1、カルムとジャット
ディンクスという小さな村の中を歩く一人の男の子がいた。
大人びていて少年ではないが、しかし青年とよぶには幼さが残るその顔は肌が白く、透き通った深い海の色の瞳。背中まである琥珀の髪は頭の上で結わえられていた。
年は・・・一七、一八といったところか。背は一七五ほどあり、細身だがけして華奢ではない。
「カルム!カルム・アンバー!」
後ろで人の声がする。
カルムと呼ばれた男の子は長い髪を揺らしながらゆっくりと振り返った。そこには、短髪の黒髪に漆黒の瞳、身長はゆうに一八〇を越えているであろう青年がいた。
ジャット・ブラック。
それが彼の名前だ。
年は、確か一九だったか・・・。
体つきはカルムとは違いがっしりしていて頼り気がある。
「やあ、ジャンおはよう」
のんびりとした声音にズンズンと歩み寄ったジャットが握り拳を空へ向かって振り上げたかと思うとおもいっきりカルムの頭へ振り下ろした。
「っったぁ!何するんだよ!」
「うるせ!お前今日が『旅立ちの日』なんだろう!こんな所でのんびりとうろうろしてるから渇を入れてやったんだよ!」
「だからって殴らなくても・・・」
「ぐちぐち言うな!準備はしたんだろうな?」
「してるよ。あとは食料だけだから保存食を買いに行こうとしてたんだ」
なのに殴るんだもんな・・・。とまた呟くと、ジャットにもう一発くらわされた・・・。
「おや、カルム!お前今日旅立つのかい?どうしてまた・・・」
食べ物屋に行くと店のおばちゃんが話しかけてきた。
この村の人達は皆気さくで良い人ばかりだ。
「ああ、『探し物』があるんだ。それを探しに」
「そうかいそうかい。淋しくなるねぇ」
この時代、旅に出るものは少なくなかった。
世界が見たいというものもいればいろんな人に触れ合いたいという人もいる。
カルムが一人で旅立つのが心配、と言って今回の旅に付いて来るジャットも世界が見たい、の一人だ。
だが、カルムが旅に出るのは別の理由。
それは『あるモノを探す』こと。
その『あるモノ』とは自分自身の、記憶。
カルムは生まれてから十と二、三年過ぎた頃にこの村に来るまで、どこにいたのか、誰と話していたか、そしてどういう経路をたどってこの村に着いたか、すべて覚えていなかった。
唯一覚えていたのは、名前だけ。
だから知りたかった、この村に来るまでの10年と少し、いったいどこで何をしていたのか・・・。
店のおばちゃんにお金を払い、先に出ていたジャットを追って外へ出た。
初ファンタジー!!!
初心者なので生温かく見守ってくだされ




