困惑の黒い安息日
都市部の小学校の一室、窓の外は車の音や都会の喧騒が聞こえてくる。
教室内は生徒たちのざわざわした声や椅子の動く音が響き渡り、普段の賑やかな雰囲気とは一味違う空気が流れていた。
教壇の先には、小学5年生の小川美咲がいる。彼女の前には、先生から渡された家庭環境調査のアンケートがある。
このアンケートは、近年増加している児童虐待やネグレクトの問題を受け、行政からの依頼で全国の小学校で行われているものだった。
教育者や行政は、早期発見・早期介入を目指して、子供たちの家庭の状況をより正確に把握するための試みとしてこの調査を始めた。
先生たちもこのアンケートの重要性を理解しており、生徒たちに真摯に取り組むよう呼びかけていた。
・・・
数日後、美咲の父、小川大輝は学校からの電話を受け取る。
「美咲ちゃんが家庭環境調査のアンケートの休日の過ごし方に"黒い安息日"と書いてあるのですが…」
担任先生の声は明らかに困惑している。
大輝は笑いをこらえながら答えた。
「それは、家でよくかける音楽のことですよ。ブラック・サバスというバンド」
「うちの中では、
ビートルズ=甲虫
ディープパープル=深紫
ローリングストーンズ=回転石
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ=赤熱唐辛子
アイアン・メイデン=鉄乙女
スマッシング・パンプキンズ=壊れかぼちゃ
ピンク・フロイド=桃色の流れ
ブルー・オイスター・カルト=青牡蠣カルト
ホワイト・ストライプス=白縞模様
ゴールデン・イヤリング=金耳飾り
シルヴァーチェア=銀椅子
グリーン・デイ=緑日
・・・」
と話が、止まらなくなり、やはり先生は困惑したという。




