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頭のうしろに回された、細い腕。袖から感じる、薬草の静かな香りと、頬に触れるやわらかさと温度、その奥で跳ねる、脈打つ、音。
どれくらい、こうしているのだろうか。身体を預けることも、引き寄せることもせず、目を閉じることもせず、ひたすらにこの、腕の中でどれほど。
目の前で、揺れている。いびつでくすんで、うつくしい、亜麻色が視界を覆っている。救い主と、同じ色の髪、それがふいに離れ、腕の力がゆるむ。気がつけばすぐそばに、晴れた空のような蒼い、瞳があった。
あたりまえのように、禁忌を踏み破るように。
近づく。重なる。
ずっとこのままでいて。
わかった。
約束して。
約束する。
その意味が、やっと浸みてくる。そうだ。知られてしまった。悟られて、しまったのだ。
身体がうしろへ、ゆっくりと、沈み込んでいく。
ああ、これが。これが、きっと。