探しで村を見回っていた二人の耳に何かが崩れたような大きな物音がした。
急いで音の方に駆け寄ってみると、ガタイの良いお兄さん達が5、6人何かを囲んでいるように立っていた。
その中心にいたのは、カルムと同じくらいの年の女の子。
瞳の色は綺麗な翡翠色、肌が白く、長く柔らかそうな髪は見方によっては金色に輝く薄い茶色で、耳が…尖っている。
さっきの大きな音はあの子が倒れたときに小さな箱の山に当たって箱が崩れた音だったらしい。
ちらっと見えただけだがどうやら傷をおっているらしい。
「なにあれ…カツアゲ?」
ジャットが眉をひそめて聞いた。
「…ちょっと、違うみたいだ」
耳を澄ませて彼らの話を聞いていると、「ヴァルシア」だの「売る」だの聞こえてくる。
「ジャット、ヴァルシアって知ってるか?」
「ん?ああ、竜の生まれ変わりだっていう幻の一族だろ?でもあの一族、ずいぶん前に滅んだって聞いたぜ」
「‥だよなぁ…」
まあいいや、と小さく呟くとカルムはタタタと男達の元へ軽やかに向かっていった。
「あ、おい!カルム!関わるなって」
ジャットの呼び止める声も聞かず男達の所へ付いたカルムは「こんにちは」とにこやかに話しかけた。
いきなり来た少年に驚いたのは紛れもなく男達で、しばらく口をパクパクと金魚のように動かしていた。
「な、なんだてめぇ!!」
やっと立ち直った男が叫んだ。
この人が、頭だろうか…?
「その子、どうするんです?」
崩すことのない天使の笑顔は、男達にとっては悪魔の微笑みに等しい。
「っせえ!てめえには関係ねぇだろ!ガキは黙って見てろ!この女顔が!!」
女顔。その言葉を聞いて顔をひきつらせたのは少しずつこっちに向かってきていたジャットで…。
「…んな、がお…」
言われた当の本人は黒いオーラを漂わせながら「おんながお」とブツブツ呟いている。
その異様な気配に男達はたじろいだ。
「‥誰が、女顔‥だって…?」
「う、うぎゃぁぁあああ!!!??」
あまりの迫力に動くことが出来なかった男達は数秒後には屍の山と化していた。
「大丈夫?」
少女を見据えにっこりと話しかけたその早業に、女の子は目を見開き、ジャットは頭を抱えた。
「キミ、ヴァルシア一族の生き残りだね?その耳と髪の色が何よりの証拠だ。まあ実際のヴァルシア一族は金髪らしいけど」
いきなりのカルムの発言に少女はビクッと肩を震わせ二人を睨んだ。
「大丈夫。俺達はさっきのおじさん達みたいに君を捕まえる気なんかないから」
カルムはへらっと笑って女の子の前にしゃがみこんで目線を合わせ、優しく話しかけた。
「ただ、こんな所に女の子一人で何してるのかな?って思って」
しばらく見つめ合っていた二人だったが、女の子の方が先に根負けしてしぶしぶ話してくれた。
「……人を探してるの…」
「人を?」
「そう…。私、親がいないの…捨てられたんだ、って拾ってくれたおじいさんから聞いたわ。私…どうしても親に会って聞きたいの。なんで捨てたの?って…。まあ、どうせろくでもない理由なんだろうけど」
女の子は最初こそしんみりと話していたが、途中から腹立たしくなってきたのか声が低くくなってきて正直怖い。
「じゃあ一人で旅してんのか?無謀だな」
今まで聞いていただけだったジャットが話しに割り込んできた。
「仕方ないでしょ!他に頼る人がいなかったのよ!」
その言い方が気に入らなかったらしく、女の子はジャットをキッと睨んで言い返した。
「でも、女の子一人は危ないよ」
まあまあとカルムは諭すように二人の間に入った。
「そうなのよね。……あ、良いことを思いついたわ!!」
「「え」」
いきなり立ち上がり服に付いた砂も払わずに詰め寄ってきた女の子に男二人は思わず一歩下がった。
「見たところあなた達も旅をしてるんでしょ?なら私も一緒に行くっていうのはどうかしら!私もいろんな所へ行けるし、ちょうど旅仲間も欲しかったの!ねぇ!良いでしょ?」
「…いや、それ得するのお前だけじゃん」
「それに女の子がついさっき会ったばかりの男二人と旅なんて危ないよ」
あまりの迫力に気圧されてしまった二人は一瞬反応が送れてしまった。
しかもカルムは心配するところが少しずれている。
「もうこれは決定事項よ!文句言わない!」
対して女の子はもう決めてしまった、と反論は許さないと言い張る。
どんなに言っても諦めてくれない女の子を前に先に折れたのは男二人。
互いの顔を見合わせため息を付いたのだった。
次回女の子の名前が決まりますwwwww




