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影の中の囁き
N県M市にある歴史ある大川神社は多くの観光客や信者たちで賑わっている。
しかし近年、不思議な噂が立ち上がっていた。
それは神社の境内にある古木の銀杏の付近でカメラを持った者が撮影をすると高確率で地面付近からの囁き声が収音されるというものだった。
この噂を聞きつけた一人の都市伝説研究者、杉山は自らの機材を持ち、事の真相を確かめるために神社を訪れた。
彼が撮影した映像には確かに、囁くような声が収められていた。
声は何かを求めるような、しかし具体的な言葉までは聞き取れなかった。
興奮した杉山は更なる調査を行うため、銀杏の木の周りを詳しく観察することに。
そしてたくさんの落ち葉の中から、太陽光ラジオを発見した。
このラジオは受信状態でありながらも、電源が微弱で不規則にノイズ混じりの音を出していた。
杉山は、神社の神主にこのラジオを届けた。
すると神主は、何年も前にこのラジオを失くして以来、新しいものを購入することなく探し続けていたそうだ。
神主は、太陽光ラジオを手に取りながら、杉山にありがとうと何度もいい
「多くの人々を迷惑をかけてしまった」と、反省していた。