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忘らぬ墓の秘密
空港の賑わいと遥かに離れた一隅、飛行機整備場で織田康一は整備士として長年働いてきた。
彼の作業への姿勢は一切の妥協を許さず、整備士仲間たちは彼を尊敬の目で見ていた。
そんな彼も今日で、定年退職を迎える。奇しくも彼が長く整備してきたジェット機も、同日に退役を迎えていた。
同僚たちから感謝の言葉と花束を受け取り、過去の日々を思い返した。
晴れた日も雨の日も、彼は常に真剣に仕事に取り組んできた。
ただ10年前からずっと誰にもいっていない心残りがあった。
花束を胸に彼は何かを決意しているようだった。
・・・
そして10年後。
飛行機の墓場と呼ばれる場所で、織田は再び白い作業着を纏っていた。
彼の前には、かつて整備していた相棒とも呼べるジェット機。
部品を一つ一つ丁寧に取り外しながら、彼の手元は緊張感に包まれていた。
そして、彼の顔に安堵の表情が浮かぶ。長年の心残りが、この場所でようやく晴れたのだ。
20年前に整備中に見つからなくなった1つのビスがみつかったのだ。




